岩手薬師川の岸辺で味わうキャンプの良さ@タイマグラキャンプ場
あれは2021年の夏の終わりの事。
当時は、疫病騒ぎの真っ只中で仕事が出来ず人混みを避ける意味もあってとにかくキャンプ三昧の旅が市民権を得ていた頃
コロナがあろうとなかろうと、根っからのキャンパー夫婦である私達にとっては水を得た魚となり東北キャンプ旅に明け暮れる日々だった。
秋田県御所の台で夕陽を堪能し津軽鋳釜崎の絶景を堪能その後は五所川原の無料の営地、下北半島を経て岩手県二戸入り
最終地点は我が家にとって最もしっくりくるマイベストキャンプ場を選んだ
ここで締めくくる事にしたのは当然の成り行きてもあった。何せ、キャンプ旅となると絶景につぐ絶景の連続旅であるわけで、締めくくりとなる最終地点にそんじょそこらのキャンプ地を選ぶ思考がそもそもなくなっているから。
タイマグラと言えば、東北キャンパーくらいにしか知名度がないか?と思いきや、そこそこ有名な場所で早池峰登山の基地でもあり、逸話として最もインパクトが大きいのが電気設備が日本で最も遅く整備された事に加え熊と共存のキャンプ地である事。
この川の対岸にはバンガロー村が整備されているが、薬師川を渡る熊の姿はかなりの確率で目撃されているガチの熊の生息地なのだが…
タイマグラは熊除けにとマスの養殖場で商品にならない死骸などを熊の餌として与えたりしている経緯がありそれ以後、熊によるイタズラなどの被害が激減したとの事
満腹の熊は人を恐れる事はあっても危害を加えたりという事故を起こしていない事実が観測されているという。
熊注意の看板一つない、熊と共存のキャンプ場である。
タイマグラキャンプ場
早池峰山と薬師川に乾杯
木曜のチェックインは貸切りかなぁと想像していたけれど…さすがはキャンプブーム
貸切りとはならず数組の入場者があった。
岩手エリアのキャンプというと今年はこのスーパーを利用するのが楽しみになった妻。
その名も『スーパーオセン』
岩手、西和賀に本拠地を置く地元スーパーだがこのスーパーが凄い。その凄まじい人気もさることながら価格、クオリティ共に地元に誘致したいレベル
店内BGMはエンドレスで軍艦マーチ
これで完全にヤル気にさせられる世代の妻 笑もちろん消費者への優しさに溢れたこのお店のお惣菜は味が良くこの日のスターティングメニューとした。
「あぁ〜やっぱタイマグラ最高!」
「岩手ばんざーい!」
「ありがとうオセン!」
川沿いのこの場所は初めてこのキャンプ場に来た時に余りの景色の素晴らしさに胸を打たれ別な場所に設営していたのをわざわざ場内で引越しを行なってまで拠点とした場所。
よくキャンプ場には景色一番の場所を一等地と称して取り合いになるものだが、ここタイマグラの一等地は紛れもなくこの場所。県外人である私達がドンとこの場所を拠点にするには烏滸がましい気持ちもあってガラ空きの時だけはここに張る事を許して下さい…そんな気持ちで地元キャンパーさんから嫌われないようにしてきた。
当時は、苔がびっしりと生え全面フカフカのフィールドで水捌けが悪い事が見て取れたものだが、苔はカビを駆逐すると聞き喜んで苔のテン場を選んだもの
当時の面影はわずかながら残っていたのは嬉しいけれど随分とフィールドは痛んでしまっていた。
相も変わらず川音は大きいけれどこむぎも気に入っているのが分かる。
テントはマルシャル一択。
どうしてもこの景色の中に我が家の家宝ビンテージマルシャルを置きたかった。
こうしてタイマグラの景色の中に置いてみるとやっぱりマルシャルで正解。タープは何この張り方?なトラディショナルな雰囲気を排除したクセモノ感を意識した。
なぜかと言うと…それはタイマグラの早池峰山と薬師川のこの雰囲気が私には米国オレゴンの大自然のように見えていたから。
フランス幕であるマルシャルはどう考えても欧州的でトラディショナルな雰囲気を壊して初めてこの景色に似合うと
そう考えたから。
