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人生ゲームにデバッカーは不要

年始に親戚一同の集まりがあった。
一同とはいっても、大所帯の集会というわけではなく、僕の一家と母方の祖母、母の妹(三女)、母の妹(次女)一家という小規模なものだ。
この集まりは、子供たち全員成人を迎えお年玉という一大イベントもお役御免になり、ちょっぴり贅沢な食事をするだけのいまいち盛り上がりに欠ける会になってしまった。
 
伊達巻をつつきながらぼんやりと「このくらいの年になったら孫の一人くらいでもいないと会話が持たない。」という事に気づかされた。
この年になると早々近況に変化が生じるわけもなし、なんとも会話に弾みがつかない…気を使う中ではないくせにじっとりとした空気感、というなんとも居心地の悪い状態である。
両家合わせてせがれ6人。誰も結婚の「け」の字もひっさげずにむざむざと集まっていることにひどく申し訳ない限りだ。
今の時代に逆らった考えというわけではないが、こういう集まりでは最低一人は結婚して明るい家庭を持って子どもの一人でも連れてきてくれ。そんな幸せの象徴に僕はなれそうもないから頼むよ君たち…
 
実はこの状態は去年から始まっていた。
つまり僕はこの状況をすでに味わっているし、どうせ今年もそうなるだろうと予測していた。策を弄さないほど僕はバカではないし、その中途半端に気まずい状態で飯を食い続ける状態を愛せるほど鈍感な人間ではない。
打開策とはなにか…そう「ボードゲーム」だ。
僕はアナログのボードゲームが好きだ。面白そうなボドゲをコツコツと買ってよく家に友人を集めて楽しむ程度には好きだ。
共通の遊びを設ければ流石に少しは盛り上がるだろう、普段叔母と二人で暮らしている祖母も孫たちが楽しむ姿を見れたらさぞ嬉しいことだろう。
 
この作戦を行きがけの車中で熱弁していたため、母が「そういえばみんなで遊べるもの持ってきたんだよねぇ?」という言葉を皮切りに僕はおもむろに3つのボードゲームを取り出した。
・ワードバスケット ・ウボンゴ ・コヨーテ
昨今はボードゲームブームも来ていることだし、悪くない作戦だろうと自負していた。
しかし、有志をつのった際、いとこ一家のレスポンスがあまりにも悪い、一人もやってみようという意思をみせないのだ。
「ルール簡単だからみんなでやろーよー」
「…」
おい、何が楽しくて親戚の集まり如きでお伺いたてにゃならんのだ、僕が20歳前後で君らが15、6歳の思春期真っ盛りだった時代であればまぁいいだろう。
しかし時は経ち、僕は28歳。三男の君ですら成人を迎えた、そんな状態でも自意識の塊みてーな反応をとるのか…
煙草を覚えるよりも先に学ぶべきことがあるのではないか??
普段のりの悪い尖った姉ですら参加の意思を珍しく見せているし、妹に至ってはノリノリだ。
埒が明かないのでいとこ兄妹を交えてのボードゲームを諦め。「僕、姉、妹、母、叔母」という僕の思い描いていた面子とは大きく違った編成で楽しむことになった。叔母が一番楽しんでいた、流石一流企業に勤める人間は違う。真っ赤なセーター、素敵だぜ。
そんなこともありながらも会は終わりを迎えた。
 
帰りの車中、母は怒り深々。余談だが怒りを飲み込むことができず、普段は22時には寝るはずの母が3時まで寝付けなかったらしい。
去年あった時はここまでの溝はなかったはずなのに、何故こんなことになってしまったのか、原因を考えてももちろん思い当たる節はない。
「今後の付き合い方わかんねー」
「きっといとこ長女ちゃんのことがあるからよ」
母曰く、いとこ兄妹の長女が最近、かなり年上のおじさまと交際を始めたらしく、それについて詮索されるのを恐れたため、よそよそしかったのではないか、とのこと。
原因はわかったが、その程度のことであそこまでよそよそしい態度をとってしまうということは、家族一同良しとはしていないということなのだろうか? そうのであればどう転んだとしても今後大変だろうなぁ…
と他人事100%の感想を抱いていた僕を横目に、
「ありえない」「気持ち悪い」といったニュアンスの言葉が姉の口から走り出して止まない。ちょうどハライチの岩井さんの結婚発表もあり、それも引き合いに言いたい放題であった。
「ハライチのターン」リスナーである僕としては、ニュースで聞きかじった程度のディティールで知った風な口きかないでくれ…と思いながらも、特に誰を擁護するわけでもなくやんわりと聞き流す。
「まぁなんでもいいんじゃない? 私人間に興味ないし」というキラーワードを起点としたループが家に着くまで続いていた。
 
帰宅後、両親は早々に床につき、めずらしく兄弟で酒をあおることになり、一人暮らしで普段人と話す機会が無いからか、姉はえらく上機嫌。酔った勢いかポロリとマッチングアプリをやっているという事を話し始めた。
おいおいおいおいおい!!!
「人間に興味ない」なんて出来の悪い涼宮ハルヒみたいなこと言ったくせに、マッチングアプリなんぞをやるたぁ、人様に興味アリアリじゃないですか。
やはり各々が独自に持つルールは端から見ると一貫性がなさすぎて面白い。
 
結婚が幸せの終着点とは限らないと豪語していた姉が、来年どんな考えに至るのか、こうご期待である。
もし婚約者なんかを連れてきた日には、素直に祝福したい。
皆に幸あれ。

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