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【番外編】おうちデートを素敵に演出 キャラソン・オシャレ楽曲9選


前回記事「おうちデートを素敵に演出 キャラソン・オシャレ楽曲9選」はお楽しみいただけましたか?
読み終えた方が素敵なおうちデートを満喫されている姿を想像すると、こちらまで自然と笑顔が溢れてしまいます。

さて、番外編となる本記事ですが、「なぜキャラソンだったのか」という、キャラソンに絞って選曲を行った前回記事に対するアンサーを書き連ねていく、少しめんどくさい内容でお送りしていきます。
前回記事とあわせてご覧頂ければ幸いです。


1.なぜキャラソンだったのか

ざっくりですが、作品全体を主題とするアニソンに対して、キャラソンは、キャラクター単体、またはデュエットや少数ユニットなど、作品全体に比べて狭い範囲を主題としている分、音楽的にもジャンル性に特化した楽曲が生まれやすい環境にあるようなイメージを個人的に持っていました。
そこから、「おうちデート」と「オタク」という N極とS極を繋ぎ合わせる楽曲が見つかるのではないか、"わからないことはわからないままで平行線ってことに"しなくて済むのではないかと考え、キャラソンに焦点を当てた次第です。

とはいえ、上記のイメージは、裏付けのない個人的な想像に過ぎないため、本来なら、「本当にキャラソンはジャンル性に特化した楽曲が生まれやすいのか」という点について検証したいところです。

ただ、この検証、非常に難い(がたい)傾向にあります。

手順としては、アニソン、キャラソンをひたすら「ロック」「ハウス」「ジャズ」「その他」などの音楽ジャンルに振り分けて、キャラソンの方が「その他」が少ない!Q.E.D.!ってなるのが理想ですが、書きながら情けなくなってくるくらい、疑念、課題がぽんぽん浮かび上がってきます。
とても全部は書き切れませんが、「アニソン・キャラソンこの世に何曲あるねん問題」や「そもそもロックって何やねん問題」「その曲はハウスじゃおまへんがな問題」など、もしかしたら、この記事を読まれている貴方も同じようなことをお考えかもしれません。
音楽ジャンルひとつとっても、関西弁以上に理解するのは難しいため、単純に「これはロック、これはジャズ…」っていう作業は、取り掛かるまでもなく、諦めた方が良さそうな気配が漂います。
余談ですが、「本来、音楽にジャンル的な垣根はない。ジャンルというのは、売り場のコーナー名に過ぎない」というのは、ぼくが大学時代にバイトしていたCDショップの社員さんの言です。その節は大変お世話になりました。


2.キャラソンの主題

ではどうするか。
キャラソンとジャンル性の特化を直接結びつけることは難しいにせよ、キャラソンの主題がアニソンより狭いことを検証出来れば、少なくとも、キャラソンの方が、より尖った(この言葉もツッコミどころ多くて怖いですね)楽曲を制作しやすい環境下にあると言えるのではないでしょうか?
雑に言うと、料亭より寿司屋の方がマニアックな寿司食べられる理論です。寿司も含め日本食全体を主題とした料亭に対して、寿司という単一のキャラクターが主題である寿司屋では、変わり種や挑戦的なネタを楽しめるような気はします。
そろそろ本題に入っていかないと、番外編まで付き合ってくれてる方に申し訳ないんで、この線で話を進めていこうと思います。

「キャラソンの主題がアニソンよりも狭い」という命題には、以下のふたつの仮定が入ってます。
キャラソンの主題=キャラクター
アニソンの主題=作品全体
キャラクター < 作品全体 という点については恐らく納得していただけると思うので、検証すべき点は、
・「キャラソンは本当にキャラクター性を主題としているのか」
・「アニソンは本当に作品全体を主題としているのか」
の2点かと思われます。
ただ、後者のアニソンサイドについては、ぶっちゃけ作品全体を主題としていない楽曲も多々あり、例えば『るろうに剣心』OPの「そばかす」が『キャンディ・キャンディ』をイメージして制作された話なんかは有名ですよね。
ただ、ここの検証については、「アニソンとは何か」のnote記事を執筆してくれる方に託しちゃおうと思います。ここまで読んでくれている貴方への切なるお願いです。
しかし、本記事で取り扱う「キャラソン」の検証からは、さすがに逃げるわけには行きません。
キャラソンは本当にキャラクター性を主題としているのか」について、検証していきましょう。

