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【1月号】巻頭インタビュー・EXIT

現在の無限大ホールの顔といっても過言ではないEXIT。さまざまな出来事を経験しながら駆け抜けた2019年、心残りはM-1だと語る。どれだけ多くのメディアに出ようが、決して消えない賞レースへの思い、ネタへのこだわりとは――。

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――2019年、とても忙しかったと思います。おつかれさまでした。

りんたろー。:最高の1年でしたね。

兼近:いろいろあった1年だったんで。持ち上げられて、落ちて、また持ち上がって、信じられない上下を経験しましたね。

りんたろー。:濃度でいったらとんでもなく濃いんじゃない?

兼近:すべてやりましたね。芸人がやるすべての仕事をやったと思う。

りんたろー。:そんなことないだろ(笑)。だからこそ賞レースもカマしたかったですけどね。シーフードパイセン、ごめんなさいって感じです。

兼近:さんまさんが応援してくれてたんですよね。

りんたろー。:「お前らがM-1いったら盛り上がる」って言ってくれてて。盛り上げたかったんすけど、そういうわけにもいかず。役不足。役不足?

兼近:役不足。

――たぶん「力不足」が正解ですね。M-1は残念ながら準々決勝敗退でした。もともとM-1に出るために結成したのがきっかけのおふたりですし、やはりそこに賭ける思いは強い?

兼近:M-1に狂わされてるコンビですね。正式にコンビ組んで1回目の2018年は、めちゃめちゃウケたけど落とされて、否定された感じがしたんですよ。ちゃんとみんなと同じようなやり方をしないとM-1はダメなんだって思って、1年間そういうネタを作り続けたんです。でも2019年はその結果うまくいかなくて、「1年間無駄にした」って思いましたね。M-1に寄せたのに、M-1に嫌われちゃった。

りんたろー。:1年間いろいろ露出して知名度が上がって、そっちの方向が世間の僕らの需要になってたんですけど、そこに気づかないで、賞レースとはそういうものだと思いこんでやり続けちゃった。

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――具体的に、1年かけてM-1に寄せた部分とはどんなところですか?

兼近:まずツッコミを多く入れた。で、テンポを上げてボケを増やしたんです。

りんたろー。:僕らの今までのスタイルでいうと、ちんたらしゃべってツッコミをあんまりしないで、感想を添える感じだったんですけど、2018年にそれがダメって言われたと思ったんです。だからコントインしてチャラ男を薄めることで、普通の漫才に寄せるようにしたんですけど、そういうことじゃなかった……。

――いち観客としては、今回のM-1予選は去年までと傾向が変わったのかな、と感じました。

りんたろー。:おっしゃってるのは、今までの漫才っぽい人が落ちて新しい人が通って、ってことですよね。たしかにある種そういうメッセージみたいなのは感じてて、俺らはそれに乗っからないといけない適任だったと思うんで、「やっちゃったな」って感じです。

兼近:でも逆に、2020年はやりたいことをやろうって気持ちが固まりました。正直、俺は2019年はやりたくないことをやってたんですよ。チャラ男がコントインするのは違う、って思ってた。漫才でチャラ男ってすでにコントインじゃないですか。

りんたろー。:冷める冷める!

兼近:いや、俺らはそうは思ってないですよ?でも世間からしたらそうじゃないですか。そこにさらにもうひとつ設定を乗っけるのは変だっていう思いはずっとあったんですけど、M-1に寄せていく上では必要なのかなと思って、そういうネタをブラッシュアップしてた。どこ磨いてんだよ!って感じでしたけど。

りんたろー。:たしかに(笑)。あの時間返してほしい!

兼近:磨いてもなんにもない石磨いてた。

りんたろー。:でもそれはチャラ男に限界感じたときのストックで残しておけばいいよね。

兼近:そうっすね。

りんたろー。:とりあえず2020年のM-1は、準決勝目指してます。そこまで届くと、また教えられることがあると思うんで。

兼近:こんな楽しい祭りに参加しないの、もったいないっすよね。芸人しかできない祭りなんだから。

りんたろー。:チャラ男なんでね、やっぱフェスとかイベントには絶対出ないと。フッ軽なんで。

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――賞レースへの思いがある一方で、パシフィコ横浜での単独ライブのように(取材時はライブ開催前)、お笑い界では異例の活動をしているのもEXITの特徴ですよね。過去のインタビューで、「お笑いは凝り固まっている部分があるから、このまま調子のってると伝統芸能になる」(コスミック出版「芸人芸人芸人VOL.1」)というような話をしてましたが、2019年はそこの手応えはありましたか?

