劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライトを鑑賞しました
(ネタバレなし)
🦒わかります。
自分はTV版含めて全く認知していませんでした。SNSで鑑賞した人の言動を観測して、予感めいたものを感じて急ぎTV版と合わせて鑑賞しました。
結果的には想像を超えた衝撃と感動の体験でした。無制限で劇場リピートせざるを得ないほどに。TV版含めてめちゃくちゃ好みの作品だったので、今まで知らなかったことを痛烈に後悔しました…
”少女歌劇レヴュースタァライト”は2018年に放送されたTVアニメで、某○塚のような舞台女優を目指す9人の舞台少女たちの成長を描いた作品です。パッと見、よくある頑張るアイドル系の少女群像劇。そこに”隠された地下劇場で繰り広げられる魅惑のレヴュー”、”歌って踊って奪い合う、秘密のオーディション”、”永遠の主役、トップスタァの座を巡って競い合う”という、不条理で超現実的なギミックが施されています。
少女たちはそれぞれに友情、親愛、ライバル心、敵愾心、嫉妬、劣等感などの絡み合った複雑な感情を抱えていて、レヴューと呼ばれるチャンバラシーンで互いにそれらの感情を発露しながら闘います。舞台少女としての気持ちの強さをセリフ、歌、演舞でぶつけ合い、よりキラめいている者がオーディションで上位者となり、トップスタァに選ばれます。そうした非日常でのレヴューと、日常の学園生活とを交互に繰り返しながら物語が進みます。TV版全12話は、ある地点で物語がきちんと完結した作品です。
劇場版はTV版のその後、テーマはごくシンプルで卒業と別れの物語です。全体的にTV版との相似形で構成されているし、TV版を観てることが前提のシーンも多い作りです。ですが気にせず観ても終始異常にテンションの高い映像表現だけで楽しめてしまうので、TV版を見ずに劇場に行きスタァライトされる事案が多発しています。
劇場版の映像・物語表現は、TV版の文脈に沿いながらも強烈に前衛化、先鋭化されています。それが観る人に的確なインパクトを与え続けた結果、上映期間も後半になってから、自分のような知らなかった人にまで口コミで広まりました。その映像体験は「観るドラッグ」「スクリーンからキラめきで殴り続けられる映画」と評されています。
絶え間なく襲いかかってくるシュールで超現実的な映像ですが、それらは決して物語から乖離しておらず、ほとんどが舞台少女たちの心の動きや与えられた役割の明確で深遠なメタファーです。鑑賞しながら映像の圧力に振り落とされないよう食らいつき、丁寧に読み解くことで舞台少女たちの内面のドラマにより深く触れることが出来ます。その心地よさのなんと甘美なことか…。
また映像の強さにまったく引けを取らない、台詞の言葉選び、レヴューソングの同調性と親和性、熱の入った声優の演技。映像、脚本、音楽、歌、演技といった多くの要素が非常に高いレベルで融合しています。そしてスタァライトが本当に優れたエンターテイメントであると自分が思うのは、そこに「現実を侵食する毒」が仕組まれているからです。
自分は繰り返し観た末に、この作品の魅力の根底は言葉の力にあると感じています。舞台少女たちの舞台に賭ける想い、仲間やライバルに向ける本気の言葉、それがレヴューの舞台装置として実体化することが、この超現実的な映像表現につながっています。たとえば舞台少女が「私たち、もう死んでるよ」といえば全員本当に死んでるし、「全部切り捨てる!」といえば言葉で舞台や装飾を叩き切ります。舞台ではどんな奇跡でも起きるし、起こせる。なので言葉と演技が映像より先に強度がないと表現が完成しない。
熱く滾る舞台少女たちの葛藤と舞台の上に立つ覚悟、そこからドラッギーな映像表現と共に絞り出される熱く力強い言葉たちは、舞台人でなくともきっと多くの人のクリエイティヴに延焼します。鑑賞した後、自分も何か行動を起こさなくちゃ、そんな気持ちにさせる作品です。…危険ですねぇ。
ただでさえ乗り遅れた上に、この作品の素晴らしさを誠実に(ネタバレなしで)どう伝えるのか一週間以上アタマを抱えていたので、もうどこの劇場も上映終了にさしかかっています。興味を持った人に少しでも魅力が伝わり、劇場での鑑賞に間に合うことを願っています。音響や映像もですが、劇場でしか味わえない、作品世界と観客をつなぐメタ的な要素(そうした入れ子構造も魅力の一つです)がありますので…。
あなたもスタァライトのキラめきを、是非。
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