パブロ・カザルスの肖像

 1971年10月24日、国際連合本部の総会議場に《鳥の歌》が響いた。この日、このカタルーニャ民謡をチェロで演奏したのが当時94歳のパウ・カザルス(パブロ・カサルス)だ。カザルスの作曲したオーケストラと合唱のための《国連賛歌》、スターンとシュナイダーによるバッハ《2つのヴァイオリンのための協奏曲》、ホルショフスキー、ゼルキン、イストミンによる同《3台のクラヴィーアのための協奏曲》が演奏されたあと、カザルスは短いスピーチをしてこの曲を弾き始めた。「私の故郷カタルーニャでは、鳥たちはピース、ピース、ピース(平和)と鳴きながら飛んでいるのです」。彼がその後半生で最も世界の注目を集めた瞬間だった。

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