3.キャラソンとキャラクター性の繋がり

「キャラソンは本当にキャラクター性を主題としているのか」、キャラソンとキャラクター性の繋がりを検証していきます。

検証方法ですが、実際にキャラソンの制作に携わっている方々の考え方を解釈していくことが最も確実だと思うので、歌い手である声優、作詞、作曲を行う作家を中心とした制作陣の二者の考えを見ていきましょう。

自身でもキャラソンのみで構成されたライブを開催するなど、「キャラソン愛」の強い女性声優として知られる内田彩さんは、キャラソンに対して、以下のような見解を示しています。

「普通の歌とは違って、キャラクターを演じているからこそできる表現があるのがキャラソンです。同じ歌詞、同じメロディを歌うにしても、キャラクター性によって歌詞の捉え方も歌い方も、全然違ってくるんです。最初は『キャラクターが歌を歌うって、どういうこと?』って思って(笑)。どういう設定で、この子は歌を歌わなきゃいけないの? って思いがあったりもしたんですけど、やってみると、一つ一つ自分なりに解釈していくのが面白くて。このキャラクターだったら、のびのびと歌うだろうなとか、このキャラクターは歌うこと自体あまり好きじゃないかもなとか、想像しながら歌を作っていくのは、楽しいですね」
〈ANiUTa NEWS【マンスリーアーティスト】内田彩 インタビュー第3回「私達が先陣を切る!という思いだった『ラブライブ!』」〉(2020年4月6日現在閲覧可能)

内田さんの声で再生していただけたでしょうか?
彼女は、キャラソンを歌唱するにあたって、「このキャラクターだったら、のびのびと歌うだろうな」など、キャラクターに対する自身の解釈を、歌い方に取り入れていることが読み取れます。
キャラクターを演じているからこそできる表現があるのがキャラソン」という彼女の冒頭の発言にまとめられるように、声優は、キャラソンの歌唱にあたって、キャラクター性を主題としていることがわかりました。

一方、作家を中心とした制作陣ですが、制作の流れとして、まず作品の音楽プロデューサー等から作家に対して発注が行われ、作家による制作というのが一般的かと思われます。
どうやら、発注段階におけるやり取りを見ていく必要がありそうです。

アイドル育成ゲーム『あんさんぶるスターズ!』で音楽プロデューサーを務める桑原聖(Arte Refact)氏は、「ユニットソングは、具体的にどのように制作していくのですか?」というインタビュアーの問いかけに対して以下のように述べています。

現在はどのユニットも複数の楽曲があるので、過去にこんな曲があるなかで、つぎにこのユニットに必要になるのはどういう曲なのか……ということをまず考えていきます。“キャラクターたちが生きている”というイメージですね。ユニットによって考えかたが変わったりしますし、CDの発売月によっても変わります。(中略)スタートはいろいろですが、そこから曲のイメージに合う作家さんがいれば、その作家さんにまず曲を発注します。
〈B'sLOG.com【インタビュー】「もはやゲームのキャラだなんて思っていません」――『あんスタ!』音楽プロデューサーの桑原Pに10000字インタビュー!☆前編〉
(2020年4月6日現在閲覧可能)

この引用からは、2つの重要なポイントが読み取れます。
ひとつは、音楽プロデューサーは、作家に発注する段階で、既にキャラソンの音楽的イメージを固めつつある点。ふたつめは、その音楽的イメージがキャラクター性を根拠としている点です。
2点目について、桑原氏は、"キャラクターたちが生きている"と表現していますが、『あんさんぶるスターズ!』は、ソーシャルゲームを媒体とした作品であり、ゲーム内のイベント開催に合わせて楽曲の制作が行われることも多く、豊富な楽曲数が特徴のひとつです。キャラクター性を基準に、楽曲の積み重ね方によってキャラに実在性を持たせていく手法は、本作品だけでなく、『THE IDOLM@STER』シリーズなど、ソーシャルゲームのリアルタイム性を生かした他の作品でも見ることができます。

とはいえ、キャラクター性という点で上記の引用は少々分かりづらいため、より端的な例として、同インタビュー内での桑原氏の以下の発言を引用します。

――ソロ曲ではとくに、「桑原さんはどうしてこんなにファン心理やキャラクターのことをわかっているのだろう」と感じました!
桑原 みんな大好きですからね(笑)。実際に存在すると思って楽曲を作っていますし。収録現場で「やっぱりこの子はこんなことを言わないと思うので、こうしましょう」と変えたり、けっこう好き放題やっているかもしれません(笑)。あえて遊びを入れたり、いろいろ崩すこともあります。一応ちゃんとしたテイクも録っておいて、Happy Elementsさんに提出する際に「(比べて聴くとこっちのほうがいいと思うのですが)どうですか?」と聞く感じで(笑)。また、頂いた曲の大筋を変えることはないのですが、作曲家さんにご相談したうえでメロディーラインを変えたり、キャラクターの声に合わせてキーを調整することも多々あります。

