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公務員も知っておくべき!「2019年 日本の広告費」(1)広告の全体像と最新の傾向を概観する

 株式会社電通(本社:東京都港区、社長:五十嵐 博)は2020年3月11日に、わが国の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2019年 日本の広告費」を発表しました。このデータは2019年の日本における広告費の概況、媒体別広告費の概況がまとめられたもので、メディアに関わる人にとっては羅針盤となるもので、把握しておいて当たり前とも言えます。

 なぜこれを公務員も知っておくべきかと言えば、昨年地方自治体が行った広告施策が良くない形で取り上げられました。

 住民、市民の認識と乖離した政策は、大きなところであっても見過ごされない時代になっています。そこで、テレビ局で10年あまりマーケティングに取り組んでこうしたデータも逐一社内で共有することを仕事にしてきた私が、初めてこのデータを触れる人にもできるだけわかりやすく、今回発出された「日本の広告費」を解説してみます。

2019年 日本の広告費の概況

 まず、全体の概況としてこのようにまとめられています。

◆2019年の総広告費は、通年で6兆9,381億円となった。不透明な世界経済や相次ぐ自然災害、消費税率変更に伴う個人消費の減退や弱含みのインバウンド消費など厳しい風向きの中、成長を続けるインターネット広告領域やイベント関連が総広告費全体を押し上げる結果となった。
◆また、インターネット広告費は、テレビメディア広告費を超え、初めて2兆円超えとなった。デジタルトランスフォーメーションがさらに進み、デジタルを起点にした既存メディアとの統合ソリューションも進化、広告業界の転換点となった。
◆新設項目として、「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」、改定項目として、従来の「展示・映像ほか」に「日本の広告費」における「イベント」を加えた「イベント・展示・映像ほか」を追加推定し、8年連続でプラス成長となった。

 日本全体では1年で7兆円もの金額が広告として流通していて、媒体別に見れば長年トップだったテレビを抑えてインターネットが1番となりました。テレビはずっと2兆円産業と言われていたので、そのボーダーをインターネットも超えたということになります。

20-014図表2

インターネット広告が伸びているとはどういうことか

 なぜインターネット広告が伸び続けているのか、後述にもありますが、全体概況では「デジタルトランスフォーメーション(DX)がさらに進み、デジタルを起点にした既存メディアとの統合ソリューションも進化」したことが挙げられています。つまり、広告に限らず仕事、生活、さまざまな面でアナログからデジタルへの転換が進み、結果として広告ニーズが高まったということで、「見られている」という尺度で捉えられる広告枠への接触という考え方より広がりを持った、生活にデジタルが増えたからそこに広告も増えているという見解が見えてきます。こうした考え方はマスメディアと対比する上でも大きな違いと言え、広告のあり方を捉える際には生活などの様子をしっかり把握しなければならないことを示唆しているところは新しい観点です。

新設項目・改訂項目から見える時代の変化

 また、3番目に明記されている『「物販系ECプラットフォーム広告費」とは、生活家電・雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うEC(電子商取引)プラットフォーム(これを、本広告費では「物販系ECプラットフォーム」と呼ぶ)上において、当該プラットフォームへ"出店"を行っている事業者(これを、本広告費では「店舗あり事業者」と呼ぶ)が当該プラットフォーム内に投下した広告費と定義』しました。つまり、楽天市場などに出店した店舗が、トップページ等に出やすくするため、あるいは楽天の他のサイトから誘導するために出す広告について項目立てを行い、それは1064億円と試算しました。2018年は822億円と推定され、20%も伸びている分野です。今後どのように推移していくかは注目に値しますが、これには「ふるさと納税」も関わるのではないかと想像します。さとふる、ふるさとチョイスなど関連プラットフォームにおいては現在、オンライン・オフライン両面で露出面が多くなるサポートを行っています。オンラインはまさにECと同じ、オフラインとはイベントでの出展です。大きな金額を出すほど人通りの多い場所、大きい場所が当てられるというまさに資本主義的な競争に自治体も巻き込まれていますが、これも一分野として着目されているということです。

 もうひとつ、『従来より推定していた「展示・映像ほか」の項目に、次の定義によるイベント部分を追加した。』ということで、「広告業が取り扱うイベント領域のうちディスプレイ、PR館やプロモーション映像制作などを除外した販促キャンペーン、ポップアップストア、スポーツイベント、PRイベントなどの製作費」も展示・映像と同じ分野とされました。大規模な展示会が多様化して開催され、そこに出展することで見込み客でアンテナの高い人とコミュニケーションがとれるということで、BtoB(ビジネス・トゥー・ビジネス)の企業の広告活動にも注目度が高まっているということで、さまざまな企業に事業を委託する自治体などにあっても、こうした動きを捉えておく必要があると思います。

 全体の概観だけで字数が多くなってしまったため、次回は媒体別のデータと捉え方について解説することにします。

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