1回りも2回りも上のランクに太刀打ちできなかった感動を思い出す。営業時代

これは失敗話。でも個人的にはすごく重要で貴重な体験談。

今頭の中を整理していて
営業が売り上げを獲得する方法がすごく大きく、大雑把に言えば2つあると思っていて、一つは営業としてつながっておき、会社としていつかお付き合いできるタイミングを絶対に逃さないために情報を更新し続けること。個人的には会社としてはこちらの方が重要だと思う。
もう一つは出会うこと。これをみんな獲得すると表現していると思う。

何かを売るときは、結局のところタイミングが非常に大きな要素を占めていて、タイミングがあってさえいれば、大体のことはうまく流れていくと思う。

ただそれでも、どうしても乗り越えられない壁というのは存在する。
その時に出会う壁は、人にとってはすごく貴重なものだと思った話だ。

営業を辞める少し前、展示会でお会いした方が大きなプロジェクトの担当(以降Gさん)になっていて、僕がサウナにどハマりしていた時でサウナ話から発展。僕にプロジェクトでの機材やコーヒーの選定などを全て相談してくれた。

そして僕は考えられる全てをお伝えして、彼らのビジョンや先に控えている課題などに一番対応できる豆屋さんを紹介して、マシンデモを行うため自社のショールームで試飲会をすることになった。

正直僕が抱えた案件の中でも2〜3番目。しかも納期がそれだけ大きいのに比較的近くて売り上げが年内になりそうだったので、紹介した豆屋さんは非常に大きく有名なところだったが社長さんをなんとか呼んでプレゼンに挑むことにした。

そうしたら、Gさんから急遽メールと連絡が来て
「すみません、うちの常務がきます。30分だけで説明できるようにまずしてくれませんか?」
と相談がきた。
想像以上に前のめりになってくれていて、僕も二つ返事でOKして急遽予定を組み直したりした。

この常務がすごい人だった。
そもそもこの会社自体が非常にチャレンジングで様々な企画や事業を立ち上げるプロたちでもあって、その常務はそれらの理念をエスプレッソのように濃くした考えを持った人だった。

要は説明から理解するスピードが尋常じゃないほど早く、そしてクレバーで有無を言わせない説得力を持ち合わせていた。

「僕たちのビジネスは、その土地の消費動向を考え見て一つ差別化を行い物量で勝ちます。あなたたちがスペシャルティーコーヒーで提案してくれましたが、僕たちにはこのビジネスモデルが合わないと思っています。また、僕的にはスターバックスが好きです。並ばなくていいモバイルオーダーなんかは時間の節約にもなりますしね。なぜこういったコーヒーを選ばれたのでしょうか?」

文字に起こすとやっぱり簡単でありふれた内容だが、これが中々どうして鋭い質問だった。そういうビジネスモデルなら通常わざわざ費用のかかるコーヒーを利用する必要はないし、そして当時の僕にはこの常務を説得できるビジネス的な側面やアンサーを持ち合わせていなかった。

だから、豆屋さんがいる前で少しでもなんとか持ち堪えるためにコーヒー豆のグレードの話をスターバックスに合わせてしまった。これは今でも大きな失敗だと思っているしすごく恥ずかしい話だったな考えている。

ここで僕はこれ以上に常務に話せなくなってしまっていた。
だが、ここにいる豆屋の社長さんは歴戦の猛者。この業界で様々な人たちと仕事をしてきた人だった。
僕とは全く別ながら根本的なブランドに関しては全くもって変えずに
常務と話をしていた。

カフェを始める時のブランドの話から、スペシャルティーコーヒーがもたらすお客さんへの影響、社長や他で一緒にビジネスをした時の例など。
かなり様々な要素を出しながら、最後には、やっぱりコーヒーが美味しいからに全てを収束させる感じ。
うまく言葉に起こせないのがまだ僕に足りない技術だと思ってしまうが、自分にはまだ全然見えていない領域だった。

そして最終的には試飲をすることになって、ラテが常務の想像を超えて美味しかったらしく、本来30分で終わる内容が45分くらい滞在されていた。

そして、お礼のご挨拶をした際に、「よろしくお願いします」と非常に簡素ながらご返信をもらった。そして取り組みがスタートしたのだ。

最後にはうまくクロージングに繋がったが、僕はこの時にはっきりと自分の実力不足と、大きな企業の常務に対して、今自分がいる視座では全然足りないことに気づいた。
常務のような価値観を持つ人たちと、自分はどうやって満足していただけるのか。と。

僕はまだこの失敗に対して、どういうふうにすればいいのか具体的な答えは出ていない。なぜならこの機会以降同じような立場の人との商談に成功したことがないからだ。

でも、きっと必要なのはサービスや商品への根本的な愛情と熱意。そして獲得したいという飢えなのかなと思っている。

常に商品に対して、自分たちのサービスに対して考え続けて動き続けていたからこそ、あの社長はあれだけ論理的で結論にせっかちで、短い言葉で魅力を伝えないといけない人に15分も延長させてコーヒーの飲むことを楽しんでもらえたのだと思う。

今でももしチャンスがあればまたチャレンジをしたい、ただそのためには常務が考えている視座がどんなものなのか、きっと学んで同じような立場を一片でも理解しないと難しいだろう。

こういう壁に出会った時、僕は完敗だと思ったし、またすごく営業は楽しいと思った。こんなに脱力感が出たことはないし、自分がまだまだ足りないと思って、もっと改良する余地があると思った。

今は別の壁にぶち当たっていて、これから挑むが、この時の反省を生かして、できる限りの準備と想像と仮説を打ち立てて挑もうと思う。





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