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『ちょっと考え事してました』ヒューマン中村

月刊芸人での短期連載『ちょっと考え事してました』第二回ということで、本当にどうでも良い考え事をここで書かせてもらってるわけなんですが、そういうどうでもいいようなことって、何かを待っている時とかに、ボーッと考えちゃいますよね。

というわけで、今回はゴーゴーと回る洗濯機の音を聞きながら、書かせてもらっております。

もしもこんな状況に出くわしたら、どうすればいいのか、とシュミュレーションすることありませんか?

自分が入った銀行に強盗が入ってきたら。
乗っている飛行機がハイジャックされたら。
明日地球が爆発するとしたら。

僕はその中でもよく考えるのが、
『殺人事件の現場に出くわしたらどうすれば良いのか』です。

例えば泊まりに行ったホテルで連続殺人事件が起きて、しかも密室殺人でどうやって殺してるのかわからない、犯人も誰かわからない、みたいな場面に出くわしてしまったら、どうするのか。

皆さんならどうしますか?

もちろん、殺されないように動かないといけないですが、もっと気をつけなければならないことがあると僕は考えます。
それは、

『周りの人に期待させないこと』

です。
もっと詳しくいうと

「この人に任せたらきっとトリックを解明してくれる! そして、きっと犯人を見つけてくれて、さらには反論してきた犯人のアリバイをきっと崩してくれるに違いないんだ!」と周りの人を期待させないこと。

これに尽きます。

連続殺人事件なんて、そんな簡単に推理なんかできるわけないと思うんです。
コナン君とか金田一少年とかが天才なだけで。

それなのに、「推理できそう感」だけ周りに与えて期待させるだけさせといて、結局犯人が見つからないままチェックアウトとかしてしまったら、推理するする詐欺みたいに言われてそれはもうSNSで叩かれること必至ですよ。

だから、もし殺人事件が起きても「推理できそう感」は絶対に出してはいけないんです。

僕みたいな凡人は、推理できそう感を出さないように動くしかありません。

まず殺人事件が起きたら、必要以上に死体にビビるようにします。
死体にビビらなかったら、
「あれ? 死体にビビッてない?
ということは死体に慣れてる?
ということはこんな修羅場を何度もくぐってる?
ということは、推理できる?」

はい、四手詰みです。
完全に「推理できそう感」が出てしまいますね。

なので、第一の殺人が起こったら、ひたすらうろたえる。
それもハードめに。
おそらく殺人現場なんてみんな初めてでしょうから、ほぼほぼみんなうろたえると思うんです。
だから、普通のうろたえ方では、
「まだ死体に慣れてないだけで、経験積んだら推理できそう」
と見込みがある感じに思われてしまう恐れがあります。

なので、人よりもうろたえる必要があります。

僕は誰よりも早く失禁しようと思ってます。

さらに、被害者が床に自分の血でダイイングメッセージを書いていた場合、その上で失禁します。
そして、ダイイングメッセージを消します。

これは、
「あれ? 失禁するぐらいうろたえてるけど、ダイイングメッセージが消えないように配慮しながら失禁してる。
もしかして、推理するため?
ひょっとして失禁することによって脳をフル回転させる、その名も失禁探偵?」
と思われないためです。

そうです、失禁しただけでは、少しキャラの立ってる探偵としか思われない可能性があるのです。
なので、必ずダイイングメッセージの上で失禁します。

めちゃくちゃ怒られると思いますが、これも「推理できそう感」を出さないためです。
失禁と書いて「勇気」と読みます。
そのぐらいの覚悟で、いかせてもらいます。


もちろん、それだけでは油断できません。
そこからの会話は「密室」とか「アリバイ」とか「死後硬直」とかの専門用語は絶対に使わないようにしないといけません。

せっかく一世一代の失禁をかましても、
「でも、死後硬直を考えると……」
なんて口走った瞬間に全てはパァです。

いや、むしろ失禁してる分、
「野生的な天才タイプ?」
と、そのギャップで一気に「推理できそう感」メーターの針が振り切れる恐れがあります。
ですから、

密室は「なんか入れん感じ」
アリバイは「思い出」
死後硬直は「超合金みたいになってる!」

という風に言い換えて、専門用語を喋らないように気をつけて行動した方がいいと思います。

あとは、ルービックキューブとかを触ったりしないことです。
殺人事件が起こった後でルービックキューブなんてやってたら、ただの「推理」です。

推理できそうどころか、推理そのものになります。
こっちが聞いてもいないのに、みんなアリバイを言ってきたりします。

もしルービックキューブを間違えて持ってきてしまった場合は、ルービックキューブの表面に貼ってる、赤とか青とかのシールを剥がして色んなところに貼ったりして、

「あ、シールが欲しかっただけなんや」

と、思わせるようにしていきます。
そして、シールを剥がし終わったルービックキューブを持って、大きい声で

「これで野球しよう!!」

と言います。
こうすることによって、完全にルービックキューブの使い方をわかってないやつになり、殺人現場とルービックキューブという、最大の「推理できそう感」ピンチを切り抜けられると思います。

あとは、事あるごとに、事件が起きた時にモブキャラが言ってそうなセリフ第一位の

「これ、なんかの撮影ですか?」

を言いまくったら、オールOKかと。

よし、これで連続殺人事件の現場に出くわしても大丈夫そうですね。
考えてたら、熱くなって失禁とかいっぱい書いてしまいすいませんでした。(ちなみに、失禁という単語、あと一回出てきます。)

最後までこんなどうでもいい考え事にお付き合い頂きありがとうございました!


実は、失禁と書いて勇気、ぐらいで既にピーピー鳴ってまして。
洗濯機を待ってたつもりが、逆にかなり待たせてしまってたようなので、この辺で。

彼(洗濯機)は何を考えながら待っていたんでしょうね。


ヒューマン中村 プロフィール
NSC大阪校 25期生
特技は大喜利、高校生クイズ・ロボットコンテストなどの男子学生のモノマネ。
2021年 第六回上方漫才協会大賞 文芸部門賞 受賞
2021年 R-1ぐらんぷりクラシック~集え!歴戦の勇士たち~ 初代MVP(エムブイピン)

ヒューマン中村INFO

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著者/ヒューマン中村

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