クラブ選手権静岡一次予選決勝戦観戦記
3月20日、西ケ谷球場で開催されたクラブ選手権静岡一次予選を観戦しました。
大会2日目となるこの日は準決勝2試合に決勝の計3試合。岡崎で開催されるクラブ選手権二次予選は愛知、岐阜三重、静岡から1チームずつ出場なので優勝しないと次へ進めないということ、決勝に進出した浜松ケイ・スポーツBCと山岸ロジスターズはどちらも準決勝をコールドで突破と共に消耗を避けて決勝に臨む形となったこと、こんな条件が揃っていたら好ゲームを期待するなと言う方が無理というものですが、この試合はそんな予想を遥かに上回る好ゲームになりました。
こんなにも良い試合だったのだから静岡新聞はもちろん、名だたる全国紙各社、もしかしたらその情報は海を越えてウォールストリート・ジャーナル、USAトゥデイ、ニューヨーク・タイムズでも大々的に取り上げているかもしれない…と思いきや毎日新聞がひっそりと記事にしているだけだったのでnoteに記そうと思います。
両チームスタメンは以下の通り。
浜松 8水谷 6平谷 2山本聖 5山口 D山下 9寺澤 3永井 4大和 7石原 P松本大
山岸 7伊奈 6城田 4鈴木勝 5高橋駿 D林 9成澤 3高橋慎 2北野 8芝山 P市川良
もうひと押しがなかなかできない試合前半
前半は落ち着かない展開でした。山岸ロジスターズが2回裏と3回裏に満塁のチャンスを作るもあと1本が出ず無得点。4回裏にも無死一三塁のチャンスを作った山岸ロジスターズは9番芝山選手のサードゴロの間に1点を先制しますが後続が凡退し1点止まり。一方で先制された直後の浜松ケイ・スポーツBCは5回表に無死一三塁のチャンスを作るも無得点。個人的にあまり好きな表現ではないのですが俗に言う「譲り合い」と呼ばれるようなそれでした。
先制された直後の攻撃でチャンスを作りながらも同点に追いつけなかった浜松ケイ・スポーツBC、ちょっと嫌な感じがするなあと思っていたのですが、ここまでランナーを出しまくっていた松本大投手が5回裏に別人のようなピッチングを見せます。元々力のあるボールを投げてはいたものの不用意に浮いたり無駄球が多かった4回までとは打って変わってこのイニングは低めにストレートがバシバシ決まります。先頭打者の出塁は許すも完璧なピッチングを見せてどこか試合が急に引き締まったように感じました。
重い1点、そして迎えた9回表
5回裏の松本大投手のピッチングとその後のグラウンド整備でなにか空気が変わったのか後半は締まった投手戦となりました。こうなってくると4回裏の1点が重たく感じてきます。どうにか追いつきたい浜松ケイ・スポーツBCでしたがキレのあるボールをキャッチャーの構えたところにしっかり決め続ける山岸ロジスターズ先発・市川良投手の前になかなかチャンスを作れません。一方、松本大投手の後を継いだ原木投手もたびたび出塁は許しますが凡打の山を築きます。
9回表、1点ビハインドのまま迎えた浜松ケイ・スポーツBCは先頭の2番平谷選手が四球を選び出塁します。続く3番山本聖選手は初球にバントをしっかり決めて同点のランナーを二塁へと進めたのですが、浜松ケイ・スポーツBCはこれがこの試合初めてのバントによるチャンスメイク。ここまで3度先頭打者が出塁していたもののバントの構えすら見せたことはありませんでした。どの選手も力のあるスイングをしている印象があってバントしないのもありなのかな、と思っていたのでここで初球にバントをきっちり決めたのはとても驚きました。
最後の最後に訪れた同点のチャンス。バッターは4番山口選手。しかしピンチを迎えても市川良投手は落ち着いていました。ファール2球を打たせて追い込むと外いっぱいに変化球を決めて見逃し三振を奪います。
上のツイートにも書いていますが市川良投手はこの右打者外への変化球がとにかくよく決まり、何度も見逃しのストライクを奪っていました。浜松ケイ・スポーツBCを再三再四苦しめたこの決め球で26個目のアウトを取った山岸ロジスターズ。
土壇場に追い込まれた浜松ケイ・スポーツBC、打席には5番山下選手。2-0から外に構えた捕手の構えより少し中に入ってきたボールを逃しませんでした。しっかり合わせて打ち返した打球はセンター前へ。外野は前進していましたが平谷選手はホームへ突っ込みます。センター芝山選手のバックホームも良いところに返ってきたのですがわずかに及ばず、浜松ケイ・スポーツBCは同点に追いつきました。
