『狼の口 wolfsmund』フランス語版を再翻訳11 命乞い代官編
こんにちは。
前回の更新から随分間が空いてしまいました。ずっと暑かったのがようやく涼しくなってきて過ごしやすくなっております。
今回は、いきなり代官のキャラが変わったことでお馴染みの6巻の捕虜になってからの命乞いシーンをやっていこうと思います。
原文→仏語訳→拙訳の順です。
私の寝台に汚い物を置かないでいただけませんか?臭いがつくでしょう
今晩私をどこに寝かせるおつもりですか?
Je vous saurais gré de ne pas souiller ma couche avec cette vermine crevée!
Vous avez pensé à l’odeur!? Je refuse de dormir là-dedans ce soir!
私の寝台をこんな死んだ害虫で汚すのはやめていただけると嬉しいのですがね!臭いのことを考えないのですかね !?
今晩ここで寝るのは私はお断りですよ!
初っ端から全力で死亡フラグを建てにいく代官。仏語訳だと特に言ってることがひどい。
vermineはノミやシラミのような害虫のほか「社会のごみ、人間の屑」といった意味もある相当きつい単語です。この状況でこんなん言ったらさあ…
しかも自分が今晩自分のベッドで寝かせてもらえること前提でお断りですよと言ってるので相当強気です。代官さあ…
腕が折れているんですよ もう少しいたわっていただけませんか
そんな者より早く私を手当てしてください
On cassé les deux bras! Vous pourriez au moins vous occuper de moi…avant ce chien!
J’exige d’être soigné en priorité!
両腕を折られているのですよ!少なくともその犬の前に私の手当てをしていただけませんか
優先的な治療を私は要求します!
流れるように失言を重ねていく代官。
ヴァルターを"ce chien"と犬っころ呼ばわりして自分を優先的に手当てするよう訴えます。この状況でこんなこと言ったらどうなるかわからない代官ではないはずなのにどうしたの?
exigerは「(当然の権利として)要求する」なので、より居丈高というか尊大な感じになっています。
よろしい 私が調停いたしましょう 私を殺すなど愚の骨頂です 公弟閣下の軍勢が到着すればあなた方は絶対に助からない
C’est plutôt vous…qui ne comprenez pas dans quel guêpier vous êtes… Peut-être devriez-vous reconsidérer vos projets…lorsque l’armée du duc arrivera ici… Vous n’aurez aucune chance de repartir vivants!
窮地にいることをわかっていないのはあなた方の方です… 公弟閣下の軍がここに到着すれば、きっとあなた方は計画を考え直さねばならなくなるでしょう あなた方が生き残る可能性など全くないのです
殺すと言われて命乞いモードに入る代官。
窮地にいるのはそちらの方だということを強調してアピールします。ne…aucuneは「どんな…も…ない」と強い否定になっています。
私を丁重に扱うならば あなた方の命乞いをして差し上げます 損得の比重は明らか
生かしておくのが賢明な判断です
Mais si vous me traitez avec respect…il n’est pas impossible que je me montre clément! Votre destin est entre mes mains…
Il serait donc plus malin de me garder en bonne santé!
ですが私を丁重に扱うならば…私は寛大な態度を見せないとも限りません!あなた方の運命は私の手の中にあるのです
ですから私の身を守っておく方が賢明でしょう!
仏語訳になってますます尊大になっている代官。
il n’est pas impossible que…で「…ないとも限らない」となり、敬意を持って扱うなら寛大な処置をしないこともないよ!と上から目線で訴えていますね。Votre destin est entre mes mains(あなた方の運命は私の手の中にある)といい、とにかく主導権は自分にあるのだということを強調している印象。
この一連の流れ、本当にキャラ変わり過ぎてどうした?という感じですね。
今回はここまでです。
誤訳や間違いなどありましたらどんどんご指摘お願いします!
ここまで読んでくださりありがとうございました。それでは次回!
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