見出し画像

砂の上

まだ夜も明けて間もない朝
昨日の熱を残したままの砂を歩く

足を運ぶたびに逆の足にかかる砂が
靴の中に入るのさえ心地よい

水際で少し持ち上がってから落ち込む
砂の盛り上がった地面を越えてようやく

からみつくような潮の音とにおいに
むせそうになりながら水面に触れる

まるで大きな生き物の呼吸のような
緩やかなようで強いリズムに

行く当てもなく漂うのもそう悪いことじゃない
なんて強がりばかり言ってた頃を思い出す

寄せては返す波に乗せて小石を投げる
遠くに飛ばしたはずの石はすぐそこに

落ちた石は水面にさざ波だけを残し
それさえも波間に2秒で消える

砂の上を歩く僕は去年と何も違わないまま
また同じ顔で季節をなぞってる

埋立地のグラウンド 試合に出てる子も
外周を走ってる子も みんな同じに見えて

3人に1人はいなくなってる そして
どこか僕の知らないグラウンドで

新しい砂を踏む 去年と同じようでいて
まるで違う波に洗われた 今夏の砂


 〇  〇  〇  〇  〇