初めて髪を派手な色に染めたときの話①
5月某日。
緊急事態宣言が発令され、いつもよりもどこか不安を抱えた日常が、それでもいつもどおり流れていた時のこと。
私はというと、緊急事態宣言が発令される1年近く前から、誰にも命令されていないのに勝手に自宅で活動を自粛していた人間だったため、特にこれといった不自由さを感じてはいなかった。トイレットペーパーの品薄を除いて。
もともとインドア派な私のもっぱらの暇つぶしはTwitter。脳内にたまに浮かんでくる変な気づき、思想、その他諸々を140文字におさめて放り出すゴミ箱のような使い方を今でもしている。鍋のときに浮かんでくる灰汁を取る感覚に近いかもしれない。
しかし面白いもので、そんなTwitterの使い方をしている私と相互フォローになり、ときには会話をしてくれる人が少しばかりできた。物好きもいたものだ。嬉しいけど。
今まであまり交わることのなかった地域、年代、考え方の人たちとTwitterを介して接するうちに、少しばかり思ったことがあった。
そういえば髪を派手な色に染めたことがない。
田舎生まれ、工業高校育ち、眼鏡のヤツはだいたい友達というDragon Ashとは真逆の青春時代を送ってきた純情ボーイの私は、髪色が派手なやつは『全員悪人』だと思っていたこともあった。北野武もびっくりな偏見だと思う。
でも実際のところ、都会の方では学生でも髪染めが許されてたり、IT系のベンチャー企業などでは服飾規定が特になかったりと、世間の時流が少しばかり変わってきたことも感じていた。
私自身全く髪を染めたことがないわけではなかったが、いわゆるブリーチを使って、髪全体を派手な色にした経験はなかった。素人童貞みたいなもんだ。
そんなことを思いつつ、アニメやゲームの登場人物のような、きらびやかな髪色にしている人たちを見ているうちに、羨ましい、自分も一度やってみたい、という気持ちが次第に大きくなっていった。
それと同時に、すでに四半世紀以上生きている自分を見て、やはりこういう髪色は20代前半までじゃないとかなりイタイやつに見えてしまうのではないかという恐怖もあった。
しかし、今後本格的におっさんになったときに派手髪にするのはきつくねぇかとも思った。ある意味ラストチャンスに近いような、勝手にそんな感覚になった。
それに、もし結果が最悪になった場合でも、現在の時勢は『引きこもり推奨』の状態。外に出なければ誰にも笑われることはない。同居の家族は除いて。
あとはもう、とりあえず死ぬ前にいっちょやってみっか、という心の中の孫悟空に従って、行きつけの美容室にカット+カラーで予約の電話を入れた。
もとい、弟が髪を切る予約をしてるとこについでに入れてもらった。
その後、スマホで色々な髪色を見たり、知り合いの人に話を聞いたりしながら、どんな色にするかを考えていた。
最終的には「自分がやりたい色やったらええんじゃい」という結論に至った。『異論は認めない』みたいなやつだ。
そして、心のどこかで少しばかりの期待と、若干の緊張を携えて美容室へと向かった。
なんか長くなっちゃったから染めるとこは次で。
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