イタリア・フランスおすすめ美術館(藝大お嬢様部調べ)
注)かつてTwitterで答えた質問ですが、長文かつ自分の保存用にこちらに載せます。質問は「イタリアとフランスで見るべき美術館はどこでしょうか?思いつく限り全て教えて欲しいです!」で、下記のように答えました。
イタリアは美術館に行くより教会と宮殿を巡った方が圧倒的に良いというのは前提ですが、
[ローマ]
ヴィラ・ファルネジーナ、美術館ではないのですが、ローマに来たならここは本当に凄いのでぜひ。イタリア美術の宝石箱です。
↓以降は美術館。
カピトリーノ美術館、カピトリーノ広場を含み美術館一帯そのものが至高。コレクションには有名なマルクス・アウレリウス騎馬像があり、彫刻好きなら絶対に行くべきです。建物を出るとフォロ・ロマーノが眼下に見下ろせるので、夕暮れに行くと感動的な光景に出会えます。
国立古典絵画美術館、バルベリーニ宮殿です。バロック絵画の殿堂ですが、何よりもピエトロ・ダ・コルトーナの天井画「神の摂理」は素晴らしく、これを観るためだけに行く価値があると思います。
ドーリア=パンフィーリ美術館 現役のお屋敷の一部がそのまま展示場で、近代より前のギャラリー感を楽しめます。ベラスケスの「法皇インノケンティウス10世肖像」はベラスケスの最高傑作のひとつですし、肖像画表現の極地でもあるのでぜひ。
MAXXI イタリア国立現代美術館。ザハ・ハディドの建築が奇抜ですし、重厚なバロック都市に疲れたらここに来るといいと思います。規模が大きいので回るのに疲れますが。
マリオ・プラーツの家、ヴィスコンティの映画「家族の肖像」のモデルとなった学者の旧邸。少し前のイタリアの文化人の生活が偲べるいい記念館です。
他にバロック芸術成分が足りないのならボルゲーゼ美術館、映画「ローマの休日」が好きなら最後のシーンの舞台になったコロンナ宮殿美術館をおすすめいたします。カフェ・グレコという歴史的喫茶店に足を運ぶのもお忘れなく。
[フィレンツェ]
サン・マルコ国立美術館、元々修道院でフラ・アンジェリコの作品があります。俗っぽいフィレンツェの塵芥から解放された聖性がまだかすかに漂っている気がします。
捨て子養育院美術館、印象的な作品は少ないのですが、ブルネレスキの設計した建築で、「比例」「調和」などルネサンスの美学の全てがそこに表れています。建築に興味がある人なら絶対行かなければならない場所だと思います(建築史の授業で絶対出てくる、史上最重要建築作品のひとつ)。
ドゥオーモ附属美術館 ドナテッロの「マグダラのマリア」、ミケランジェロの「バンディーニのピエタ 」の2点が突出しています。バチカンの有名なピエタより、こちらのピエタの方が個人的に好きです。
[ヴェネツィア ]
カ・レッツォーニコ、18世紀のヴェネツィア絵画が並んでいる美術館。退廃的で、眺めていて心地よい世界が楽しめます。不気味なほど空いてる時があり、リラックスするのにもいい場所です。イメージ通りのヴェネツィアがここにあります。
ペギー・グッゲンハイム美術館、アメリカの大富豪が寄贈した近代美術の美術館。小規模ながら、考えられないくらい質が高いコレクションですし、客層がファッショナブルな人たちばかりだったのはいい思い出。
プンタ・デラ・ドガーナ、安藤忠雄も関わっている現代アートの殿堂。フランソワ・ピノーのコレクションが観られます。有名作家のものならなんでもあります。
古典絵画が観たいのならアカデミア美術館もいいですが、街の教会巡りやドゥカーレ宮殿、サン・ロッコ大同信会に行った方が満足度は高いです。余裕があればトルチェッロ島まで足を伸ばしてみるのも一興です。偉大な美が佇んでいます。
[ミラノ]
ブレラ絵画館、正直イタリア屈指の高い質のコレクションなのにあまり知名度がないのが意味不明。個人的にラファエロの最高傑作だと思う「聖母の婚礼」があります。暗めの館内はゾクゾクします。
プラダ財団美術館、スタイリッシュという言葉はここのためにある感がしました。展示も施設も強烈というか日本では絶対味わえない美学がここにあります。カフェはほっこりしていて最高です。美術館併設カフェの極みかなと思いました。
トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム、デザインの街ミラノの真髄が分かりますが、なんの企画展かはちゃんと調べておく必要があります。とはいえちゃんとした施設で、ミラノらしい空間です。