そんな私の理屈は妻にとっては屁理屈でしかないけれど張り姿は悪くない。
前面は上向きのオープンスタイルで人が通る後方はプライベート感重視の片落とし
キャンプ地に幕やタープの張り方が合うか合わないかそんな事を意識させるほどに
この景色を大事にしたいと思う私だった。
ただ一つ問題を抱えていて
実は…
そもそもオレゴンになんて行ったことありません笑
あくまでも印象や想像の話という事、結果普段通りスコットランドウィスキーの封切りを楽しみにここにいる。
まぁとにかくレダイグのソーダ割りはキャンプでは問答無用の美味さ、タイマグラがオレゴンだと思っていてもアメリカンウィスキーであるバーボンという選択は出て来なかった。
川音が全ての騒音をかき消す実にいい夜だった。翌朝、目を覚ますとそこにはこむぎの顔があった。
マルシャルに以前あつらえた格子窓からは妻手作りのカーテン越しでも燦々と朝日が差し込む明るい明るい朝。
「あぁこのことだ」
コレがテン泊の良さだと大先輩が言っていた。
朝目覚めるとそこは明らかに自宅でなくテントの屋根壁が真っ先に目に入りコレがキャンプの朝である事を教えてくれる。
それは非日常を感じさせる幸せな朝。
早池峰山もくっきり見え真っ青な空、最高の朝
これだからキャンプはやめられない
連泊と言えば和朝食
スーパーオセンで仕入れた食材が光るキャンプ朝食
テン場は川沿いという事もあって
鬼胡桃が其処彼処に落ちていた。
(9月のことです)
コレらを拾い集めウィスキーのアテにと実を剥いで川で洗って置く事にした。
冷た過ぎるくらいの薬師川には午前中からソーダ類を冷やしておき。
昼食はジンリッキーを楽しむ。
近年、ウィスキーブームにより原酒が足りなくなりウィスキーメーカーがこぞって熟成期間の要らないジンの製造に着手し一生懸命ブームを作ろうとマーケティングに必死だけれどまだまだだと思う。
どうしてレモンサワーが流行ってジンはまだまだなのか?
結構答えは簡単で普段常飲するウィスキーより高いから。ブランドチェンジやアイテムチェンジは同価格ほど起こりやすい。
キャンプ場も同様で価格に見合う価値は分かりやすければ分かりやすいほど刺さるし安くてうまいが今は当たり前の世の中だから
真新しいだけで景色景観無視のただ張るだけのキャンプ場は苦戦を強いられ今後は淘汰される。
そういう意味ではタイマグラキャンプ場の価格はどこよりも競争力があり最強の部類。
何せこの大自然の景観をテント持込みならば宿泊520円、日帰り260円で楽しめる。こうなると宮城福島など近場のキャンプ地はどこも霞んでしまう。
多少設備がヤレていたってお釣りがくると思えるのはありがたい。
経済発展だとか地域振興という観点から言うと、いつだって置いてけぼりだった東北だけれど、ことキャンプに関しては東北人は本当に恵まれている。
夕刻、傾いた日が心地よくサイトに光を入れてきた。
散歩をしたり見張りをしたり虫と戯れたりと誰よりも忙しかったキャンプ猫こむぎも小休止の穏やかな時間。
ゆっくりとキャンプの時間が過ぎてゆく。
早池峰山麓に日が隠れたらいつもと変わらぬランタン準備の時間、今年最後の蝉時雨が耳に届いていた。
このキャンプ中最も絶品だったのはオイルサーディンのアヒージョ。
このタイマグラキャンプを経て
我が家には随分と久しぶりにキャンプ道具が増えた。
それはナッツクラッカー
タイマグラのあの鈴生りの鬼胡桃は
ペグハンマーで一撃で割って楽しんだのだけど情緒に欠けていたから
次にもしこのクラッカーがあれば
タープ下で寛ぎながら胡桃割りを楽しみ大好きなカリラと共に楽しめる。
キャンプで出来ることが増えるそんな道具に今は目がなくて、せっかく買ったナッツクラッカーを手に取っては今年こそ行こうとタイマグラを思い出している。
それがキャンプ
2021年11月拙著の記事に加筆投稿
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