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身の丈にアート/ポートワシントン・笠谷&田津原理音 「芸人が撮る芸人展」

10月6日~11日、大阪・中津のギャラリー・イロリムラにてポートワシントン・笠谷と田津原理音による写真展「芸人が撮る芸人展」が開催されました。現在、よしもと漫才劇場公式サイトの芸人写真を撮影したことでも話題になった二人。「芸人が撮る芸人展」でも、よしもと漫才劇場の芸人たちの、舞台では見せないような素顔を1枚1枚の写真に閉じ込めています。そこで写真展の最終日、会場のイロリムラで写真展について聞きました。

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――お二人のカメラ歴はどのくらいなんですか?
笠谷 1眼レフは6年くらいです。
田津原 僕は多分3年くらいです。ざっくりなんですが。

――使っているカメラの機種を教えてください。
笠谷 デジカメはソニー α7Ⅲ、フィルムカメラがキヤノンのオートボーイS2です。オートボーイS2は最近買ったカメラで、フィルムにちょっとハマって。これは理音の影響なんですけど。
田津原 僕はまずデジタルがキヤノンEOS Rっていうミラーレス1眼で、フィルムカメラがキヤノンA-1です。これは大家さんが使っていた古いカメラなんですけど、僕がYouTubeでカメラが好きっていう動画を上げていたら、大家さんが見てくれてて「田津原くんってカメラ好きんやな~。おっちゃんのあげるわ」ってもらいました。そこからフィルムにハマりました。

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――フィルムとデジタルでは、写真1枚にかける思いが違いますよね。
笠谷 はい、全然違います。
田津原 僕もです。僕は風景とかを結構デジタルで撮るんですけど、人を撮る時はフィルムの方が多いです。思い入れが強くなるので、フィルムは人を撮る時が多いですね。
笠谷 このα7Ⅲが結構重いので、外に出かける時は基本フィルムカメラしか持って行かないです。僕はもともと動画からカメラに入っているので、動画を撮る時用みたいな感じなんですけど、ポスター撮りとかでα7Ⅲを使っていて。今回展示している写真は、ポスター撮影とかのオフショットとかが多いです。
田津原 僕は展示の写真はデジタルとフィルム半々ぐらいです。僕もポスターとかはデジタルで、日常系の写真はフィルムで撮るので、割合で言うと今回は笠谷さんよりちょっとフィルムで撮った写真が多いかなと思います。

――個展を開催するきっかけは何だったんですか?
田津原 カメラを買い替えたタイミングで、せっかくいいカメラになったし、何か個展でもやりたいなくらいで……。
笠谷 いつか二人で写真展みたいなことができたら面白いなという話をふわっとマネージャーさんにさしてもらっていて。その方はもう異動になったんですけど、すごく熱くなって、「やろうよ!」って言ってくださって。それで開催まで至りました。その方のおかげです。で、今回は過去に撮った写真が中心で、撮り下ろし写真はでっかいパネルの2枚と、あと何枚かあるかなくらいです。

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――個展の告知ポスターはどなたが撮ったんですか?
笠谷 あれは自撮りです。
田津原 自分で三脚立てて、遠隔でシャッターを押して撮ったので、他の人に撮ってもらった写真はないですね。

――モデルとなっている芸人さんはどなたでしょう?
田津原 僕の同期のエジソンっていう芸人で、スタイルと衣装が漫才師っぽい人がよかったので、「顔は映らへんけどお願いできる?」って言って、協力してもらいました。

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――展示されている写真は、芸人さんのプライベートが多いですか?
笠谷 半々くらいですかね。楽屋風景とか、僕らにしか撮れないようなものを撮りたくて。舞台袖から撮ってるものもあったり……。

――芸人さんじゃないと撮れない領域ってありますよね。そこは強味ですね。
笠谷 今回、この作品展にカメラが好きな方が来てくださったんですけど、「なんでみんなこんないい表情してるの?」って。
田津原 芸人のことを全然知らないというお客さんなんですけど、すごく感動してくださって、すごい満足してくれました。

――撮りがいのある、フォトジェニックな芸人さんはいますか?
田津原 僕はラニーノーズのお二人がもう……! 展示している枚数も一番多いです。やっぱり見た目がいいのと、撮られ慣れているから僕が指示しなくてもいっぱいポーズを取ってくれるので、撮っててめちゃ楽しいです。
笠谷 どの瞬間を撮っても絵になったのは、ジュースごくごく倶楽部でしたね。ライブもクソかっこいいのが何枚も撮れました。捨て写真なくてヤバかったです。