[ナポリ]
カポディモンテ美術館、赤と黒の外観、ファルネーゼ家の大コレクションがずらり。ナポリの喧騒から離れた貴族的な空間で鑑賞できます。カラヴァッジョの傑作もあります。隣に広がる自然豊かな公園も素晴らしいです。
国立考古学博物館、イタリアで一番楽しい施設。「ポンペイ展」にも出品していましたが、最高のものはここから移りません。教科書で見たアレクサンドロス大王のモザイク画や、ポンペイのエロティックな壁画、古代彫刻の最高傑作のひとつ「ファルネーゼのヘラクレス」があり、思い出すだけで滾ってくる場所です。
サン・マルティーノ美術館、丘の上にあり、ナポリの絶景が見渡せます。ここからのヴェスビオ火山とナポリ湾の景色を見たら、死んでもいいと思います。
他の都市にも美術館はたくさんありますが、最良の物はやはり大都市の美術館にいきますし、地方では冒頭に書いたように教会と宮殿を巡るべきです。
例えばマントヴァなら美術館に行くより、ドゥカーレ宮殿やテ宮殿に行ってマンテーニャとジュリオ・ロマーノの芸術に直接触れる方が数億倍価値があります。パドヴァなら市立美術館よりもスクロヴェーニ礼拝堂に直行してください。 イタリアの美術館はだいたいが廃教会の祭壇画置き場みたいなものなので、あんまり好きになれません。
トリノでしたら市内の美術館より、郊外のサヴォイア家の離宮群を巡ってください。ピエモンテの自然は格別です。
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フランスはよく日本に作品持ってきてくれるので、そこまで足を伸ばす気はなかったりします。あまり詳しくはありませんが、
[パリ]
ケ・ブランリー美術館、フランスの植民地だった地域の作品が大量に並んでおり、超大国だった帝国フランスを感じられるほぼ唯一の施設。存在自体が物議を醸し続ける危うさを体験してみてください。
クリュニー中世美術館、タペストリーの優品はじめ、ヨーロッパ中世の美術品が一堂に会しており、日本人の知識からすっぽり抜け落ちている部分を完璧に補完してくれます。本当におすすめです。
パリ装飾芸術美術館、ファッション都市パリの本気が見られます。服が好きな人なら1日楽しめるのではないでしょうか。
ギュスターヴ・モロー美術館、モロー芸術の世界に浸かることができますし、個人の芸術家の記念館の理想像でもあると思います。
ジャックマール=アンドレ美術館、「ブルジョワジー」の言葉の意味を悟ることができると思います。イタリアルネサンス絵画も揃えているコレクションは小規模ながらかなりいいです。カフェも最高で、小説を書きたくなるような空間です。インスピレーションが湧いてきます。
カルティエ現代美術財団、おそらく日本びいきの学芸員がいるのか、日本の現代アーティストをやたらピックアップしてくれる美術館。日本から来たと言ったらなんか喜ばれたり、色々変わってますが、記憶に残る空間です。ダミアン・ハーストの「桜」もここの委託でしたね。
フォンダシオン・ルイヴィトン、フランク・ゲーリーの奇抜な建築に反して、わりと古典的できっちりとした展覧会をやるのが面白い美術館。最近できたフランソワ・ピノーのパリにおける現代美術館とライバル関係になるので、これからの運営も気になる美術館です。
[パリ以外]
ルーブル美術館ランス別館、ランス市にある美術館で、展示方法が革命的というか、おおっと唸らされます。SANAAの代表作でもあり、古典芸術の新たな接し方を提案してくれているような空間です。
ウンターリンデン美術館、アルザス地方コルマールにある美術館で、「イーゼンハイムの祭壇画」一点のために行く価値があると思います。街並みも素敵ですから後悔はありません。
ボルドー市立美術館、ドラクロワの傑作「ライオン狩り」「ミソロンギの廃墟に立つギリシャ」があります。フランスの新古典主義・ロマン主義あたりが好きな方なら行くべき美術館でしょう。
フランスはパリ以外はそこまで巡ったことがありませんから、分かりません。特に南仏はノータッチです。旅行のお役に立てれば幸いです!美しい時を愉しんでください。
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