『雲をカスミと』 裏話 vol3
2023年4月14日〜16日
カナリ3回目公演『雲をカスミと』が上演された。
前回に引き続き出演者と演出へ稽古場での裏話を伺った。
初回
『雲をカスミと』裏話 vo1
前回
『雲をカスミと』裏話 vol2
座っているだけでバトルシーン
ーーー夜も深くなってきましたので最後の質問にしますね。
岡 ：えー、さみしい
ーーーお気に入りのシーンを教えてください。
大友：
タダシ 「カスミは面白いですよ」
きい・トオル「君ずっとうるさいよ」
です。
ーーーギャグシーンですね。
大友：あそこのタダシずっと好きだった。
岡 ：ずっとおもろいよな
髙木：本当にうるさいですよね。きーちゃんにま
でずっとうるさいっていわれる。
岡 ：だってずっとうるさいんだもん
髙木：ほんとはトオルだけが言うはずだったの
に、岡さんがきーちゃんやってみたら本当に
うるさかったから、二人でやることになった
んです。
岡 ：これきーちゃんも言うなーって思って。
脚本書いているときに計算していたわけじゃ
ないんですけど、きーちゃんがしゃべろうと
すると言うんですよ。邪魔で邪魔で仕方な
い。作者の私としては「邪魔してくれ」なん
だけど、きーちゃんからしたら「くっそ、こ
いつのせいで一個も話が進められない！」
ーーーいいうざさだよね
岡 ：ああいうのですよ。本当は私が一番書きた
かったのが。
大友：いや、最高ですよ
あのシーンのタダシずっとアウェイじゃん。
あのシーンが面白くて、ちょっと昔のカス
ミが戻りかけるんだよね。
岡 ：そうだね（笑）いいんだよ、それで。
大友：だから「うるさいよ」の時、私もこう「ガ
チ？」って感じの目線を。
岡 ：タダシ君うるさいなー
髙木：あいつ（タダシ）必死に食らいついている
んですけど
岡 ：そうなのよ。タダシのあそこの発言の動機
は全部カスミを守らなきゃ、このやばい人か
らっていうのね。
ーーー「動物じゃないですよ」も？笑
岡 ：「ヌー？牛の？動物雑誌ですか」
一番馬鹿台詞。
大友：そっち行くんだ～ってね。
本当に好きすぎる。
ーーー髙木くん的には
髙木：いやあね。皆さんからの反響はもっぱらタ
ダシのギャグシーンです。それを自分で言う
のもあれなんですけど。
髙木：タダシも、晏治も必死でくらいついている
ので（ギャグシーンは）ここ好きって感情な
しでやっている。もちろん見てたら大爆笑な
んですけど。
大友：そういうキャラやっているときは大変だか
らね。
髙木：だから、私の方からは結構シリアスを提案
させていただきたくて。
稽古の頃からラブコールさせていただいて
いるんですけど、カスミにきいちゃんがイン
タビューを始めるシーンですね。カスミが恐
竜の話掘られて、分からなくなって、呼吸が
荒くなって最後にカスミが大きめに「分から
ないんだって」って言うんですよ。
大きめに声出すシーンが、一個前に「ね
え」（ってトオルとタダシに言うシーン）が
あって、トオルとタダシは圧に押されて黙る
んですね。ちょっと怖くて。
なんだけど、「分からないんだって」に
（対して）きーちゃんは反撃するんですよ。
カスミ 「わからないって」
きー 「分からないじゃないでしょ」
っていう。その、なんて言うんですか、この
感じ、すごく、いい……。語彙が（笑）
大友：語彙無くなっちゃった（笑）
髙木：そう、このシーンは一番緊迫するシーンで
空気がガラッと変わるし、毎回鳥肌が立っち
ゃう。
ーーータダシとトオルに大声を出すシーンときいちゃんに反抗するシーンで対象になっているって髙木君が言っているんだけど、これは意識して書きましたか？
岡 ：いや、ちょっと待ってください、慎重に答
えます。（考え込んで）……意識してないです
ね。ごめんなさい、意識して書いてたらよか
ったんですけど。
ーーー髙木くんの感性が豊かなんですね。
岡 ：そうだって答えればよかったな。
ーーー全然そんな……
岡 ：そうです
ーーー嘘をつくな！
髙木：ほんとにここいいですよね
大友：ここは稽古の時に、その日演出助手がいな
くて、私と岡がやっているのを晏治が見てく
れて、色々アドバイスしてくれた。助かりま
した。
髙木：小屋の時の誰かじゃないですけど、オタク
出てましたよね、あそこは。
岡 ：よかったな〜まじで
だから、あそこの演出晏治ですよ
髙木：いやいやいや、はずいってそれは
でもそれで、岡さんが納得してくれたのな
ら、嬉しいですけど。
ここのシーンは、超バカっぽい言い方する
と、怖さヒエラルキーのトップにいたカスミ
がさらに上の圧にやられるシーンなんです
よ。
そこがバトル漫画みたいでいいですよね。
「こいつ、最強とちゃうん！？」って。最強
だと、思っていたやつを更に上のやつが黙ら
せるみたいな。『ジュラシックパーク』で別
の恐竜におびえてたらそいつがティラノサウ
