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【前編】「大学の授業、どうしてる?」聴覚障害学生が大学の授業で困ること

障害のある学生のキャリアについて発信しているGATHERINGですが、「大学生」もキャリアの1つですよね。今年大学入学した方はそろそろ大学生活にも慣れてきたころでしょうか?慣れてくると大学での合理的配慮についてどうするのか?などを少し落ち着いて考える学生さんもいるのではないでしょうか。

今回、聴覚障害の当事者であり、Collableのインターンシップ生として活動しているかりえさんとかのんさんが、聴覚障害学生の大学生活について対談しました。テーマは授業参加方法についてです


英語の授業ならではの難しさ

かのん:かりえちゃんは大学でどんな配慮を受けてる?

かりえ:私が受けている配慮って言っても正直そんななくて…基本的に、大きな授業の時とか講義の時は、聴覚障害があることは先生に言わないかな。前方の席に座って終わり。ゼミみたいな少人数の授業の時は、事前に先生に伝えたり、自己紹介の時に言ってみんなに知ってもらうぐらい。例えばアルファベットのBとDみたいに聞き取りづらいものは、聞き返したらみんな大きめの声で返してくれるから、それで今のところはなんとか生活を送れている状態。

かりえ:でも1回、英語の授業の時にすごく困ったことがあって。TOEFLの音声をその場で聞いてそのまま訳すみたいな授業だったの。絶対聞こえないじゃんと思って(笑)

かのん:絶対無理(笑)

かりえ:ただでさえ英語が得意なわけでもないのに、さらにそれをカセットで聞くみたいな感じだった。その時はさすがに無理だと思って、先生に配慮について相談して、事前に台本の紙をもらった

かのん:あー、なるほど。私も台本はもらってる。あと、授業自体が全部英語で行われるようなときは、授業には出ないで別の方法で単位をもらってた

かりえ:なるほど。

かのん:『天路歴程』っていうキリスト教文学があるんだけど、それを読んで先生に感想とか質問を送るっていう課題を、授業の出席代わりにしてもらってた。

かりえ:そういうのは聞いたことある!聴覚じゃなくても、そもそも出れない子、内部機能の障害とか、あと精神障害であまり学校行けないって子は、代わりの単位取得方法があるっていうのは聞いた。

かのん:あ〜、そういう時にも使われるよね。

かりえ:実は私が英語で困った時も、その方法を提案されたんだけど… 私の場合は授業が日本語で行われて、先生の英語の発音もたまたま聞き取りやすかったから、「代わりに単位取るような方法じゃなくても大丈夫です」って言ったかな。でも結構きつかったね、リスニングは。特にその場で訳すやつはね…(笑)

かのん:いや〜そうだよね、厳しいって思っちゃう(笑)

グループディスカッションを乗りこなす

大教室のディスカッションは「気合」?

かのん:ディスカッションの時、例えば大教室の中で「いくつかのグループに分かれて話してください」ってなって、周りもざわざわしている…みたいな状況の時はどうしてる?

かりえ:それは今試行錯誤してる状態で…これまで3回か4回ぐらいあったんだけど、その時は、気合い!!!(笑)

かのん:気合い(笑)

かりえ:気合いで頑張って耳を傾けて聞いて、ギリギリなんとか保ってたぐらい。だから、正直支援が必要なレベルなんだろうなとは思いつつも、どうしようかっていう感じで、今試行錯誤状態

かのん:これからそういうディスカッションの頻度が増えることはないのかな?

かりえ:うーん、大学4年生ではもうほぼないかなっていう感じだけど、就職後は絶対あるよね。何かしらの配慮はこれから必要になってくると思う。

ちょうどよいグループサイズとは?

かのん:ゼミの中で喋る時は、何人規模で喋ってる?

かりえ:ゼミのディスカッションで喋る時は、だいたい5、6人の班に分かれる。

かのん:そうなんだ。周りの静かさとかうるささとかは?

かりえ:今日(対談前に、広い室内空間のなかで5人×3班でのワークショップに参加していた)ぐらい。それくらいならそこそこ聞こえる。ディスカッションって、テーマが与えられて頭の中にインプットされている状態だから、音を拾えなくてもなんとなく話の流れはつかめるかな。

かのん:あ〜、なるほど。

かりえ:話を振られてわからなかったら、聞き返せば相手がちゃんと質問を大きめに言ってくれるから、一応うまく行えている状態ではある。でも、去年までは学生9人と先生で、比較的聞き取りやすい声の人が多かったんだけど、今年は新しい2年生が入ってきたのと、留学から戻ってきた学生がいたから合計13人になって…

かのん:あらら…

かりえ:13人にもなると1グループの人数も増えるし、距離も遠くなるから、遠い人の声は聞き取れない傾向が出てきちゃって…文字起こしも使ってみたんだけど、あまりうまくいかなくて…私が聞き取れない声はマイクも拾えていないから、文字も反映されないんだよね

かのん:わかるわかる。

かりえ:うーん、悔しかったなあ。

小規模ディスカッションの工夫

かのん:ゼミでのそういう時って、なにか工夫してもらったりしてる?
かりえ:先生に相談して、グループワーク形式から、大きなコの字になって近くの人とディスカッションする形式に変えてもらったのはありがたかったな。隣の人だったら聞き取りやすいし、聞き返しもしやすいから、気が楽になった。

かのん:あとは、話した内容を授業全体で共有する時は、話した相手にやってもらうことが多いかも。相手がまとめてくれるからどういった話し合いをしたか改めて確認することができるし、聞き取れなかった部分があっても拾えるから。その2つを意識しているかな。

まとめ

いかがでしたか?対談を通して、聴講やディスカッションなど、様々な場面で2人がそれぞれ苦労し、工夫していることが分かりました。

後編では、2人が利用している補助機器や、合理的配慮についてさらに詳しく述べられていますので、そちらの公開も楽しみにしていてください。

他の障害や特性によって大学生活での配慮の方法は異なりますし、大学によって環境も異なりますよね。みなさんの経験談もぜひ教えてください!


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