兼近:それでやってきた1年でしたね。意外と業界の人も「ほぐしたい」「変えたい」って思ってるのを感じました。特に最近、めちゃめちゃ若い世代が使われるようになってるじゃないですか。2019年はそこがすげぇ変わったんじゃないかなと思います。作戦は成功してるな、って。

――作戦ですか。

兼近:まず、事務所の垣根を超えたくて。吉本は吉本、みたいに固まるんじゃなくて、“若手”で固まって押し上げるというか。その塊の感じをつくるのは、できてると思うんですよね。それと、お笑いお笑いしないことには結構こだわってます。俺らのひとつ上が「お笑い芸人はこうだから、◯◯するのはサムい」「SNSを駆使してどうこうするのはかっこわるい、むしろやってないほうがかっこいい」みたいなカッコつけ方をすごくする世代だったんですよ。そのきめぇ美学をぶち壊したと思ってます。

りんたろー。:それと、お笑いファンってたぶん数が決まってて、その中にいる人たちがいろんな芸人のところをぐるぐる回ってるだけだったと思うんですよ。それはすごく意味がないことだと思っていて、分母を増やしたいんですよね。だからまったく別のものを好きだった人に興味を持ってもらうとか、昔お笑いが好きだった人が戻ってくるように、ってことはちょっと意識してやっていたかもしれないです。

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――おふたりのファンはそういう方が多い印象があります。

りんたろー。:ですね。ジャニーズから来た人とか、いろんな界隈がいます。

兼近:見た目にしても、2.5次元感というか、ちょっと夢見させる感じのこういう人って芸人ではいないじゃないですか。でも別のジャンルだと全然いるから。お笑い界にもいるんだぞ、っていうことをやりたくて。

りんたろー。:芸人の間にはそれこそ「舞台上でファンサービスをするのはサムい」みたいな感覚があるんですけど、意識的にそういうこともやってます。やると意外と楽しいよ、って言いたいですね。

兼近:舞台上で手振ったり投げキッスしてみたり。お客さんからしたら「そういうのもあるんだ!?」って絶対嬉しいじゃないですか。だからめちゃくちゃやってます。

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――芸人さんがアイドルっぽく見られるのを嫌がる雰囲気は昔からありましたよね。

兼近:今もあると思います。でもアイドルっぽい芸人を叩くのは芸人の間というより、むしろお笑いファンを自称する人たちなんですよ。俺らはお笑い界を盛り上げるためにこういう見た目にしたり歌を出したりしてるんですけど、“お笑いファン”がそれを否定しちゃう。それでいて別界隈から来たファンを「応援の仕方がわかってねぇ」とかって叩くじゃないですか。「お前らがお笑いを衰退させてるんだよ!」って早く気づかせたいですね。

りんたろー。:なんで俺らが人気なのか、考えてみてほしいですよね。こんなバカデカおじさんが人気って、ちょっとおかしいから。

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――そうした考え方もそうですが、2人は柔軟性がすごいなと思うんです。ブレイクのきっかけになった『ゴッドタン』では、これからチャラ男として露出していこうという時期に「でも実は真面目」といういじり方をされたじゃないですか。あの段階でそのイメージがついてしまうとやりづらくなることもあったと思います。でもそうやって早々にイメージを崩されたこともしっかり受け入れたことでここまで来たんだな、と。

兼近:「1回はそれでいこう」って全力で乗っかりました。僕ら、用意された道を走ってるだけなんで。

りんたろー。:そうっすね(爆笑)。

兼近:いつでも走れるように準備しておいて、道が用意されたらそこを走る。それを繰り返してるだけなんですよ。これからもたぶん誰かが用意した道を走るだけ。国民のマリオネットなので。俺らは本当に自分たちのこと真面目とは思ってないですし、世間が「実は真面目なんでしょ?」って言うから「真面目じゃないよ」って言いながらもその道を走ってる。

りんたろー。:その通りだと思います。何か言われたときにすぐそっちに走れる柔軟性と筋肉だけつけておいて、あとは要望に合わせて走る。「何やりたいですか?」「来年どうしますか?」って言われても、まったくわかんないです。

兼近:「それを決めるのはみんなでしょ?」って。自分たちで決めたことなんてない。世間が俺らをそうさせてるだけなんで。

りんたろー。:「◯年後にこれをやりたいから、そのためにこういうことをやる」みたいなことを言う人、いるじゃないですか。あれ、すごいと思うんですよ。僕らにはできない。走ってるうちに、「それって1年前の目標じゃん」ってなっちゃうんすよね。常に新しい感覚を取り入れて、今やるべきことを考えていくほうが俺らに合ってるかなって感じがします。

兼近:僕、生まれてから1万と何日かしか生きてないんですよ。たったそれだけの日数しか生きてなくても、1日1日のことが思い出せない。明日のことも絶対明後日には忘れてると思うんですよ。だから未来のこととか語りにくい。絶対変わってるから。てか、今言ってることも2~3時間後には変わってるんすよ。日々自分が更新されていってるので、なんにも決められないです。

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――今回のインタビューでは、最後に2020年の抱負を聞こうと思っていたんですが……。

りんたろー。:決められないって今言っちゃいましたね。

兼近:「大切に生きる」としか決めてないです。男性の平均寿命で考えると、俺あと1万8000日くらいしか生きられないんですよ。

りんたろー。:いや、さっきから何万何日って何?(笑)「年」でいいよ。

兼近:考えちゃうんですよ。「また1日が終わった」「また1日が終わった」って。

りんたろー。:「りんたろー。さん、これやりたいんでやりましょう」って言われて「わかった」って言ってても、次の日忘れてて「それ、なんですか?」って聞いてくるんですよ。記憶の部屋が1畳くらいしかない。

兼近:記憶はもって1日です。だからそのとき感じたことを日々やっていくだけなんですよね。

――とはいえ、今日ここまで話してきたように「ネタをしっかりやりたい」「お笑い界を変えたい」というのはブレない目標なのでは?