ルスに一撃でやられてっていうシーン。
岡 ：楽しい！大好きなんですあのシーン！
髙木：そういう迫力がありますよね。ただ二人で
並んで座っているだけですけど、バトルシー
ンなんじゃないかっていう覇気がありました
ね。
岡 ：嬉しいなあ
髙木：自分の演出褒めていることになっちゃう
岡 ：なんできーちゃんがここに来たかって、言
ってみれば復讐なのね。
復讐の方法ってきーちゃんの「分からない
じゃないでしょ」以降のシーンじゃなくて、
ただ怪獣になった話とか、記事にするってい
う行為をチラつかせることでカスミにイヤな
思いをして欲しかったの。それだけ。本当に
ネチネチしているんだけど、いじめに対する
報復だからさ。
だけど、話しているうちに本当はきーちゃ
んがカスミに伝えたかったことが出てしまっ
たっていう。
見てたら分かると思うけど全然話の差し替
えしているからね、きーちゃんは。通ってな
いし筋が。でも、怒りってすりかえでおこっ
たりするから。それでお客さんにいやな思い
してほしかった。
髙木：悪いなあ
岡 ：それがうちの親が嫌いだったの。普通に嫌
な気持になって、嫌いって
ーーーでも、演出としては成功しているよね
髙木：そうですよね。嫌いになったらシメシメで
すよ
岡 ：正直そう。ただ、親から真正面から言われ
たのでショックを受けたっていう。
髙木：複雑だ。
岡 ：きいちゃんの本来の目的は、ただ取材する
だけして、そういうことで～ってかえって嫌
な思いをしてもらうだけだったの。
髙木：その若干幼稚とも捉えられる感じがまたリ
アルですね
大友：ここしかないと思ったんだろうね
岡 ：実際見たわけだしね、怪獣になったところ
を。
ーーーでも結局、きーちゃんも悪くなりきれなかったですよね
大友：そうなんだよ！きーちゃん優しいんだよ
だからこっちの罪悪感がやばい
岡 ：今までの人生で嫌いな人とかはいたけど、
その人はその人なりの正義があるって大人に
なってきたから理解できるようになった。
今、エンタメ業界で言われることだけ
ど、「悪役はいない」というか。「人が全員
死ねばいいや」で動いている悪役なんていな
くて、自分の守りたいものとか信念があると
いうか、優しさを持っていない人はいないと
いうか。まさにきーちゃんはそういうキャラ
クター。
ーーー複雑なキャラクターだ
岡 ：複雑だね。映像見たら分かると思うけど私
表情めちゃめちゃやってるから
大友：やばいよ、ほんとに。
カスミ「もしかして、きーちゃん？」
きい 「そうだよ、思い出した？」
って変わるときの表情がやばい。
ーーーこわいよね。
大友：怖いほんとに。カスミの目線カメラがあっ
たら見て欲しかった。
岡 ：これ気づいている人ほとんどいないと思う
けど、
カスミ「話聞いて欲しい。」
の時のきいちゃんの顔ですね。
髙木：うわ～そこ見れてない！
岡 ：共演者もほとんど見えていないと思う。み
んなカスミ見ていると思うから。
大友：私は台詞言った後ちらっと見てるけどね。
でもね、見れないよね、あんなこと言われた
後だから。
岡 ：私はカスミの顔を「こいつまじ」って顔で
見てる。
大友：そうだよねー、マジで気まずいあそこ
岡 ：「こいつあたしのことかばいやがった、あ
んなこと言ったのに」って。
髙木：あーなるほど
岡 ：かばわれて、顔見られないから、反対方向
向いて、簡単に言っちゃえば悔しそうな顔し
ていた。そんな簡単じゃないけど、もっとあ
るけど。
ーーーうわー、全然見てなかった。
岡 ：そこはね
髙木：YouTube で
劇団カナリ第3回公演
『雲をカスミと』 視聴リンクはこちら
岡 ：あと、明かりだよね。傍白で明かりがつい
ているときはきーちゃんめっちゃ笑顔にして
て、明かりがついていないときは真顔です。
大友：きゃー
岡 ：これはね、絶対カメラに写ってないと思う
ーーー細かい、芸が
岡 ：お客さんも見てない。これは私だけ、私を
追っている人がもしいたら気づく
大友：岡のオタクしか分からない
ーーーじゃあ、本当のオタクかどうかそこで見極めるんですね
岡 ：別に本当のオタクになってほしいとか思っ
てないから（笑）
岡 ：しんじくんの好きなシーンは？
嶋口：二つあって、一つは演出的に映えるなあっ
ていうのが、
トオル「あの怪獣はカスミなんだ」
って言って照明ピカーってなって恐竜ガオー
ってなるところなんですけど
岡 ：中村さん（音響）がミスったところね
大友：言ってやるなって〜
岡：言っちゃいました、すみませんすみません笑
嶋口：あそこは掴みとしてはめっちゃいいな〜っ
ていう点で好きっていうのと。
流れとして好きなのは
トオル「北海道行こう」
は好きですかね。それまで今まで色々あって
からのトオルが勇気出して「北海道行こう」
っていうのが、トオルはトオルでカスミを励
