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「戦場のヴァルキュリア4」レビュー BLiTZが超越したジャンルの壁

戦場のヴァルキュリア4をクリアして、居ても立っても居られなくなったのでレビューを書きます。

戦ヴァル1の頃から既に完成していたと言われる秘伝の戦闘システム、「BLiTZ」Battle of Live Tactical Zone systems)。

「戦略とアクション性を兼ね備えた」とか「アクションとシミュレーション、2つのゲーム性を同時に体験できる」とか、公式もゲーム誌のレビューもどこもかしこも「アクションとシミュレーションを足した感じだよ」くらいの言い方をしていますがはっきり言って生温い

BLiTZの面白さは「足した感じ」とかじゃあないんですよ、アクションゲームより高い緊張感と、シミュレーションより高い戦略性、この2つが奇跡的に同居する、その極値を成し遂げたのがBLiTZなんです、わかりますか?落ち着いて聞いてください、私は落ち着いていません。

BLiTZとは何か

ターン制のシミュレーションゲームのように見下ろし視点で動かすユニットを決める「コマンドモード」

と、

3Dアクションのようにユニットを自由に動かして遮蔽物を活かしながら戦場を駆け巡る「アクションモード」

これらを行き来するという、戦略とアクション性を兼ね備えたシステムなのだ。


BLiTZの何が面白いのか

「兼ね備えたシステムなのだ」って言ってしまえば単純なのだが、実質的に、シミュレーションとアクションを、交互に繰り返すだけじゃないか。それの何が融合なんだ、何が面白いんだ、と思うかもしれない。

面白いんだこれが。

むしろこう聞きたい。

「アクションモードの無いシミュレーションゲームの、何が面白いのか?」

「コマンドモードの無いアクションゲームの、何が面白いのか?」

そう思わせるほど、BLiTZは相反する2つのゲームが持つ根本的問題を、鮮やかに解決している。


BLiTZが無いシミュレーションゲームの何が問題なのか

アクションモードの無いシミュレーションゲームの、何が問題なのか?

シミュレーションゲームでは、一般的に、盤面の全体が見えており、考える時間も好きなだけ与えられるため、その場面で最適な行動を考える戦略性を楽しむことができる。

この考えている時間が楽しいのだが、それを実行するときの緊張感を味わえる時間は少ない。プレイヤーがリスクを負うタイミングは、移動先を選んで行動を選ぶという数回の選択に凝縮されている。

「ファイアーエムブレム覚醒」での例。考え抜いた末に、移動キャラ、移動先のマス、そして行動を1つずつ選択する。

そのため、「最適解が見つかるまで延々と考えてしまう」タイプのプレイヤー(※私です)はついつい長考に陥ってしまい、行動を選択するときにはおおよそのリスクがわかりきっている状態で臨むことが多くなる。


BLiTZが無いアクションゲームの何が問題なのか

コマンドモードの無いアクションゲームの、何が問題なのか?

アクションゲームでは、一般的に、未探索のマップの中で、遮蔽物等によって敵勢力の全体像も見えない中で、次々に襲いかかる脅威に対応する緊張感を楽しむことができる。

しかし、戦略的にうまく立ち回ろうとすると、リアルタイムで敵が移動して襲ってくる状態では(ゲーム自体をポーズしない限り)考える時間があまり無い。

最近のオープンワールドのゲームでは、マップに様々な爆発物があったり、遮蔽物があったりして、それを活かしながら攻略を楽しめる……ようになっていたりするのだが、初見のプレイヤーはなかなかそれを把握しきれない。

「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」での例。「化学エンジン」の性質を駆使して戦うこともできる……はずなのだが、こういった状況で冷静にそれを見極めるのは(初見ではとくに)難しい。

そのため、「初見でカッコよく敵を倒して効率よくクリアを目指したい」タイプのプレイヤー(※私です)にとっては、今の行動がどれだけリスキーだったのか?どれだけ効果的だったのか?最後までわからない状態でクリアしてしまうことがある。


