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なぜ行政・自治体でEBPM(証拠に基づく政策立案)が進まないのか元公務員が独自の視点で解説【朝まで生テレビを見る前に】
今、巷では緊急事態宣言の発出や延長がどのようなエビデンス、証拠に基づいてなされているのかという声が聞かれます。感染クラスターが出ていないのに"3密"で感染リスクが高そうとの理由で、狙い撃ちされ休業や営業の制限を強いられる業種も見られます。また、東京オリンピック・パラリンピックは開催されるのかされないのか、その結論も論拠も示されず憶測や批判が高まっている現状もあります。これらに共通しているのは、EBPMの欠如です。
EBPMと国の現状
EBPMとは、Evidence-based Policy Makingのことで、日本語訳では「証拠に基づく政策立案」と言われることが一般的です。実は政府・各省庁はこのEBPMに言及しているところが多く、一例として内閣府は「内閣府におけるEBPMへの取組」のページで
政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。
政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものです。内閣府では、EBPMを推進するべく、様々な取組を進めています。
と明記しています。しかしながら、緊急事態宣言の発出・延長・終了も、オリパラの開催可否も、判断基準となるエビデンスが示されておらず、広く国民・住民が統一した認識のもとで行動できない要因となっています。
厚生労働省もコロナ対応には及び腰
新型コロナウイルスへの対応で矢面に立っているひとつの省庁は厚生労働省です。厚労省はこの他にも膨大な業務がある中、「EBPM推進に係る調査研究等一式」事業を昨年度も行い、今年2月には「第3回厚生労働省のEBPM推進に係る有識者検証会」を開催しその議事録が公開されています。その中で「令和4年度効果検証対象事業候補」が以下の通り提起されています。
8つ対象事業が示されている中、新型コロナウイルスに関連するものはひとつもありません。各事業は国を運営していく上では大事なものではあるものの、1年以上社会を混乱させたウイルスとの向き合いや対応について、通り過ぎたらなかったことにするのでしょうか。海外では過去の感染症に学び封じ込めにつなげたところもあるのに、これを見過ごすのは将来に禍根を残しかねません。
EBPMの位置付けや認識に甘さ?
中央省庁とは役割を少し異にしているのですが、前述の内閣府のEBPMに関する取組みを見ると、その位置付けや認識において国民との温度差が見えてきます。というのも、2021年5月に発表された「令和3年度内閣府本府におけるEBPMの取組方針」で示された項目は、
予算要求
政策評価
税制改正
人材育成
この4つでした。あくまで政府としては平時の業務ではEBPMを進めるという姿勢は打ち出されているものの、COVID-19に関する事象については言及がありませんでした。行政の仕事として、こうした方針や計画に載っていないものはないものと同じなため、この会議で議論されない限り、緊急事態宣言やまん延防止措置等の発出や終了にEBPMが採用されることはないということです。
地方自治体に光明も
国の方針にコロナ対応はEBPMが推進されているとは言えないものの、地方自治体ではそれに近い取組みがなされています。例えば大阪府はモニタリング指標として
(1)市中での感染拡大状況
(2)新規陽性患者の拡大状況
(3)病床等のひっ迫状況
から5つの項目を共有し、府民に対する警戒・非常事態の基準を明記するとともに、その解除の基準も記しています。府知事が連日マスメディアに出て呼びかけを行うだけでなく、データも日々詳細に公開していることが知られれば、行政への信頼がさらに得やすくなるように思います。
東京都も類似した情報公開を行っています。ただ、これらが緊急事態宣言の発出・解除と紐付いておらず、エビデンスは示せども行動に移されずという状況にとどまっています。データを開示するだけでそれを基準とした行動指針がなければ、EBPMとは言えないわけです。オリパラの開催可否に関しても、仮に決定基準が共有されたとしてもそれが守られなければ何の意味もありません。主催者、特に日本の関係者がそのような危惧を抱いているからこそ、基準を決めたり国民と共有できなかったりするジレンマがあるように見えます。
このように、中長期の視点ではEBPMは少しずつ中央行政・地方行政に浸透していく可能性が見えますが、喫緊で生かさなくてはならない新型コロナウイルスへの対応といった事象にはそれが届かないという点が今いちばんの課題であり、次の総選挙などでの論点になることを期待したいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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