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ベッセル関数Jとデルタ関数

ここでは修正ベッセル関数$${J_n(x)}$$とデルタ関数の関係を少しみていきます

導出

今回は以下の式を考えることで、ベッセル関数とデルタ関数の関係式を取り出します

$$
\begin{align}
\frac{d^n}{d\alpha^n} f(\alpha k_\perp) \nonumber
\end{align}
$$

ここでこの関数$${f}$$は2次元のベクトル$${k_\perp}$$に依存していますが、より性質の良い$${k_\perp^2}$$のみに依存している関数であると仮定します

このとき式に対してフーリエ変換を2度行うと

$$
\begin{align}
\frac{d^n}{d\alpha^n} f(\alpha k_\perp) = \int \frac{d^2 b_\perp}{(2\pi)^2} (ib_\perp \cdot k_\perp)^n e^{i \alpha b_\perp \cdot k_\perp} \int d^2 k'_\perp  e^{-i b_\perp \cdot k'_\perp} f(k'_\perp) \nonumber
\end{align}
$$

と書くことができます

2つの積分を動径方向と角度方向に変数変換して、角度方向の積分を行います($${d^2b_\perp=bdb\,d\phi}$$)

このとき次の公式を用います

$$
\begin{align}
\int_0^{2\pi} d\phi \cos (n\phi) \, e^{ia \cos\phi} = 2\pi (-i)^n J_n(|a|) \nonumber
\end{align}
$$

$${n}$$が奇数のとき

$$
\begin{align}
(\cos\phi)^n = \frac{2}{2^n} \sum_{k=0}^{\frac{n-1}{2}} {\binom n k} \cos[(n-2k)\phi] \nonumber
\end{align}
$$

$${n}$$が偶数のとき

$$
\begin{align}
(\cos\phi)^n =\frac{1}{2^n} {\binom n {\frac{n}{2}}} + \frac{2}{2^n} \sum_{k=0}^{\frac{n}{2}-1} {\binom n k} \cos[(n-2k)\phi] \nonumber
\end{align}
$$

ここでは簡単のため$${n}$$が奇数のときを考えます

すると

$$
\begin{align}
\frac{d^n}{d\alpha^n} f(\alpha k_\perp) &= \int_0^\infty db \,b (b |k_\perp|)^n \, \frac{2}{2^n} \sum_{k=0}^{\frac{n-1}{2}} {\binom n k} (-1)^k J_{n-2k}(\alpha b|k_\perp|) \nonumber \\
& \quad \times \int_0^\infty d k' \,k' J_0(bk') f(k'_\perp) \nonumber \\
&= \int_0^\infty d k' \,k' f(k'_\perp) \nonumber \\
& \quad \times \int_0^\infty db \,b (b |k_\perp|)^n \, \frac{2}{2^n} \sum_{k=0}^{\frac{n-1}{2}} {\binom n k} (-1)^k J_{n-2k}(\alpha b|k_\perp|) J_0(bk')\nonumber
\end{align}
$$

と計算できます

両辺を見比べてみると、$${f}$$は任意の関数でしたので次の式が成り立つ必要があります

$$
\begin{align}
\int_0^\infty db \,b(b |k_\perp|)^n &\, \frac{2}{2^n} \sum_{k=0}^{\frac{n-1}{2}} {\binom n k} (-1)^k J_{n-2k}(\alpha b|k_\perp|)J_0(bk') \nonumber \\
&= \frac{1}{k'} \frac{d^n}{d\alpha} \delta( \alpha |k_\perp| -k') \nonumber
\end{align}
$$

ということで

$$
\begin{align}
\int_0^\infty db \,b^{n+1} &\, \frac{2}{2^n} \sum_{k=0}^{\frac{n-1}{2}} {\binom n k} (-1)^k J_{n-2k}(\alpha b|k_\perp|)J_0(bk') \nonumber \\
&= \frac{1}{k'} \frac{d^n}{d\alpha|k_\perp|^n} \delta( \alpha |k_\perp| -k') \nonumber
\end{align}
$$

というベッセル関数とデルタ関数の関係式が導出できました

$${n}$$が偶数の場合は

$$
\begin{align}
\int_0^\infty db \,b^{n+1} &\, \frac{1}{2^n}\left[i^n{\binom n {\frac{n}{2}}} J_0(\alpha b|k_\perp|)+ 2 \sum_{k=0}^{\frac{n-1}{2}} {\binom n k} (-1)^k J_{n-2k}(\alpha b|k_\perp|)\right]J_0(bk') \nonumber \\
&= \frac{1}{k'} \frac{d^n}{d\alpha|k_\perp|^n} \delta( \alpha |k_\perp| -k') \nonumber
\end{align}
$$

となります

具体的に$${\alpha=1}$$で$${n=0,1}$$の場合を見てみましょう

$${n=0}$$では

$$
\begin{align}
\int_0^\infty db \,b \, J_{0}(b|k_\perp|) J_0(bk') = \frac{1}{k'} \delta( |k_\perp| -k') \nonumber
\end{align}
$$

となって、これはよく知られている公式のようです

$${n=1}$$では

$$
\begin{align}
\int_0^\infty db \,b^{2} \, J_{1}(b|k_\perp|) J_0(bk') = \frac{1}{k'} \frac{d}{d|k_\perp|} \delta( |k_\perp| -k')  \nonumber
\end{align}
$$

となります

おわりに

今回ベッセル関数とデルタ関数の関係式を導出しました
テスト関数が性質の良いものと仮定しているので、より一般の場合に成り立つかは頑張って確認する必要がありそうです
今回の式はたぶん$${n=0}$$の式からベッセル関数の微分の公式を使って導出できるんじゃないかと思います

この関係式はスピン依存した横運動量依存パートン分布関数(TMD)のCollins-Soperのスケール発展式を考える時に使える気がしますが、あまりよく知らないです

余談
今回の原稿をChatGPT o1 previewに読んでもらうと、公式の間違いと式の間違いを指摘してくれました。しかし、$${(\cos \phi)^n}$$の公式を間違えていたので確認は大事です。このレベルだともうChatGPTでよくなる気はしてきました。

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