『狼の口 wolfsmund』フランス語版を再翻訳13 例のアレ編
こんにちは。体調の優れない日が続いていますがどうにかやっています。昨日はモルガルテンの戦いの日だったということで、8巻からいこうと思います。公弟閣下が農民軍に嵌められた挙句代官の遺体を投げ込まれたシーンです。場面の選定は完全に趣味です…
原文→仏語訳→拙訳の順です。
伏兵… やはり計略!?
Malédiction…C’était bien…une embuscade!!
しまった…伏兵だったのか!
Malédictionはしまったとかちくしょうみたいな間投詞なのですが、フランス閣下や代官はこういう系の間投詞をよく言ってくれますね。ここでは出てきてないけどBon sang(ちくしょう)とかよく言ってる。意外な一面です。
オーストリア公御弟君 レオポルト閣下とお見受けする 我らは山岳森林三邦盟約者団同志 ウーリ ウンターヴァルデンより馳せ参じた援軍である
Léopold de Habsbourg, duc d’Autriche! Bienvenue sur nos terres!
Je m’adresse à toi au nom…de la confrérie des trois cantons!
Tu vois ici à mes côtés…des paysans venus nous aider d’Uri…ou encore d’Unterwald!
オーストリア公ハプスブルク家レオポルトよ!ようこそ我らの土地へ!
山岳森林三邦の名をお前に名乗らせてもらう!
ウーリとウンターヴァルデンより援軍に来た農夫達の陣営を見よ!
Bienvenue sur nos terres!(ようこそ我らの土地へ)という一文が入って、盟約者団にとってここは自分たちの土地である、という意図が強調されています。原文ではレオポルトに対しある程度敬意を持った物言いをしているウーリのかしらですが、フランス版ではタメ口にあたるtu呼びなのも面白い。
ようこそ 我らが決戦場へ 心を尽くしておもてなし申し上げる
Ici…ce sont nos terres! Et nous allons t’accueillir comme il se doit!
ここは我々の土地だ!しかるべきおもてなしをして差し上げよう
ここでも「我々の土地だ」というのを再三強調している模様。フランス版、作中の一連の戦いは土地をかけた戦いなのだと再確認してる感じもしますね。他の部分も読んだうえで意図がありそうならまたnoteにまとめたいところです。
ここに来るまでに殺した連中が全て囮!?
そんな馬鹿げた作戦を実行しただと!?
Quoi? Tous les paysans que nous avons tués…n’étaient qu’un leurre pour nous attirer ici!?
Comment ai-je pu…tomber dans un piège aussi grossier!?
何だと?我々が殺してきた百姓どもが我々をここに引きつけるための擬似餌にすぎなかっただと!?なぜ私はこれほど馬鹿げた罠に嵌ったというのか!?
grossierは意味が広いのですが、粗雑な、安っぽい、下品なというニュアンスで、農民軍の無茶苦茶な戦い方を指して「下品で粗雑で馬鹿馬鹿しい罠」と言っているのでしょうね。Comment ai-je…で遺憾や反語をもって「なぜこんな罠に嵌ったのか」と言っているあたりでも相当な悔しさが伺えます。
聞きやがれ公弟 こいつは峠の関所の代官だ 生前やたらとてめえに会いたがってたみてえだから連れてきてやった
Duc de pacotille, écoute-moi bien!
Ce cadavre est celui de notre ancien amman! Il a longtemps attendu ta visite…on l’a donc amené avec nous!!
いんちき公弟、よく聞きな!
この死体は俺らの元代官だ!お前が来るのを長いこと待ってたもんだから一緒に連れてきてやったぜ!
ここから問題のシーン。ゴリゴリおじさん口が悪い。
de pacotilleは安物の、いんちきなという意味でストレートに閣下を罵倒しています。
ヴォルフラム!?あれが…ヴォルフラム!?
Wolfram!? Mon dieu! C’est Wolfram!?
ヴォルフラム!?なんてことだ!あれがヴォルフラムだと!?
Mon dieuは英語で言うmy god!みたいな感じです。
部下の苦労を 労ってやれ
Vous avez sûrement plein de choses à vous dire… Alors on te l’envoie!!
言いたいことはたくさんあるに違えねえからよ…そっちに連れてってやるよ!
ここで例の再会シーン。これはひどい。フランス版の台詞、なんというか「モブおじさん感」のようなものが出ていてなんか良いですね。
今回はここまでです。読んでくださりありがとうございました。誤訳や訂正などありましたら教えていただければ幸いです。
ではまた次回!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?