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メタバースと知財

12月15日にG7知財庁長官級会談が開かれ、その中でメタバース空間も含むデジタル領域での知財保護のための共同声明が採択されました。

この共同声明では、「①イノベーションやクリエイティビティを加速させるためには、知財エコシステムの既存のステークホルダーにとどまらず、知財の恩恵を受けることができる様々な者からの強力かつ積極的な関与が必要であること、②メタバースを含む新たなデジタルの領域における知財の問題等、最新の課題に対応できるよう知財制度を継続的に改善していくことが重要であることについて、G7知財庁間で認識を共有しました。」とあります。

メタバース空間について言えば、国境がないことが特徴です。そのため、メタバース上で行われる行為はどの国の法制度が適用になるのかなどまだまだ不明点が多くあると言えます。

例えば、メタバース上での商取引はデジタル上の仮想空間にあたることと、A国の人とB国の人の取引でトラブルがあった場合、それぞれの国で法制度が異なるとどちらの国の法律が適用になるのかといったことが問題になります。さらに、さそのメタバースの運営者がC国で、取引サービスがD国といったケースも普通に起きるわけです。

A国ではメタバース上のコンテンツの複製が規制されていても、B国で規制されていないと、B国の人はA国の人から入手したデジタルコンテンツを複製しても、B国の法制度上は問題ないとなります。A国のデジタルコンテンツ作成者の知財に対する権利が空中に浮いてしまうということです。また、C国のルール上デジタルコンテンツの複製に対して極めて厳しい処罰が適用となる場合に、ある日突然B国の複製した人がC国の機関から処罰されてしまうということもありえます。

このような課題解決として、各国の法整備はもちろん、国の間でも知財制度を擦り合わせていく必要があるということを受けたものと言えます。現状では、メタバースのサービスを提供する事業者数自体が少なく、(VRChatなら米国、Clusterなら日本など)それぞれのサービス提供者が定めたルールに従って行っていくことになります。

メタバースの特徴は、これまで物理的な「場所」に依存していたものが、「仮想空間」という電磁的に作られた場所に依存しないところで、これまでの限界を超えた様々な取り組みをできるところが特徴です。
そのため、規制の掛け方によっては、新しい技術が進むことを止めてしまう可能性もあります。(特定の国が極度な規制をかけた場合など)

メタバース空間の活用はまだまだ始まったばかりで、これが今後の社会の中でどのようなメリットを人類に与えていくかが、まだまだわかっていません。ただ、これまでの限界を超えた技術やサービスが生まれる可能性は高いと思います。

現在のメタバースはまだ一部の興味ある人が、自己実現のためにアバターやそれにつけるアセットといったデジタルコンテンツの売買やメタバース内での各種イベントにたいする投げ銭と言った活用のされ方が主流です。とは言え、売買があるために無断でアバターのデータを盗まれるなどの問題は出ています。今後、この世界でできることが増えていくに従って、犯罪の種類も複雑化していくと思われます。

仮想空間は夢の世界のようにも見えますが、プログラム上の世界です。物理的なものがない分、0と1を操作されることで、ある日突然データが失われたり改竄されたりするリスクも十分あります。SF映画のようなことが実際におきえる環境とも言えます。インターネットが一般化してから30年ですが、これまではフィジカルな空間の中のインターネットでした。しかし、メタバースは空間自体がインターネット上に構築されるため、人類は新たなフェーズに移行しつつあると言えますね。

国を超えた(ボーダレス)な世界だからこそ、フィジカルな国同士が協力していくことが重要と言えます。

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