アクションと戦略を両立させる難しさ

考える時間がほとんどで、リスクをかける行動が1回の選択に凝縮されるシミュレーション

一方、

動いている時間がほとんどで、リスクが毎フレームの動きに広く分散しているようなアクション

このように、リスクを考慮する時間というのはそれぞれのジャンルでおおまかに決まっており、考えすぎて緊張感がなくなる、あるいは、考える暇がなくて戦略が立てられない、という問題はシステムの根底部分に横たわったままであった。


BLiTZの「アクションモード」はアクションではない

では、BLiTZでは何が起きているのか。

「コマンドモード」では、じっくりとマップを見ながら作戦を組み立てる。長考しながら楽しむのはシミュレーションとまったく同じだ。

では「アクションモード」では常に緊張しながら移動して、戦略が台無しになる……なんて事になるのだろうか?実は、ここに大きな仕掛けがある。

戦ヴァルのアクションモードは、ぶっちゃけ「アクション」ではない。

アクションモードと言いながら、

●敵は同じ場所に留まり続けており、移動してこない。

●敵の迎撃範囲に入ったら、リアルタイムに迎撃される。

●銃を構えてエイムの体制に入ると、迎撃範囲であっても迎撃が止む。

●行動を終了してコマンドモードに戻れば、迎撃は止む。

という、「半分シミュレーション、半分アクション」になっているのだ。

自分が迎撃範囲に入らなければ、周りを見てゆっくり考えることができる。

迎撃されてしまっても、銃を構えてしまえば、ゆっくり考えてどの武器でどのように攻撃するか考えることができる。ヘッドショットも落ち着いてカーソルを合わせるだけだ。

マップで見えている範囲の敵は迎撃範囲もわかるので、安全だとわかっている範囲だけを移動させれば、リスク無しに敵に近づいて(ほとんどシミュレーションと同じように)高い確率で敵を倒していくことができるのだ。

つまり、戦ヴァルではシミュレーションゲームとアクションゲームを交互に楽しむんじゃなくて、アクションモードの中でシミュレーション的な思考とアクション的な思考がグラデーション的に変化する、という方が正しい。


緊張と戦略が融合する、奇跡の瞬間

プレイヤーは占拠対象である敵本拠点に近づくため、限られた移動ポイント(AP)でできるだけ前に進みたいのだが、未知の領域に踏み込んでいく事には迎撃に晒されるリスクがつきまとう。

この、「偵察されていない領域に踏み込む時」や、「迎撃範囲のわからない敵に近づく時」に、シミュレーション的に考えていた戦略が、手に汗握るアクションに託される瞬間がやってくるのだ。そしてそれを踏み越えるのは他でもない、プレイヤーの判断による。

「リスクを承知で、さらに移動するのか」
「どこまでダメージを負ったら行動を中断するのか」

細やかに、周りの状況を完全に頭に入れたうえで、考えて実行する。

角を曲がった先には、突撃兵が待ち構えているかもしれないし、戦車がいるかもしれないし、偵察兵が草むらに隠れているかもしれないし、誰もいないかもしれない。

勇気を持って突き進むのか、

近くの土嚢を把握しておいてカバーに移行するのか、

咄嗟に見つけた遮蔽物を利用して考える時間を確保するのか。

新たな敵が見つかった。

「どうする?」

この瞬間、

シミュレーション的に考えてきた戦略が無数に脳内を駆け巡り

さらに、

アクション的な移動やカバー、構えるといった入力のために緊張が高まる

そしてコンマ数秒のうちに、考えうる最適な行動をその場で選択する。

うまく構えたり隠れることができれば、またゆっくり考えることができる。

この瞬間の連続こそ、シミュレーションの「1手」では表現できなかった柔軟な行動、そしてアクションの「リアルタイム」では到達しえなかった深い状況理解が同時に達成されるという、奇跡のように面白い状態になる。

