内的成長とは、「死」である 「これからの時代の組織をいかにつくるか」vol.3イベントレポ
「これからの時代の組織とは?~組織システムと個人の相互発達~」をテーマに、「これからの時代の組織」を探究している全4回の本シリーズ。
第2回は、自然経営研究会発起人の武井浩三さんをお呼びし、これからの時代のシステムについてお話をしました。
第3回となる今回のゲストは、ヒューマンポテンシャルラボCEOの山下悠一さん。「個人の内面の成長とこれからの時代の組織」というテーマで個人の内面の成長がどう組織と関係しているのか、それはどのように実現できるのかについてお話しいただきました。
ゲストパネラー:山下悠一(ヒューマンポテンシャルラボCEO)
パネラー:西坂 勇人(GCストーリー株式会社 代表取締役)
本シリーズ全4回モデレーター:岩波 直樹(株式会社eumo 取締役)
【第一部】内的成長とは、「死」である
山下:ティール組織の著者であるフレデリック・ラルー氏は、彼の動画で一番最初に「組織変容の旅は個人的な旅である」と言っています。
組織のあり方を突き詰めていけば、リーダーの限界や自分の影に突き当たると言うのです。今回はそういったお話をしますね。
ティール組織を目指して組織開発に取り組まれている方々は、まず組織のシステムを変えようとすると思うのですが、実は組織変容の壁は9割が個人個人の内面の壁と言われています。組織の変容ということよりも個人の変容から、と僕がフォーカスを当てているのはそのためです。
アクセンチュア時代の僕は、成功を求め、女の子を追いかけ、それで満たされる部分もありましたが、心の中ではポッカリと何か足りないと思っていました。それから、内的成長に興味を持ち始め、それについて考えてみると、外的成長と内的成長は、全く違うメカニズムで起こることに気づきました。
内的成長と外的成長の統合は、図のように階段状になると思っています。「会社を持続させる」「自分のスキルを高める」というのは横軸の「継続」の話なのですが、今、必要とされている内的な変化は、OSを変えるような縦の軸への変化です。それはTransformation、つまり「死」です。今まで、これが自分と信じてきたアイデンティティが死に、新しい自分ー今まで否定していた自分ーを受け入れていくことです。
内的成長のゴールは明確です。
「世は無常なことに気づく」
「全ては自分がコントロールできないことに気づく」
「あらゆることへのバイアスがなくなる」
など、ある程度勉強をしている人であれば、知っていることばかりです。
ただ、これらは全ては「知って(DO)いても、あれない(BE)ものです。一生、あれない(BE)くらいに難しいものです。あり方のところは、体験して、体得していかないといけません。
この内面のモデルは色々なプログラムで使っているものです。
例えば、僕は、小さい頃、「いい子ちゃん」でした。お母さんに褒められると、何かを達成しないといけないという強いセルフができました。だから、責任感のない人をみると腹が立ちました。
このような恐れや不安、怒りといった感情は、「僕はこういう人間で、こういう人間であってはならない」という自己と他者の境い目からでてくるもの、つまりセーフティーネットなのです。この感情を越えようとすると、今までの体験にない「あなた」になってしまうので「とても危険ですよ」とアラートを出してくれているのですね。
この感情をエッジと読んでいますが、このエッジを超えていくことでブレークスルーができます。ここを超えない限りは、何度も同じような人との対立関係が続いていきます。
僕らは、こういったことを外在化しやすくするためにモンスターと呼んでいます。自分の中に飼っているモンスターを受け入れて、統合し、新しい自分に生まれ変わっていくことが新しい変容のためには必要になってきます。
これはヒーローズ・ジャーニーと呼ばれているモデルです。内的成長は、必ずこのモデルに順次すると言われています。例えば、オズの魔法使い、マトリックス、スター・ウォーズなどの映画はこのモデルからきています。これからの時代は、こういった映画を見て楽しむのではなく、自分たちがヒーローやヒロインになって自分たちが体験していくのです。
【第ニ部】それぞれのヒーローズ・ジャーニー
岩波:山下さんの中で「死」と「再生」を繰り返したような経験があれば教えてください。
山下:アクセンチュア時代は、人間関係よりも正しさを重視していまいました。ロジックだけでつながっているような関係にさみしさを感じていましたね。自己肯定感もなかったんだと思います。「この不足感はなんだろう」という違和感からぼくのヒーローズ・ジャーニーが始まりました。
