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YC W23 Batch - Luca

YCの採択企業から個人的に面白いと思ったスタートアップを紹介します。
今回は小売事業者向けに利益を最大化する最適なプライシングを提案するサービスを提供するLuca。

かの有名なタクシー配車・ライドシェアサービスUberをここまでの地位に押し上げた要因はなんだろうか。よくまず1番にあがるのはビジネスモデルだ。もちろんシェアリングエコノミーの先駆けとして、タクシー運転手として稼ぎたい一般ドライバーと、タクシーの乗客とマッチさせるというビジネスモデルは素晴らしい。

リアルタイムで変わるドライバーの位置と乗客の位置を踏まえて、どのタクシーとどの乗客をマッチさせるかを決めるマッチングアルゴリズムの質の高さも、また彼らの競争優位性であることは疑いの余地がない。乗客が乗車リクエストを出すと、なるべく近くにいるavailableなドライバーと最小時間でマッチさせ乗客の待ち時間が最小化される、これが「呼んだらすぐ来る」という感覚、素晴らしいユーザー体験を生んでいる。

だがそれらと同等かそれ以上に、Surge Pricingと呼ばれる需要に応じた変動料金制度はUber/ドライバーの収益性を最大まで高め、Uberという企業をここまでの規模に育て上げた大きな要因だろう。

創業者はこのUberのライドシェア事業Uber Poolでプライシングを担当していたTanvi Surtiと、Uber Eatsで同じくプライシングを担当していたYonah Mann。


彼女たちはリテールビジネスを成長させる上で価格戦略が最も重要であることをUberの経験から知っている。しかし一般的な小売事業に目を向けると、価格設定はないがしろにされており、担当者がエクセルをぽちぽち触って適当なロジックで決めていたり、エイヤで決めていることがまだまだ多いことに彼女たちは気づいた。状況に応じて価格を変えた方が利益が増えることは理解しているものの、数千を超えるSKUを同時に扱っている小売事業者からすると、全てのSKUでリアルタイムに価格を変えそれぞれのステークホルダーを動かすことは実質不可能であり、あまり行われていない。

そこで彼女たちは小売事業者向けに、AIアルゴリズムがデータから売上/利益を最大化する価格を提案してくれるサービスLucaを開発した。同サービスは最初の値決めだけでなく、その後の売れ行き、その時々の季節性、競合価格、在庫状況、物流コストなど、リアルタイムで移り変わるデータを元に利益を最大化する価格調整を提案する。

他にも同じようなダイナミックプライシングのサービスを提供するsaasスタートアップは存在していた。Pricefxは今のところ最も成功しているベンダーと言われているし、エアライン業界に特化してダイナミックプライシングサービスを提供するFetcherrは累計$12.5mの資金調達に成功している。
こうした既存サービスと比較したLucaの競争優位性は同社のプライシングアルゴリズムが考慮する変数の多様さと、通常のダイナミックプライシングとは一線を画した「補完的な」サービスであると創業者は言う。

ウェブサイトを見ると、現在同サービスを導入している顧客は7社。
投資家もY Combinatorに加えて、Menlo Ventures、SOMA CapitalなどベイエリアVCの名前が並んでいる。
Techcrunchの2023年4月の記事に$2.5mのシードラウンド調達を完了したという記事が出ていた。

スーパーのお惣菜の値段が数分単位で変わる日ももう近い、かもしれない。

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