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住住


かまいたちさんのネタじゃないですが、もし私がタイムスリップできるとしたら、はじめてポイントカードを作るのを断った瞬間でも、片思いしていた女の子がいた学生時代でもなく、「住住」をまだ観たことのない瞬間に戻ると思います(「架空OL日記」とも悩みますが…)。

それくらい「住住」は魅力的なドラマなのです。

「住住」は最初、バカリズムさん、オードリー若林さん、二階堂ふみさんの三人で始まりました。三人が同じマンションの同じ階に偶然住んでいて、交流を持つ、というストーリーです。

このドラマのすごいところは「何も起こらない」こと。観ても「何も残らない」ことです。こんなに多くのものが世間に爪痕を残そうとしている時代に、何も残らないことをやっている。この異常さ、コンテンツとしての離島感が伝わるでしょうか。

バカリズムさん脚本のドラマは(「架空OL日記」や「生田家の朝」など)基本的には何も起きません。それでも、なぜかおもしろい。そのドラマを観ているときだけは、いやなこと全部忘れて笑っていられます。私はバカリズムさん脚本のドラマを観ながら、「もうこれ、サザエさんじゃん」とか「ちびまる子ちゃんじゃん」とか思っています。あるある世界平和という、古典のやり口なわけです。

そして、前回、2020年シーズンは、バカリズムさん、若林さん、バナナマン日村さん、水川あさみさんが出演されました。これもまた、何も残るものがなく、語ることができないのですが、全部で6話しかありませんでした。Huluで毎週更新されるのを待っていた身としては、絶望です。6回しかないなんて…。今でも同じ温度で絶望できます。でも、ドラマの内容は何も覚えていません。

そして、今回再び2021シーズンとして、「住住」が復活します。しかも、これまでのオールメンバーで、です。これはきっと「住住」のおもしろさが世に認められたからでしょう。だって、多分予算がおりましたよね?そうじゃないとオールメンバーではできません。確実に予算がおりています。

さらに、今回は、前回3年間の「住住」空白時代があったにもかかわらず、1年間しかあいていません。間違いなく世間におもしろさがバレはじめています。まずいです、いま乗り遅れるともう「住住」観てないって言いにくくなります。流行りに乗ることをカッコ悪いと思ってるイタイやつ扱いされてしまいます。かまいたちの山内さんみたいに流行り終わるのを待って、「トトロ見たことないねん」と自慢するしかなくなってしまいます。

これまで「住住」のよさを説明してきましたが、分かっていただけたでしょうか。たぶん、なにも分かっていないと思います。だって、内容にほとんど触れてないし。というか、内容に触れたところで、私にはあれをおもしろく説明できる力量がありません。あの媒体でやっているからこそ、「住住」はおもしろいのです。

ちょっと頭が良さそうに類比的に示してみるなら、「住住」は純文学みたいなおもしろさです。ストーリー構成だとか、プロットのようなものがジェットコースターみたいでおもしろい。そんなことはまったくありません。でも、純文学がその筆致を楽しむものであるように、「住住」はその空気感を楽しむコンテンツです。日常を写し取る視点と、その空気感。それがすべてです。

あ、でもストーリー展開を楽しみにしてコンテンツを漁っている方の目にもとまってほしいので、一応2021シーズンはどうなっているか分からないことだけは書いておきます。もしかすると、伊坂幸太郎さんばりの伏線回収ドラマになっているかもしれません。

まあ、そんな私たちの期待をすべて越えていってしまうのが、バカリズムさんの脚本なので心配はいりません。あんなに日常の「違和感」をおもしろく切り取る人を私はほかに見たことがないので、今回もおもしろいことでしょう。

長々と書いてきましたが、「住住」も、この文章も、何も残らないことが分かっていただけたかと思います。誰かに印象を深く刻みつけるものって、どうしても反発を招きがちなんですよね。だって、表現ってどうしたって完璧じゃないので。だからこそ、この「住住」は貴重なんです。こんなに何も残らないもの、ほかにないんですから。

最後に、たくさんたくさん「住住」と書いてきましたが、毎回「じゅうじゅう」で変換していたことを白状いたします。読み方は「すむすむ」です。なんでか「すむすむ」じゃ一発変換できませんでした。いまだ、パソコン側からは「住住」が認知されていないようです。まだ、バレてないようです。いまのうちに、「住住」観始めちゃいましょうよ。

それでは、誰の目にもとまりそうにない、こんないたらない文章に最後までお付き合いいただきありがとうございました。こんな文章でも、「住住」のよさが少しでも伝わったなら幸いです。



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