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YC W23 Batch - Semantic Finance

YCの採択企業から個人的に面白いと思ったスタートアップを紹介します。本日は株価など金融市場に大きな影響を与える出来事やニュースを検知してリアルタイムで情報とアドバイスを金融機関向けに提供するSemantic Finance。

取引データ、記事、ソーシャルメディアのエンゲージメントデータをインプットとして取り込み、大規模言語モデルを活用して不要なノイズを99%フィルタリングして必要な情報だけを届けることで、迅速な意思決定をサポートする、というのが従来のサービスとの差別化要素のようです。

現状の金融プロのトレーディングでは、定性的なニュースやソーシャルメディアなど伝統的なメディアではないところから供給されるニュースに対するレスポンスが比較的遅いという課題が残っています。

市場ではクオンツによる高速取引がすでに一般化しており、決算発表やマクロ政策など定量的なニュースに対してはコンマ一秒を争って取引しているにも関わらず、既存のアルゴリズムでは定性的なニュースSNSの動向、予期しないニュースに対しては比較的弱く、レスポンスにかかる時間も長い。

これが顕著になった例が2021年にTeslaがBitcoinを購入したニュースで、この時はニュース公開から市場の価格が動くまでに6分かかりました。この騒動によって720億ドル分の利益が動いたといいます。逆に言えば、この6分のレスポンスの遅れで720億ドル分の利益を逃したとも言えます。

同社のソリューションは記事の意味や文脈まで正しく理解できるGPT-4の力を活用して、資産に関する情報の認識率を42%から91%に、重要トピックの認識率を54%から84%に改善しています。

サービスは基本的にAPIとして提供されるということで、企業側のさまざまなシステムと繋いで柔軟にこれらの情報やアラートを活用することができるようです。

今日(1/18)時点でWebサイトへのアクセスができない状態になっているのでそもそも会社として存続しているか怪しいですが、GPT-4のSemantic Searchの能力を活かして、これまでのマーケットの自動取引の仕組みを上回るアルファを提供するというコンセプトは非常に興味深いと思いました。

大手金融機関側でもこぞってこうしたシステムの開発競争が行われているんでしょうか。今後の自動取引の発展に注目です。

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