雨と歯車
夜。
冷え切った空気。
雨が降っている。
傘を持つ手に雨粒が当たって痛い。
早く帰って。
早く帰って暖かい甘酒か、お茶を飲もう。
雨粒の一つが、風船みたいに膨張した。
雨粒の凸レンズ。
無数の微生物がいる。ゾウリムシ、ワムシ、ツリガネムシ、アメーバ。
みんな、必死で動いている。
雨粒は、中にいるものの意思とは無関係に、地上へと落下する。
ちょうど地球が、人間の意思とは無関係に、自転と公転を繰り返すように。
そこに、僕らはいない。
雨粒のレンズは、縮小し、僕の目を直撃した。
傘を地面に落としていたのだ。
「ははははははは、ははははははは!」
大声で笑った。雨粒が口に入る。
可笑しかった、何かが可笑しかったのだ。
僕らの意思とは無関係に、歯車は回っていく、そのことが。
酒粕は買ってある。
暖かい甘酒を飲んで、一息つこう。
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