短編小説『次の時代のフィクションにおけるAI描写』

ある事に悩んでいる小説家志望の男、どうやら、解決策を思い付いたようなのだが……。
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 2015年ごろから始まったAI革命。
 もう10年以上、このAI革命に関して、ずっと悩み続けていた事が有る。
 今のAIには、論理性や理性は無い。
 AIと言っても、様々なモノが有るが、今、主流になってるAIは、簡単に言えば、人間の「経験や学習に基いた直感」を再現するモノだ。
 だから、いくらフィクションでも昔のSFのように、AIやロボットが人間の判断に対して「それは非論理的です」なんて言ったら不自然だ。
 でも、考えて、考えて、考えても、答が出ない。
 何年も、何年も、何年も経っても糸口さえ見えない。
 今のAIは、例えば理性的・論理的・合理的に思える会話が出来たとしても、あくまでも、本当は理性や論理性や合理性を持たないモノが、経験や学習に基く直感によって理性や論理性や合理性のように振る舞う「何か」を獲得したに過ぎない。
 だから……AIや論理学に関する知識が無い読者にも「一見、理性的・論理的・合理的に見えるが、実は表面的な薄っぺらい理性・論理性・合理性に過ぎない」のが、すぐに判るような会話パターンを考え出せば、フィクションにおけるAI描写の新しい定番を生み出せる筈だ……。
 そう思い付いたは良いが……10年以上過ぎても、そこから、何1つ具体化出来無い。
 困った。
 だが……ようやく、気付いた。
 仮に「AIが知性を持っている」と言い切れたとしても、その「知性」は人間の知性とは有り様が違うモノだ。
 昔のSFに出て来るAIは「人間に近い思考パターンだが感情や直感を欠いている」ものだが、実現してしまったAIは正反対だ。理性を欠いた直感だけの知性だ。知性と言えればだが。
 そんなモノの思考や振る舞いを人間が理性でシミュレート出来る訳がない。
 なので、俺は、自作小説のAIのセリフを生成AIに考えさせる事にした。
 人間とAI搭載のロボットのバディもの。
 人間の主人公の無茶苦茶な選択に、AI搭載のロボットがどう反応するか考えろと生成AIに命令を出した。
 なお、条件は「なるべく、人間の読者が薄っぺらく感じるであろう反応」……それを生成AIのプロンプトの入力に「翻訳」して……。
 出た。一瞬で出力した。
 だが、現実のAIに出力させた架空のAIの反応は……。

「その選択は非論理的だと判断します」

 ……しまった。
 生成AIはWEB上のデータを元に学習してる。
 そして、WEB上に転がってる「フィクションにおけるAI描写」は……こんな感じのヤツばかりだった。
 しかも「人間の読者からして薄っぺらく見えるように」って条件を付けたのがマズかったようだ。
 本当に薄っぺらいが、俺が期待してたのとは違う薄っぺらい出力になったようだ。

 世間は3連休だった。
 でも、俺は自作小説の、たった1つのセリフの為に、3連休を潰してしまった。
 どう条件を変えても、生成AIに生成させた架空のAIの反応は……ビミョ〜なモノだった。
 俺が乗り越えようとしていた「それは非論理的です」的な古臭いモノ。
 筋は通っているが、AIなんかの知識が無い読者には判りにくいもの。
 一体全体、何を言いたいか良く判らないもの。
 いや、待て、ひょっとして自分の頭で必死こいて考えた方が早かったんじゃないのか、これ?
 疲れ果てた頭で、ようやく、ある事を思い付いた。
 生成AIに……俺の小説の今まで書き終えた分を読み込ませ……そして……。
「この小説へのツッコミを出力しろ」
 まぁ、本当はプロンプトへの複雑なコマンドだが、要約すれば、そう云う命令をAIに出した。
 しばらく、時間がかかった。
 小説執筆に使ってるPCのCPU負荷を見ると……結構、デカい。

 一晩明けて、職場に行く前、小説執筆に使ってるPCの画面を確認。
 生成AIは、俺の小説へのツッコミを出力していた。
「人間とAIのバディものという設定の小説で、今時、人間側の主人公が直感で動く感情的なタイプというのは、いささか古臭いと思われます」

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