『狼の口 wolfsmund』フランス語版を再翻訳10 説教閣下編
こんにちは。今年も早いものでもう8月に突入です。ところで本日8月4日は作中キャラクターのオーストリア公レオポルト1世のお誕生日です!(1290年8月4日-1326年2月28日)めでたいですね。
というわけで、いつもは代官の台詞メインに訳を見ていましたが今回は公弟閣下のシーンからいこうと思います。1巻2話の代官と閣下の謁見シーンから。原文→仏語訳→拙訳の順番です。
余の使いをからかって喜んでいるそうだな 兄上の贔屓に甘えて思い違いをするなよ ヴォルフラム
Alors comme ça…tu tiens tête à un de mes émissaires? Tu as peut-être les faveurs de mon frère…mais je ne tolérerai plus…le moindre écart!
それで、私の密使に反抗しているそうだな?兄上のご寵愛を受けているようだが…私はもうどんな小さな逸脱も容赦しないからな!
おおむね原文通りですが、je ne tolérai…のくだりで「私はもう容赦しない」のを念押ししてる感じはしますね。
滅相もございません 誠心誠意お仕え申し上げているつもりでございます 何卒私めの仕事ぶりをもって 忠義の証と思し召されますよう
Loin de moi l’idée de vous contrarier… Mon unique but est de vous servir, votre excellence! Les bons résultats de mon travail…sont la meilleure preuve de ma dévotion à votre égard!
あなたに逆らうなど、とんでもない…あなたに尽くすことが私の唯一の目的なのですよ、閣下!私の働きの良き成果があなたへの献身のより良い証です
loin de moi l’idée de…で「…するなんて少しも思っていない」。ここもおおむね原文通り。Mon unique but est de vous servir(あなたに仕えることが私の唯一の目的)の文が入って「誠心誠意お仕え申し上げている」の部分がやや分かりやすくなった感。
ふん 今後は要らぬ勘ぐりを招かぬよう まめに伺候して気を配れ
Hmm… Ne t’avise plus jamais d’aller à l’encontre de mes consignes…et contente-toi de faire ce qu’on te demande!
ふん、もう私の命令に逆らおうなどとはするなよ…そして命じられたことだけしろ!
フランス語版だと1話で代官が閣下の使いを追い返したことをよりダイレクトに「代官が閣下に逆らった」と解してるのでしょうか、もう逆らうなという念押しが強いですね。contente-toi de faire ce qu’on te demandeは直訳すると「命じたことをするので満足しろ」で、命令されたことをするだけで満足しておけ、余計なことはするなという感じでしょうかね。
そして閣下が捉えた反乱軍の一味の話になり、そこから代官が関所で捉えたヨハンナに話が移ります。ヨハンナを引き渡すかどうかということで、
その者 申し付ければ引き渡すか?
Et cette fille…si je t’ordonne de me la livrer, le feras-tu?
その娘…引き渡せといったらお前はどうする?
ここ、あえて引き渡すかどうか聞いてるところがいいですね。先程叱った内容踏まえて言うこと聞くか試してる感。
尋問をお任せ頂けるなら
Évidemment! Si vous me laissez la questionner avant, bien entendu…
もちろん!尋問をお任せいただけるなら承知しました
で、この返事。
懲りん奴だな 何度言っても
Sacré Wolfram… Tu ne changeras jamais!
ヴォルフラムときたら…お前は全く変わらんな!
ne…jamaisで「決して…ない」という強い意味の否定になります。先程の説教踏まえた上で、お前は何も変わらんなという感じです。ここは原文のニュアンス残しつつわかりやすい訳で好きです。
今回はここまでです。これを機に公弟閣下はじめ他キャラクターの台詞も訳していきたいですね。
誤訳や間違いなどありましたらどんどんご指摘お願いしますです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。ではまた次回!