アクセンチュアをやめた後は、サーフィンやヨガ、農業のお手伝いなどをして自給自足的に暮らしていました。半年はそのような生活をして、半年はフリーランスでコンサルをやる、そんな暮らしを続けていくつもりでした。一方で、本当はチャレンジをしたいのですが、アクセルを踏まず、ブレーキを踏み続けているようにも感じていました。すると、少しずつ仕事がなくなっていき、ついに貯金が底をつき、胃が痛くなってきました。恐れから、奥さんとも当たるようになっていきました。
そんな時、アメリカのシリコンバレーで、自分が扱っている”transformative technology” という言葉が、名前についているカンファレンスがあると聞きました。金銭的な問題で行くか迷っていたのですが、妻が「それは絶対行った方がいいと思う」と後押しをしてくれたので、行くことにしました。そこから、人生が変わり始めました。
スピリチュアルな話になりますが、様々なことが起き始めました。まず、飛行機を降りたら、入口のゲートの番号が、自分のいつも色々なことが起きる時の特別な番号だったので「呼ばれたな」と思いました。帰る時には、フォーチュンクッキーというクッキーの中におみくじが入っているお菓子を開けたら、「Your dream will come true」と書いてありました。それから、日本に帰って、アカツキさんに出資のお願いをしに行った所、30分程で出資をしてもらう話をいただきました。
岩波:まさにヒーローズジャーニーですね。「今のままでいいのか」と思うと、人生の然るべきタイミングで何かが起こるのですよね。ヒーローズ・ジャーニーで言うところの「calling」です。天から電話がかかってきて、「このままでいいのか」と言われているのですね。そこから、「ここから出よう」という意志が働きます。ただ、自分一人だけではなかなか動けないからメンターが必要です。もしかしたら、山下さんの場合は奥さんがメンターの役割を果たしていたのかもしれませんね。西さんは、そのような経験はありますか?
西坂:一番大きかったのはリーマンショックでした。うちの業績が悪化して、貯金残高が残り6ヶ月分になりました。その時、社員が20~30人いて、内定者が7人いたのですが、監査役や税理士から内定者を切るように言われました。その時に、大きな葛藤がありました。
カッコつけていたんでしょうか。経営者としてのプライドが反応していたんでしょうかね。 社員みんな集めて、会社の状況を説明しました。内定者を切らないこと、2-3ヶ月後には給料を減らすかもしれないこと、半年後には会社が潰れてしまうかもしれないこと。そういったことを社員全員に話して「ごめんなさい」と伝えました。その後、会社はV字回復を達成できました。
山下:まず「自分カッコつけてしまうんだよね」と人に言えることが大切ですね。
岩波:そういうことを言えない環境も、結局自分が作りあげてしまうんですよね。
西坂:なおちゃんは、どうだったの?
岩波: 僕は、転勤族で引っ越しを2-3年ごとにしていたので、常識が変わることを強制的に体験させられていました。中学校なんて3つ行っています。 引っ越しとは、子どもにとって積み上げてきたものを全て0にするようなものです。また、既に関係性ができている所に一人で入っていく行為なんです。
また、ここではあまり詳しく話せませんが、若い頃の男女関係や恋愛によっても大きく変わりましたね(笑)。人に興味があるので深く入っていってしまうんです。それで、いろいろ多様な経験をして、人間の内面的な部分は強制的に学ばされましたね。
個人の内面の成長が組織の進化と切っても切り離せないこと、それが起こる構造をロジカルに語ってもらいつつ、登壇者それぞれのヒーローズ・ジャーニーが聞け、今回も非常に濃い時間となりました。人生という旅の中で「自分のOSが書き換わる」体験をどれだけ味わうことができるかが問われていると感じました。
【ご案内】6/29(月)開催!vol.4「組織を越境すること」
さて、次回6月29日のテーマは「組織を越境すること」です。今回のイベントで「個人の内的な成長」は今までの自分を捨て、否定することだと話がありましたが、そのきっかけとして「組織を越境すること」が果たす役割は大きいと考えています。
GCストーリーとの間で組織の越境を実際に体験されている、株式会社 パルサー代表取締役の阿部章さん、 株式会社ダイブ 人事部 部長 の佐々木義郎 さんに登壇していただき、岩波・西坂とともに越境体験の意義やそこにある葛藤などを参加者のみなさんとともに深めていく予定です。
阿部章さん 佐々木義郎さん
完全オンラインでの開催で、現在参加希望者を募集しています。
以下ページからチケット購入できますので、ぜひご参加ください。
▼第2回のイベントレポをご覧になりたい方はこちらから