「やっぱりこの子はこんなことを言わないと思うので、こうしましょう」という桑原氏の発言には、内田彩さんの「このキャラクターだったら、のびのびと歌うだろうな」に通じるものが感じられます。

キャラソンの制作のされ方をまとめると、発注の際にキャラクター性に基づく音楽的イメージが作家側に伝えられ、作家がそれに応えた楽曲を制作し、音楽プロデューサーとの擦り合わせを経たうえで制作会社に納品される、というのが一連の流れのようです。
そして、プロデューサー、作家のいずれも、キャラクター性に対する解釈を最優先とした制作を行なっており、声優同様、キャラクター性を主題としていると言えるでしょう。


4.キャラクター性を主題としたキャラソンの例

第1章の「なぜキャラソンだったのか」という問いから、第2章、第3章で、キャラソンはキャラクター性を主題としていることを仮定・検証していきました。その仮定・検証の目的は、キャラソンの主題がアニソンよりも狭いことの実証であり、この実証が、キャラソンの方が尖った楽曲を制作しやすい環境下にあることに結びつきます。
そして、「おうちデート」と「オタク」を結びつけるとんでも楽曲の採掘源として、「キャラソン」は有効なのではないかという流れの内容でした。
「なぜキャラソンだったのか」という問いへのアンサーは以上になります。
果たして、「キャラソン」はおうちデートとオタクを結びつける楽曲の採掘源だったのか。ジャッジは、前回記事でご紹介した楽曲を聴いてくれたであろう皆さんに委ねたいと思います。

【番外編】で書こうと思っていたことは大体書いてしまったのですが、せっかくなので、具体的な楽曲を例に、キャラソンにおけるキャラクター性の表れについてご紹介して、本記事の締めとさせていただこうと思います。
番外編にまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


ぶる〜べりぃ♡とれいん - 南ことり(CV.内田彩)
作詞:畑亜貴
作曲:増田達行
編曲:三浦誠司

本記事でもインタビュー記事を引用させていただいた内田彩さんのキャラソンと言えば、まずこの曲が浮かぶ方も多いのではないでしょうか?
『ラブライブ!』シリーズのメインキャラの1人、南ことりの2曲目のソロ曲です。

デートの待ち合わせに遅刻しそうな彼女が電車を急かす1曲で、スカ調のトラックは、キャラクター性というよりは「遅刻」というシチュエーションに合わせた感があります。
余談ですが、以前アニソンDJをやった際にスカ楽曲で固めたプレイをしたのですが、キャラソン率が高く、キャラソンのポテンシャルに驚かされた経験があります。
なお、「ぶる〜べりぃ♡とれいん」→「夢色トレイン」は、スカ・髪色・アイドル・キャラソン・お菓子好き・トレインの6点繋ぎになるうえ、BPM帯も確か近かった記憶があるので、非常にオススメです。

話が逸れましたが、歌詞については、アニメ化前にリリースされたこともあり、初期設定である「ドジっ子」なキャラクター性を「遅刻」と結びつけた内容となっています。
また、常軌を逸したひらがな率の高さや小さい「っ」の多さ、「鏡さん おしえてよ」「時計さん ゆるしてよ」などのパンチラインからは、アニメでは鳴りをひそめていた「天然」というキャラクター性を大いに推察することが出来ます。

そして、内田彩さんの歌唱ですが、すごいとろとろしてます。
同CDに収録の「告白日和、です!」と比較しても、よりとろとろしており、シチュエーション的には焦るところで、本人としても「不安なキモチがすっぱい」のですが、どこかマイペースな「天然」具合の表現なのかもしれませんね。

このように、キャラソンにはキャラクターの魅力が存分に詰め込まれています。
逆に言うと、キャラクターを知らなければ、キャラソンの本当の魅力には気づけないのかもしれません。

「キャラに惚れ込んだ者だけが、キャラソンに込められた本当の魅力を解き明かせる」

オタクの皆さん、キャラソン聴きたくなってきたんじゃないですか?


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