――ジュースごくごく倶楽部の写真は『月刊芸人』にも載ってますね。お二人はどんな写真を撮るのが一番好きですか?
田津原 よしもと漫才劇場には「グランドバトル」というバトルライブがあって、「UP TO YOU!組」というオーディション組が何組か毎月、「グランドバトル」に出て昇格を目指します。UP TO YOU!組が「グランドバトル」で3組同時に上がった瞬間を撮った写真があるんですけど、その時は27枚撮りのフィルムが10秒くらいでなくなって。現像してみたらめちゃくちゃいい写真でした。バトルの瞬間とかの写真が僕はお気に入りです。あの瞬間が撮れた時は芸人やってて良かったなって思いましたね。

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――笠谷さんはどうですか?
笠谷 あ~……今、考えてたんですけどね……何やったか忘れちゃった。
田津原 え? 僕、要らんボケしました? 忘れるようなボケしてもうた?
笠谷 理音の話が長いんですよ。
田津原 おい、言うなよ……!!
笠谷 ほんま。この個展、6日間あったんですけど、理音がずっと永遠にしゃべっていて……。僕は6日間、耐えてました。だから僕、記憶がないんですよ、しんどすぎて。
田津原 そんなしゃべったかなぁ……。
笠谷 あ、でも、今回も飾っているんですけど、ヒガシ逢ウサカさんとか、もう解散しはったコンビとかの写真が撮れていたのは……。飾った時に「ああ、いいなぁ」って思いました。もう撮れないので。

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――ちなみに、撮られる方としてはどうですか?
田津原 どんな顔していいかわからないです(笑)。写真をやればやるほど「あれ? 俺、撮られる時ってどんな顔してたっけなぁ」ってなっていってます。

――撮る側では相手の表情を引き出しますよね。その時はどうやっているんですか?
田津原 僕がよくやるのは、「めっちゃかっこつけてくれる?」って1回言うんです。それで、かっこつけて1枚撮ったあとに「あ、OK~!」って言ったら、みんな絶対照れるんですよ。その照れた瞬間をよく撮ります。不意打ちみたいですけど(笑)、めっちゃいい顔をするので僕はよくやりますね。
笠谷 僕は技があるんですよ。
田津原 ええ!?
笠谷 撮る時にちょっと設定をいじっといて、先に。で、「撮りま~す」って言って、カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ……って連写したら、そのあと絶対笑うんで、みんな。連写した後がいい顔になるので。

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――連写で和ませて。
笠谷 そうです、そうです。
田津原 あ、そのボケめっちゃやります、笠谷さん。めっちゃやる! 誰かが何かボケた後にめっちゃ連写で撮るんですよ。よう見るわ、それ。
笠谷 あの時がみんな一番、爆笑するんで(笑)。そういう小技でやってます。

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――なるほど。こうしてお話を伺っている間にも、続々とお客さんが来られますね。
笠谷 足取り絶えずに来てくれました。
田津原 芸人も告知してくれているというのもあって、日に日にお客さんの数が増えていってますね。
笠谷 何人来たやろ……1,000人近く来てくれているんじゃないですかね。
田津原 それぐらい来てくれていると思います。

――芸人さんも来られてますね。
笠谷 昨日、蛙亭のイワクラが休みの日に東京からわざわざ来てくれて。新幹線で。
田津原 大阪で仕事あってとかじゃなくて、ほんまに休みやったから……。「明日までって聞いたんで」って。イワクラさんはそのあと、ストーリーで僕のことを「心配になるくらいボケてた」って載せてました。

――では、写真についてお聞きします。まず最も目を引く、特大パネルの写真、田津原さんの写真のタイトルが「負けないで」、笠谷さんは「蓮の花」。田津原さんはなぜ、コウテイ・下田さんをモデルに?
田津原 とりあえず二人で1枚ずつ大きい写真を撮ろうということだけ決めて。それで、僕、どうしようかなって考えた時に、大きく印刷することになったので、顔を大きく印刷するなら誰かなと考えて、僕は同期の下田の顔が一番面白いと思って。変顔してもらったらすごく良くなるんじゃないかなと。思っていた以上の仕上がりになりましたね。毛穴が見えるのがちょっと……気持ち悪いでしょう?(笑)。

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――貴重ですよね。この距離感で見ることはないので。
笠谷 そうですよね。実物より大きい。入ってきた人はみんな、理音の写真でふふって笑ってます。

――タイトルの「負けないで」とは?
田津原 この写真は家に飾ってもらう想定なので、家を出ていく時に「ちょっとしんどいな~」てなったら、この顔を見てもらえたら。「負けないで」って言ってるんで、そういうメッセージが伝わればなと思って決めました。これはフースーヤの田中ショータイムに相談したら、考えてくれました。

――そして笠谷さんが。
笠谷 「蓮の花」。このモデルはドーナツ・ピーナツのピーナツなんですけど、彼の本名からタイトルを考えました。女装してもらって、泉南のマーブルビーチで撮りました。(白桃ピーチ)よぴぴに衣装も化粧もプロデュースしてもらって。目から下の毛を全部、剃ってもらって。
田津原 映ってない部分も。
笠谷 ちゃんと女性ものの下着も着てます。これは500枚くらい撮ったうちの1枚で、30分くらいの間に撮りました。めっちゃ連写しました(笑)。その中から、何時間もかけて選んだ一枚です。夕焼けが一番きれいな時間で、波とかも色がきれいに出ていて。

――色も構図もベストだと。
笠谷 こ、この太ももです!! このエロス……!
田津原 めちゃくちゃ気持ち悪い。自分の趣味用やん。
笠谷 この海水がめっちゃ気持ち良さそうでしょう?