兼近:たしかに! そこは保ってますね。

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――それは国民から求められているというより、自分たちの中にあるものなんじゃないんでしょうか。

兼近:でも時代が求めてるものではあると思うんです。だからやっぱり本当に、言われた通りに動いてるだけ(笑)。「時代を変えるコンビ」って、テーマだけ決めてる感じがありますね。

りんたろー。:その軸があれば、選択肢を何個か投げられたときに「こっちのほうがそれっぽいかな」って選べるから楽でもあるんですよ。

兼近:あ、でもやりたいことでいうと、YouTubeとかSNSをめちゃくちゃ使って新ジャンルを生み出して、その第一世代にならないといけないっていうのは思ってます。「第◯世代」みたいなのをずっと続けていくのってダルいじゃないですか。その中の一部になるのももったいないし。何かの第一世代になるべきっていうのは感じてますね。

りんたろー。:かっこいぃー……!

兼近:(笑)。

りんたろー。:それ、俺が言ったことにできますか?

兼近:って、りんたろー。さんが言ってました。

りんたろー。:かましたぜ……!

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――ところでさっき少し気になったんですが、M-1の話のときにりんたろー。さんが「チャラ男に限界感じたとき」という発言をしてましたよね。そういうときがいずれ来るだろうというのはやっぱり考えるものですか?

兼近:「どうなるんだろう」って俺らも思ってます。

りんたろー。:急にキャラ変してもおもろいと思うし、40になってチャラ男やっててもおもろいと思うんすよ。

兼近:俺の予想だと、たぶん番組とかで変わると思うんすよね。なんかきっかけがあって、パッとチャラ男じゃなくなる。

りんたろー。:だんだんチャラ男が薄まっていくとかじゃなくて? マジ?それははじぃ(笑)。

兼近:そこで厄介なのが、りんたろー。さんは、こういう服装とか本当にかっこいいと思ってやっちゃってるところなんすよね。

りんたろー。:おい、「やっちゃってる」って言うな! でもそれは確かにあるのよ。お笑いの中でこういうやつはおもろくないってなってるけど、「キャラですよ」ってことで認めてもらうのが最初の作戦だったんですよ。だから抜けないと思うんだよね。

兼近:だから変わるとしたら俺だけだと思います。俺はいつでも捨てれるんで。たぶん確実にキャラ変わると思います。見た目とか、やってることとか。今イケメンキャラみたいになってるけど、そんなやつじゃないんで。いつ本当の俺がバレるんだろう? っていう不安はありますね。

りんたろー。:今はイケメンを演じてるだけで、ただのイカれ野郎なんで(笑)。

兼近:いつ“バグり兼近”が登場するかわかんない。イカれてたほうが本当は楽なんですよ。本来の自分を隠さなくていいし、“みんなが求めてる兼近”をやらないで済むから。でも求められなくなったら仕事がなくなって、俺がイカれちゃっただけになる。そうなったらおしまいだなって思ってます。

りんたろー。:もうしばらくはオフィシャルでいてくれ(笑)。

――お笑い界を変えるためにはバグらないことが大事なんですね。

兼近:はい! まずはバグらないこと。求められている状態でいることが大事なので。

りんたろー。:そうっすね。なんか、日々楽しいっすね……。

兼近:えぇ!?(笑)。

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りんたろー。:いや、ふと考えたら、こういう状況がむちゃくちゃ幸せだなと思って。漫才やりたくてもできない人もいっぱいいるじゃないですか。毎日違うことが起きて、やりたいことやってこんなに楽しくて、好きなことが仕事になってるってすげぇなってふと思うときはあります。みんながみんなそうじゃないと思うから。だから、やったほうがいいよ。

兼近:何を?

りんたろー。:“兼近”演じてたほうがいいよ。

兼近:それはまぁ、気分次第なんで。

りんたろー。:こえー(笑)。

兼近:でもどっちにしろ俺はこの世界以外で生きていけないんで。そう思って東京出てきてますし。お笑い芸人以外に何ができるんだろうってたまに考えるんですけど、今まで生きてきて、あんまりできることがないんですよね。まともに働けなかったし。そう考えたらやめるのは無理ですね。それは俺にとっては死を意味するので。どんなに貧乏でも仕事なくなっても、こういうふうに生きていくしかないですね。

りんたろー。:全部、むずいからおもろいっすね。


インタビュー動画: 「BEHIND THE STAGE」


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EXIT プロフィール
ツッコミ担当のりんたろー。(左)と、ボケ担当の兼近大樹(右)で、2017年に結成。「ポンポンポン!」「お後がヒュイゴー!」といった若者言葉を繰り出す”渋谷系チャラ男漫才”という独自のスタイルで一気にブレイク。


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ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希
スペシャルインタビューMOVIE:CAMSIDE


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