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【デビュー編】壱から始める猫キャンプ
茶封筒のような袋からガサガサと音を立てリードとハーネスを取り出すとリビングの端から物凄い勢いで走り取り出したハーネスに向かって一直線にこむぎが飛びついてきた。
餌か何かと勘違いをしたのか?
と思ったのだが、どうやらそうではない。
そんな姿を見て素直に思った。
機は熟した と。
ついに実現するこむぎとの猫キャンプ、その一部始終をお伝えしようと思う。
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考えられるリスクを整理する所からがスタートだった。
例えばテント
こむぎと同じ空間で過ごせるようにインナー部分ができるだけ大きく一つの空間で最大面積が使える幕が理想だが
例えば我が家で所有する十数張りのテントの中でこの時期のメインとして使用してきたビンテージMARECHALやBAHARIなどの鉄骨テントは原則フロアレスのため隙間があるのがネック
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インナー部は寝るだけの空間で広くは使えない…そんな消去法で先ずはテンマクデザインPEPO一択という結論となった。
次に天候が問題だった。
午後三時からの雨予報で夜間は本降りときた
タープの準備も必要だしハーネスは長さの延長が必要だ。
そしてトイレをどうするか?
爪研ぎは?
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考えられる全てを叶えるのは難しいと判断、とにかく逃げ出さないという事に注力し猫トイレはキャンプ専用品として蓋のできる大きめのタッパーを使い慣れ親しんだ爪研ぎを準備
細かい所は、トライ&エラーを繰り返しその都度ブラッシュアップとする。
幸いな事に子猫のこむぎはひとり遊びは出来るが独り立ちしているわけではなく私達二人にべったりなので猫連れキャンプに特段の緊張はなかったが、タープを叩く雨音を怖がったりしないだろうか?トイレの失敗はしないだろうか?設営、撤収時は待っていられるだろうか?
などと猫親としての心配は尽きない。
よってなるべく近い場所自宅から約一時間の福島県は川内村いわなの郷をキャンプ地にした。
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春とはいえここ川内村の春はまだまだ先で冬枯れの景色はある種、虫などの脅威などを思えば安心材料でもあった。
今にも泣き出しそうな空の下、設営を開始PEPOの設営が終わる頃、雨がぱらつき急ぎタープの設営にかかった。
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数週間前迄は枯芝一色だったフィールドには
緑が見え始め春の息吹を唯一感じるのだが
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この日の気温は決して高くなかった。
PEPO前面のメッシュ窓から興味深げに外を窺うこむぎを見かねてガイロープとカラビナを使いリードの延長を行いテントを開放する。
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PEPOの前後天井にはランタンフックとなるループが付いているのだがこの二つのループをロープで繋ぎそこにカラビナをかけガイロープで延長これでテントの全方位と外に2m程度の範囲で行動半径を広げてあげた。
すると…恐る恐るこむぎが外にやって来た。
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そう思ったのも束の間芝の上に平然と向かい足取りは実にシッカリしている。自宅でのトレーニングは効いていたのだろう。自らの意思でこの地を踏みしめ歩く姿は理解を深めているのか安全を確認しているのか?
ただ、タープの外に出るのはルール違反、猛禽類の格好の餌食になりかねないからだ。リードを引きタープ下リビング中央へと誘う
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ここでようやく人間達は腹ごなしの乾杯となった。こむぎのデビューという事で手間を徹底的に排除するキャンプ
キャンプ場敷地内に併設されているレストラン幻魚亭でいくつかのテイクアウトメニューを購入、イワナの塩焼きや唐揚げがオツマミ
こむぎにはフリ塩部分を取り除いたイワナの白身を与えるのだが
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初めて目にする食材を物ともせずがっつくその姿は私たちを大いに和ませたもの。
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ペットと共に暮らす中で給餌はコミュニケーションでもあり楽しみの一つ、美味しそうに頬張るたったそれだけの姿に微笑みと喜びが生まれ、やがてそれは絆へと昇華する。。
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雨が本格的に降り始め次第にタープを叩く雨音が大きくなる。
例えば人間ならば雨音に癒しを感じれるものだが果たして猫はどうだろうか…。
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毛布で作った妻手製の猫鍋の中、彼女は雨音を怖がるそぶりもなく楽しんでおり、そのうちに寝てしまったことから察するに猫にも理解可能な癒し効果があるのかも知れない。
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冬キャンプの穴場いわなの郷はこの日も貸切りのようで
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コテージ利用の客はいたようだがキャンプ泊は我が家のみ
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雨に加え風を伴って来たため焚火は次回にペンディングする事にした。
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こうなると寒くて寒くて外で飲んでいる場合ではなくなり、まだ18時手前だったけれど早々にテントin外はまだ明るく日が長くなった事を実感したものだ。
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テントの中ではこむぎが寝入っていたのだがわざわざおこして遊ばせる事にする。
子猫の活動時間は一日24時間の内わずか4時間、20時間は眠って過ごすと言われている。
彼女はすっかりPEPOが気に入ったようで自宅と変わらぬ天真爛漫さを見せハシャギまくっては
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私たちを大いに喜ばせた。
散々遊びまわった挙句アルパカストーブの熱に眠気がきたのか猫鍋の中で動きが鈍くなって行く
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どうやら相当気持ちが良さそうだ。
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次の瞬間、完全に溶けてしまった。
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無事朝を迎え「キャンプ楽しかった?」
…と、こむぎに尋ねると
「にゃぁ」と小さく返事をした。
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私の懐に抱かれキャンプの朝を満喫するこむぎ
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撤収中もエンジンのかかっていない車内で大人しく待っていた。
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こうして、こむぎのデビューキャンプは滞りなく無事終了する事ができた。
準備がどうだとかそんな事以上に彼女自身がパーフェクトだったと思う。
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今となっては告白になってしまうけれど、亡くなってしまった愛猫ナツへの償いの意味もあるのがこむぎを連れてのキャンプであると思っている。
何せかつての私達は愛猫のナツをほったらかして何日もキャンプ三昧し続けていたから
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キャンプから帰ると、ナツは絶対に自分から姿を現す事がなかった。たった1人で家にとり残され、もしかすると怖い思いをしていたかも知れないし、ただ拗ねていただけだったのかも知れないけれど…本当のところはもちろん分からない。
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本来であれば猫だって家族の一員だから留守番ではなく連れて歩ければ理想であり、そうありたいと願いこそすれ臆病なナツを連れ出そうという気持ちにはならなかった。
ただ、いつもキャンプを終え帰宅をしてナツを探し出しそれこそ猫可愛がりをするくらいなら出かけなければ良かったという深爪に似た後悔が彼女の死によって心の中にもたげたわけで(もちろんキャンプが原因でなくなったわけではないけれど)その気持ちは、こむぎに関しては絶対に寂しい思いをさせてはならないという決断となった。
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ナツを失いこむぎを迎えた今、こうして実現した猫キャンプは夫婦キャンプの我が家にとっては初めての家族キャンプでもありこのキャンプの成功は、それはそれは心地よいものだった。
それがキャンプ
2021年4月拙著に加筆出稿致しました
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