私はこのために戦ヴァルをやっているんだ。


「どこからどこまでアクションするのか」をプレイヤーが選べるのがBLiTZの真髄

ゲームの盤面に情報が1~10まであったとして、

シミュレーションでは、1~9まで考えたうえで実行するのに対し、

アクションでは動きながら1ずつ知りながら戦うのに対し、

戦ヴァルでは、どこまでをシミュレーション的にわかっている範囲で安全に移動させて、どこからをアクション的にリスクがある状況に投入するのか?を、プレイヤーが自由に配分して表現することができる。

安全を期して、1から10まで見えてる範囲のみ移動しても良いし、または、どうしてもこのターンのうちに達成したい目標のために、決死を覚悟で1から10までリスクだらけの領域に突入しても良い。

その塩梅を柔軟に表現できるというのが、BLiTZでしか味わえない戦略と緊張の同居なのだ。

1から10までリスクに賭けた結果がこちら


せっかくだから戦略の中身を少しだけ

BLiTZが面白いということがこれで伝わっていると嬉しいのだが、実際このゲームにどんな兵科やキャラがいてどういう関係かわからないと、イマイチ掴みきれない部分もあるだろう。

BLiTZは前述したコマンドとアクションで1キャラを動かすのに「CP」を1消費して、CPが尽きたら相手のターンとなる。

目標を達成するまでのターン数が少ないほど戦闘評価がAやSといった高評価になっていくので、できるだけ少ないCPで敵を排除し、目標に近づきたいわけだ。

そこでプレイヤーが活用するのが以下の兵科たち。

偵察兵:
最も移動距離が長い兵科。偵察兵と言いながら、正直偵察の段階は他の強い兵科にまかせて、クリアリングされた地帯を一気に駆け抜けて拠点制圧するのが強い。銃は射程が長いが火力はそこそこ、近づいて全段ヘッドショットすればたいていの敵は倒せるものの、外してしまうリスクもある兵科だ。


突撃兵:
最も近接戦闘が強い兵科。棒立ちの敵は射程圏内なら確実に倒せるし、突撃猟兵になればしゃがんでいる敵も火炎放射器でそのまま倒せたりする。移動距離は偵察兵より劣るので、何度も行動させないと前に進めないのが難点。


対戦車兵:
戦車に対抗できる武器を持つ唯一の歩兵。戦車は後ろに必ず「ラジエーター」という青く光る弱点があるので、対戦車兵で後ろに回り込めれば一撃で戦車を葬ることができる。戦車を倒すには前からだと3~5発は必要なので、対戦車兵をうまく移動させることが進軍の鍵を握ることが多い。防御も頑丈で迎撃には強いので、意外と激しい銃撃地帯を耐えて回り込むことは可能。


支援兵:
瀕死状態の味方を蘇生させたり、後述する狙撃兵や擲弾兵や戦車の弾薬を補充できる唯一の兵科。移動距離も偵察兵に次いで長いので、進軍の一番後ろで追いかけながら(味方にタッチするだけで弾薬補充ができるので)補充していく使い方がスマートだ。


狙撃兵:
移動も体力も超弱いけど、射線さえ通ればマップの端から端まで一撃で敵を倒せるロマンあふれる兵科。戦ヴァル4では遠くの擲弾兵(後述)を射程圏外から排除するのにも一役買われる。高台に登って使うと真価を発揮する。


擲弾兵:
戦ヴァル4で初登場した、遮蔽物を超えて爆撃できる「擲弾砲」を扱う兵科。移動と武器を構えるまでが超遅いので、迎撃範囲に入るとすぐに死んでしまうが、敵の位置さえわかっていたら遠くから敵を一網打尽にできるので、序盤は特に縦横無尽の活躍を魅せる。しかし、調子こいて使いすぎると簡単に死ぬ。


