見出し画像

天皇の行方 第六章及び第七章

著:GeArmy888



六 天皇は神だったのか?


よく「天皇は戦前は神であり、戦後人間宣言をして人間になった。」と
言われる。しかし、よく調べると明治・大正生まれにはこのようなことを
言う人は少なく、ある一定期間の人達が主に主張していることがわかった。
それは「少国民世代」の人たちである。「少国民」とあは千九百四十一年
に小学校を「国民学校」に改称したのと同時に学童を改称した名称である。
ヒトラーユーゲントの「Jungvolk」の訳語である。「少国民世代」は
「大東亜戦争中に小学生だった世代」である。世代論に当てはまらない人がいるというのは前提である。少国民世代は戦時中は愛国心や
軍事的教育を受けたものが多いのだが、戦後は世界平和や平和的教育
を受け、国家や天皇について懐疑的になったものが多いのである。
当時の国民学校教科書(国定教科書)に、「我々が神と仰ぎ奉る天皇陛下」という記述があったのは千九百三十九年から終戦までのおよそ六年の間
のみである、古事記や日本書紀では神武天皇以降を「人代」として、
神ではないことを示している。天皇は神の子孫ではあるが、神ではないのである。また、当時民間に広がっていた日本神話の解釈としては
「日本には八百万の神々がいて、日本国民全員がなにかの神の
子孫である。」とされていた。この解釈では天皇が唯一神になることなど
ありえないのである。ところが第一次世界大戦によって天皇の神格化が
一気に進むこととなる。欧州ではロシア、ドイツ、
オーストリア=ハンガリー二重帝国などの国々で次々と君主制が消滅。日本に危機感をもたらした。また、大戦最中に起きた革命により、
世界初の社会主義国家が日本のとなりに建国されたことも一つの大きな
要因である。これにより、共産主義が国内に浸透したことから
共産主義に対抗しうる強力な日本イデオロギーが必要とされた。
また、第一次世界大戦では全ての物資や政治経済を全面的に総動員する必要がある時代になったことを示した。
そして、この体制において、国民をまとめるためには強力な思想が必要となった。それでも千九百三十九年以前の政府公式見解は天皇を現人神とは
したものの「この現御神、或いは現人神と申し奉るのは所謂絶対心とか
全知全能の神とかいうが如き意味の神と異なり。」
としていた。しかし、千九百三十七年に日中戦争が始まると、
「国民精神総動員法」が、翌千九百三十八年には「国家総動員法」が
成立し、「天皇は神」という記述がされたのである。戦争はあらゆるものを
動員するだけのことであり、歴史的伝統的に強固なものがあれば、それが
動員されるだけのことである。米国児童は現在も国旗に忠誠を誓う。
それと天皇に最敬礼をするのは何も変わらない。米国国旗が軍事的象徴ではないように、日本も戦争画なければ天皇は軍事的象徴ではなかった。
天皇を「神」と思い込んだのは少国民世代だけである。

七 天皇は「カミ」である


先程の「天皇はカミではない」という主張はその神という言葉が絶対神、
いわゆるGODであるということが前提である。一方天皇を「アキツミカミ」
とする観念は古代からあり、これはGODという意味ではない。
今でも「漫画の神様」や「野球の神様」、「経営の神様」というが、だれも
この人たちをGODだとは思っていない。とてつもなく貴重な人を「神様」
と呼ぶのは日本人が知らず知らずのうちにやっている伝統的習慣である。
天皇の観念もこれと同じようなものである。大和言葉の「カミ」、
シナの漢語の「神」、そして欧州の「GOD」これらはすべて異なる観念
である。しかし、これらをすべて「神」と表記しているから混乱が生まれる
のである。この大和言葉の「カミ」という言葉は悪いものや奇怪なものでも
ずば抜けたものがあれば何でも「カミ」になる。森羅万象、人間までも
「カミ」になるのである。日本人の「カミ」の定義は広く柔軟である。
フランシスコ・ザビエル以降のポルトガル宣教師はDEUSを「ゼウス」
と訳した。GODと「カミ」は違うことを理解していたのである。ところが
シナではアメリカの宣教師が、GODを神と訳した。シナの神は
「自然界の不思議な力を持つものや心など」という意味であり、GODの
意味はない。これは異訳であった。しかし、日本開国後、アメリカの宣教師が日本でもGODを神と訳した。そして、日本人は古来より「カミ」の字に
神をあててきた。ここから「カミ」とGODの混同が始まったのである。
GHQは戦後天皇に人間宣言をさせたが、それは「漫画の神様」や
「野球の神様」「経営の神様」に人間宣言をさせるのと同じである。
昔も今も天皇は「アキツミカミ」であるが、絶対神たるGODではない。

次回、第八章「名を正す」第九章「大日本帝國憲法における主権」
御清覧いただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?