一気に試合をひっくり返したい浜松ケイ・スポーツBC、6番寺澤選手の当たりはセンターの前にポトリと落ちるヒット。三塁まで一気に進んだ代走の高林選手は山岸ロジスターズの中継が乱れているのを見てホームを伺いますが少し判断を迷ってしまっている間に三本間に挟まれタッチアウトで同点止まり。山岸ロジスターズも9回裏に得点することができず試合は延長に突入します。
二度目の犠牲バント
延長は10回から無死一二塁継続打順のタイブレーク制でしたが試合序盤のことを思うとこのルールで簡単に決着が付くとはとても思えず、おそらくこの球場にいた人たちの大半も同じことを考えていたのではないでしょうか。その予想通り延長10回、11回ともに両チーム無得点。
延長12回表。浜松ケイ・スポーツBCのトップバッターは4番山口選手。10回表、11回表はスイングに徹していた浜松ケイ・スポーツBCでしたが、ここは同点に追い付いた9回表同様、送りバントでランナーを進めることを選択します。しかし続く5番高林選手は浅いレフトフライでツーアウト。ここで6番寺澤選手。
準決勝からここまでトータルでホームラン含む4安打と当たっている寺澤選手、得点を許した9回表と同様にバントで作られたシチュエーションというのがなんとなく不気味だし何よりも一塁が空いている。ここは勝負を避けるかなと思っていたのですが山岸ロジスターズバッテリーは迷うことなく勝負を選択しました。
勢いのあるバッターを抑えて膠着したこの空気をぶっ壊したいのかなあとか色々考えていたら球場に快音が響きました。寺澤選手が振り抜いた打球はライトの上を越えて最深部へ。2人のランナーが次々と生還して浜松ケイ・スポーツBCはこの試合初めてのリードを奪いました。
延長12回裏。浜松ケイ・スポーツBCは6回裏からずっと投げ続けている原木投手がこの回もマウンドへ。2点ビハインドの山岸ロジスターズですが言わずもがなここで引くわけにはいきません。一死後、4番高橋駿選手が四球を選び逆転サヨナラのランナーとして出塁すると5番亀山選手のキャッチャーゴロの間に1点を返しなおも二死二三塁。バッターは代打砂田選手。2-1からの4球目を弾き返した打球はピッチャー返し。原木投手は打球を真下に弾き落とすと素早く拾って一塁へ送りゲームセット。浜松ケイ・スポーツBCが静岡一次予選優勝を決めました。
落ち着かない試合序盤、土壇場で追いついた9回、この試合の中で1番膠着した状態となったタイブレーク3イニング(タイブレークとは)(聞いてはいけない)とどこを切り取っても目の離せない展開は見ていてずっとドキドキしっぱなしでした。文句なしで今年のベストゲームノミネートです。
あとがき
かくして浜松ケイ・スポーツBCの優勝で幕を閉じた静岡一次予選でしたがこの大会は当初無観客開催の予定でした。
ところがどんな風の吹き回しか、一般の観戦もOKに再変更となり足を運ぶ流れとなりました。帰る時に事情を聞いてみようと思ったのですが役員の方がもういなかったので理由はわからず仕舞い。何にせよ有り難い対応であることには変わりありません。大会関係者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
今年最初の公式戦観戦でいきなりこんな好ゲームに巡り会えるなんて朝3時起きで西ケ谷まで来た甲斐があるってもんです。非常に満足した気持ちで帰りの静鉄バスに乗り、同日に開催された埼玉一次予選の結果をチェックしたらこれまたどこもかしこも熱い試合ばかり。今年もたくさんの好ゲームに巡り会えそうだなと想像し1人ニヤニヤしながら静岡駅を後にしたのでした。
2021年3月20日 クラブ選手権静岡一次予選決勝戦
浜松ケイ・スポーツBC3-2山岸ロジスターズ(延長12回タイブレーク)
浜松 000 000 001 002 | 3
山岸 000 100 000 001 | 2
おしまい
東海二次予選、どうしようかなあ…(小声)
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