戦車:
歩兵から迎撃を受けてもぴくりともしない頼もしい戦車。一番最初に行動させて迎撃を受けながらマップを見渡して確認する偵察にも役に立つ。さらに、土嚢の上を走ると土嚢ごと破壊できるため、しゃがみ状態の敵を棒立ち状態にさせることができる。これを利用して、安全に敵兵の防御を崩していくのがSランク取得への近道となる。ただし、戦ヴァル4では対戦車機関砲なるものが配備され、場所によっては迂闊に移動できなくなった。


以上がおおまかな兵科の紹介となる。

筆者はいつも、汎用性のある偵察兵と突撃兵を2人ずつ、あとの狙撃兵、擲弾兵、対戦車兵、支援兵は1人ずつ、という感じでいつもバランスよく出撃させるが、好きな兵科に偏らせて使う人もいるので自分の取りたい戦略に応じて考えてみるのが楽しいだろう。

このゲームは、棒立ち状態の敵はすぐ倒せるのだが、土嚢でしゃがみ状態だったり、草むらで匍匐状態だったりすると防御力が格段に上がっているので、この状態をいかにあぶり出すかがSランククリアの鍵となる。

手っ取り早いのは戦車で轢くことだが、戦車で行ける範囲も限られているので、手榴弾や擲弾など爆風を伴う武器を使ってふっ飛ばし、先にしゃがみを解除しておく工夫が必要だ。

偵察兵がLV10で取得するアルバート型の銃であれば、遠くまで手榴弾を射出することができるので、これが結構役に立つ。

↑の状況は、ミネルバのアビリティが発動して対人攻撃力が上がったため、運良くしゃがみ状態の敵を一撃で倒せた。普通は、この状態からだと手榴弾でも一撃では倒せずに、2ターンかかるところだった。

あるいは、突撃兵の火炎放射器で無理やり倒すか、擲弾兵の対人攻撃特化型を使って(命中率は悪いが)ワンチャン倒せるのに賭けるか、などなど工夫の仕方はいろいろある。


戦場のヴァルキュリア4を是非やってくれ!※ただし

一応レビューということだったので総括。

戦ヴァル4は面白い、面白いが、(昨今のAAAタイトルと比べてしまうとどうしても)全体的に出来が良いとは言えない。

良いところは、

・とにかくBLiTZが面白い。めちゃくちゃ面白い。

・戦ヴァル4の新要素である擲弾兵や、リーダー兵の直接指揮といった能力も戦略的に非常に面白い。最高。

・キャラが良い(RAITAさんのキャラデザが好き)

・ストーリーも、ラノベっぽいキャラとは裏腹にシリアスになってきて良い

良くないところは、

・テンポが悪い会話(なぜモーション終わりまでスキップが効かないのか、研究開発で同じセリフを何度も聞かされるのか)

・統一感が無くわかりにくいUI(初代から何も変わってないので経験者にとってはある意味わかりやすい)

・パッと見でわかりにくい部分が多い
 ・マップアイコンの凡例が無くてわからない
 ・マップの距離の単位がわからない
 ・戦車の大きさが不明なので通れるのかどうかわからない
 ・オーダーとかポテンシャルの効果がよくわかんない

・楽曲も使いまわしが多くて合わない場面も

・ビジュアルは良いんだけど1から進化はあまり感じられず……

全体的に古い作りだなーーーという印象が強く、これはきっと、予算の問題ですかね……?セガさん、戦ヴァルがもっと売れたら、キレイでわかりやすくてサクサク動く戦ヴァル5を作ってくれますかね???

ただ、色んな古臭い部分があってもそれを跳ね除けるほど「これが欲しかったゲームだ!」って思える作品なので、もっと多くの人に勧めやすいゲームになってくれたら嬉しいです!!

戦場のヴァルキュリア4は、PS4版/Switch版ともに好評発売中!
※私はSEGAの回し者ではありません。

シリーズ未経験な方は、1がPS4でリマスターされているので、そちらからやるのもおすすめです。2,3はPSPなので、すっ飛ばして4をやっても大丈夫です。

よろしくお願いします!!


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