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――ちょっと恥じらいがあるような内股の感じってなかなか出なさそうですね。
笠谷 はい。僕がもう、乗せに乗せて写真を撮りました。「かわいい~! もうシャッター止まんねぇよ!!」って言いながら(笑)。最高の1枚が撮れました。
田津原 先に笠谷さんが写真を撮り終わって、この画像が送られてきたんですよ。「こんなん撮れたわ」って。それ見て、めっちゃプレッシャーに感じました。こんないい写真撮ったんやったら、僕、めっちゃ頑張らなって。

――ほかにも、ミルクボーイさんの写真もいいですね。
笠谷 これは僕が撮って。『月刊芸人』の時ですね。『M-1』優勝直後ぐらいに撮らせてもらったんですが、自分たちのポスターを指さしてる写真です。

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――内海さんのうれしそうな表情が印象的ですね。
笠谷 僕もお気に入りの一枚です。
田津原 お客さんもみんな「これいい」って言ってくれています。

――先ほどおっしゃっていたバトルの写真は?
田津原 このモノクロの3枚なんですけど、よく見たら(その時、昇格した)エジソンの関谷は、ちょっと泣いてるみたいで。この瞬間、袖で芸人がみんな見ていて。この時、ずっとシャッター止まらなかったですね。

――バトルの時はいつも、舞台袖では写真のような雰囲気なんですか?
田津原 これは珍しいですね。3組が同時に上がることはないので、これが一番、袖が盛り上がった瞬間ですね。大好きな写真です。

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――作りこんだ写真はあるんですか?
笠谷 加工しまくった写真はありますね。よぴぴの写真なんですけど、明瞭度をくっと上げたら、よぴぴの古傷が浮かび上がってきました(笑)。
田津原 それずっと言ってるけど、そんな見てほしいの?
笠谷 見てほしい……! 
田津原 来てくれたお客さん全員に言ってるんですよ。やめて~! よぴぴは可愛く思われたいのに。

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――爆ノ介さんの写真もいいですね。
笠谷 これは理音が撮りました。
田津原 爆ノ介さんの、ザ・プラン9に加入される前の最後の単独です。「LAST GIGS」っていう。この時、僕は白黒のフィルムを使ったんですけど、白黒というのも相まって爆ノ介さんが1960年代ぐらいのシンガーみたいになってます(笑)。横顔とか、何を思ってるんやろうっていう表情で。僕、爆ノ介さんもめちゃめちゃ絵になるので、撮るのが大好きです。

――では今後、写真でチャレンジしたいことはありますか?
笠谷 次はちょっと写真集の値段を下げたいと思います。今回は原価がかなり高かったので。
田津原 最後はめちゃ反省で終わってまう(笑)。
笠谷 この「芸人が撮る芸人展」っていうタイトルにしたのも、撮る側の芸人が増えても面白いかなという思いがあって。カメラ芸人はまだまだいるので、また何人かで「芸人が撮る芸人展2」をやりたいなと思います。

――カメラ芸人さん、候補はどなたかいますか?
笠谷 実は伏線を張っていて、プロフィール欄にもう一人カメラ芸人が写っているんです。スーズの高見さんなんですけど、次は高見さんとも一緒にできたら面白いなと思います。
田津原 そうそうそう。あとカベポスターの浜田もずっと入りたいと言ってきているので。
笠谷 どんどん増やしていって、また写真展ができたら。撮り下ろしの写真集もいいですね。そのために撮影するとか、夢が広がります。

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■ポートワシントン プロフィール
伊藤知貴笠谷翔平のコンビ。
伊藤の特技は、野球/水泳/遠投。笠谷の特技は、英会話(ニューヨーク6年間在住経験あり)/動画・画像編集/写真・動画撮影/バス釣り(歴15年)/アコースティックギター
■ 田津原理音 プロフィール
大阪市24区住みます芸人(生野区担当)。
特技はポップなイラストを描くこと ムーンウォーク モノマネ 大乱闘スマッシュブラザーズ64

ポートワシントン INFO

田津原理音 INFO


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取材・構成/岩本和子
撮影/長井桃子

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