まそうとして、タダシはタダシなりにってい
うのがとても好きなんですね。
眠い…（深夜1時）
言いたいことあったけど忘れちゃった
岡 ：そこはいいシーンだよね
嶋口：小屋入り中の稽古か何かの時に「かすみが
退院したら北海道に行こう」っていうはず
が、「3人で北海道へ行こう」って言ってしま
って
岡 ：「3人で」っていうのはしんじさんが間違え
て言って、それが最高だったんでこれで行こ
うってなって
嶋口：俺も気に入っちゃってここはいい…いい…よ
か…った（眠りかける）
岡 ：遺言です
ーーーごめんね！夜遅いもんね！
髙木：すごいっす、本当にトオルでしたね
嶋口：あれは素ででた。
岡 ：岡日出子（の正体）はしんじだったんです
よね
嶋口：でへへ
岡 ：信じるか信じないかは……あなた次第なんだ
よね〜
大友：「しんじ」だけに？
岡 ：？？そ、そうなんだよね〜…？？？
大友：……ごめんなさい。
ーーーこの作品、演出家の一存よりもみんなで作っていったような感じがしますね
髙木：あんまり本筋関係ないところで言うと最初
から結構変わりましたよね。
（タダシがカスミに病院で話しかけるシーン
は）稽古場で考えて恐竜にこじつけようとな
ったんですよね
岡 ：（元々は）タダシが読んでいたのは『チェ
ンソーマン』だったし、昨日見ていたのは
『モニタリング』だったんですけど、この辺
りを怪獣にこじつけて一悶着させようってな
って。『怪獣8号』になって、さんまさんお笑
い怪獣だからって『踊る！さんま御殿』にな
って。
そういう感じで随所みんなで話し合いなが
ら作っていった感じありますね。
ーーーでは岡さんが1番お気に入りのシーン
岡 ：全部だって、
全部って言わざるおえないって。
髙木：全部自分のものですもんねー。
岡 ：ラスト、終わり方に関しては絶対こうした
いって思っていたから、好きだし……
え、むずいよ、何だろう…難しい〜
ーーーじゃあ、自分が書いているときと演じた時でブラッシュアップされたものは？
岡 ：執筆時の私を思い出していますね
ーーー何度もタイムワープさせてすみませんね
大友：役者が想定を超えたところ聞きたいな
岡 ：
カスミ 「ちょっとうるさい」
のところの
タダシ 「お腹空いてない？」
は想定していた演技とは全然違うんだけど、
こっちの方がいいって思った
髙木：なんかすみません（照れながら）
岡 ：脚本書く時って、人が会話しているのを想
定しながら書くんだけど、当て書きじゃない
って言った通り、晏治の声とかしんじさんの
声で書いてないのね……。だからほぼほぼまあ
私の声で再生してる。
さっき言った「お腹…空いてない？」とかは
もっと弱々しい想定で描いてたんだけど、や
っぱ晏治がやってくれたやつの方がめちゃめ
ちゃ芯があるというか、本当に会話をしよう
と思っているけど駄目だったっていうニュア
ンスがあったので素晴らしいこれじゃないか
ってなったんですよ。
髙木：そうなんですか？
はじめから岡先生からはそう言う感じでっ
ていわれていたから、その時点で違ってたん
ですね
岡 ：読み合わせの時かな。
岡 ：それから、カスミの「なんで…」のところと
かは最後うますぎ問題。
髙木：本当に
大友：恥ずかしい！
髙木：泣いちゃいそうになる時ありますもん、隣
で立ってて
大友：いやでも、なんか、稽古で本番ほど出せな
くて申し訳ない
岡 ：いや、演技はね本番で伸びるものなんでい
いんですよ。私いつも稽古でやったこと忘れ
て本番やってますもん。なので、（自分が役
者やる時は）演出家は怒っていると思いま
す。
あともう一個はね、トオルの最初の方です
ね。怪獣が暴れているという状況で、「バカ
は酷くない？」って言う荒唐無稽なツッコ
ミ。これ、お客さんが「は？何考えてるの？
この脚本家は。バカじゃないの」って絶対思
うだろうなーって、思ってたのね。
辻褄が私の中ではあっているんだけど、合
ってないって思われるんじゃないかって、見
えるんだろうなーと思ったんだけど、不思議
としんじさんがやったらね、すげえ、こんな
自然になるんだって。
岡 ：私が昔描いた別の作品があるんだけど、そ
の時こういうね荒唐無稽ツッコミさせまくっ
たのよ、キャラクターに。それを書いて出し
たら不条理劇って言われたのね。不条理劇の
つもり全然なかったんだけど、新しいみたい
に言われて。それ今回あんまり言われてなか
ったし、トオルのキャラクターもあのシーン
良かった（？）し、シンジさんの実力だな〜
って思って。あれはすごかったですね。
嶋口：あざざーす
ーーー今日はありがとうございました。
岡 ：あ〜終わっちゃう！雲カスの活動が！
大友：また、ちゃんと話したいな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？