見出し画像

会館PAから吊マイクなどの音をもらう手順と設定【ビデオ撮影編】

文化会館やコンサートホール、または体育館や公民館などでは日々イベントが行われております。その際に映像制作業者さんやアマチュアの方々はいったいどうやって音声を収録しているのでしょうか。

私の場合ですと、マイクを立てたり会場設備から音をもらってカメラやレコーダーなどで収録します。 しかし、なかなかうまくいかないってことないですか?

私も若いころは音声知識が乏しいためよく失敗をしましたし、ここで一度おさらいとして、ビデオの音声収録方法について記していきたいと思います。

今回は会館設備やPA(音屋さん)から音をもらう手順についてお話をします。

その前にひとこと・・

撮影や収録は一人でもできますが、良い音を録ろうとするならばお世話にならなければいけないスタッフがいます。 それら音響スタッフのみなさんはビデオ撮影のために存在しているわけではありません。 くれぐれも最低限のマナーを守って接しましょう。  


まずは事前に会場側や音響業者さんに連絡をする

文化会館、市民会館、イベント会場、名前は違えども音響設備が整った会場では必ずといっていいほど音をもらうことになります。その理由としては、自分でマイクを立てるより遥かに良い音が録れるからです。

特にMCマイク関係は会場専用。司会者などが使うマイクは会場のものを使いますからね。自分でマイクを持っていき、コレ使ってくださいなんてことはできません。

なので、撮影をする前に会館スタッフや舞台業者さんに連絡をして、当日の収録が円滑に進むようにすることが何より肝要なのです。

それと主催者側が会場打ち合わせをする際、「撮影をするので音声が欲しい」ということを会場のスタッフに伝えておいてもらうといいでしょう。

会場側は業者(プロ)が入るのか入らないかは必ず確認をします。しかし、音声がいるのかいらないかは主催者側も分からない場合が多く、これがトラブルへと繋がっていくわけです。

当日になって始めて音が欲しいなどと言われても、会館スタッフやPAさんは困ってしまいます。

ミキサー出力に空きが無いことや、それに係わる手間もヒマもないことは承知してください。

アマチュアの方も同様、主催者にお願いをして「音が欲しい」ことを伝えてもらう。

もちろん詳しい出力方法などの連絡はビデオ撮影をする方が連絡をしてください。

ちなみに会館側の音響設備の使用は無料ではありませんのでご注意を。支払いは主催者側かビデオ撮影側か、どちらになるのかという確認もしておきましょう。 これを怠ると後々トラブルになりかねません。  


現場に着いたら挨拶と確認作業

当日、事前に連絡をしておいた会館(PA)音響スタッフに挨拶をします。この時必ず担当者名を覚えておいてください。

現場入りをすると会場側のスタッフなのか外部のPAさんなのか、はたまた照明さんなのかが分かりづらく、名前を覚えておかないと迅速に確認作業ができません。

そして声をかける際には、作業中でないかを確認すること。特に反響版などを操作している場合はステージ内に入ってはいけません。入りの時間も事前に伝えておきましょう。

まず、担当者がみえたら出力先の案内をしてもらいます。どこから出力されるのかを確認すること。

また、音声ケーブルの導線上に照明ケーブルや電源ケーブルなどの「ノイズ発生の原因となるもの」がないかを確認します。

もし、ノイズの原因となるケーブルと一緒に引かなくてはいけない場合、別のパッチからの出力もお願いしてみるといいでしょう。

そして出力先の確認後、撮影準備に関するあらゆる内容を伝えておくと二度手間になりません。

卓や撮影場所の確認、電源、ホワイトバランスをとる時間など。その都度確認のためにスタッフを呼ぶようでは向こうも仕事がしづらくなってしまいます。もちろん印象も悪くなるでしょう。長くお世話になる施設なら尚のことです。

私の経験によれば音声知識よりも「上記のような円滑な段取り」が一番重要だということを知っていただきたい。

音声を良い品質で録るためにはカメラマンだけでは限界があります。なので音響スタッフさんのご協力が非常に重要なわけです。  


ビデオ撮影で欲しい音声とは

これからが本題なのですが、さて・・欲しい音声とは何でしょうか。 今回は会館や会場施設を前提としているわけですから、欲しい音は会館の設備を介した音ということになりますよね。

主に「ステージの天吊(三点吊り)マイク」、「MCなどのマイク音声」「セリフなどのピンマイク」「楽器のソロマイク」「バウンダリ」など色々ありますが、重要なのは撮影をするなかで一番メインとなる音声が優先希望音声です。

会館はステージメインなので、あたりまえに希望音声は三点吊マイクとMC関係ではないでしょうか。この二つさえあれば最低限の音声品質は保たれます。

そして吊マイクはステレオであることが重要。会館によって吊マイクのメーカーもグレードも変わります。多いのは万能なDPAでしょうか。

また、自分好みに音質を統一させたいなら交渉次第で自前のマイクを吊と交換してくれる場合もあります。希望があればお願いしてみるといいかもしれません。

では欲しいMC関係とは? 司会マイク、セリフのピンマイク(ラベリア)、SE、電子楽器などがありますが、これらは演目でどのように使用されるかが問題です。

それぞれ単体で使用する場合(お互いの音がカブらない)はMC系マイクをMIX1本で出してもらったほうが後々編集が楽です。

逆に使用マイクをそれぞれもらって、ミキサーでバランスをとることもありますが、ゲネプロ1回分でこなせるほどの人員も手間も考えるとあまり必要ないのではないかと個人的には思います。

ただ、メイン音声がMC系ばかりだとこの限りではありません。それぞれの演目スタイルで決めましょう。 そしてくれぐれも編集を考えてPAされていない音声(スルー)を希望してください。

PA(Public Address)作業とは「伝達作業」、スピーカー音声を調整することです。PAをすると拍手などの不要な音声はフェーダー操作される場合があります。 そうなると編集作業では困ってしまいますよね。音声編集はスルー素材で行うことが大前提ですから。  


出力がライン(LINE)レベルの場合

さて、音声出力パッチを確認できたらケーブルを繋ぎ、収録デッキ、またはカメラ本体へと流れていくのですが、ここで確認事項があります。

それは出力レベルがマイクかラインかの確認です。

事前にお願いした内容どおりならば手順もお分かりかと思いますが、当日になってみて変更を余技なくされる場合もあります。

特に会館側で収録が発生した場合は「マイクレベル(マイクスルー)でしか出せない」ということもあります。

これにより受け側の設定も変わってきますので、しっかり確認をしておきましょう。

しかし、ほとんど9割方、会館側からの出力はXLRバランス端子(キャノン)からのラインレベルです。+4dBuプラヨンとも言います(民生では-10)。

キャノン端子はオスとメスがあり、事前連絡で確認がとれない場合は変換アダプターを用意すること。ミキサーのライン入力はほとんどフォーン端子なのでキャノン→フォーンのケーブルが役立ちますよね。

※変換アダプタはノイズ発生の原因にもなりますので極力避けたいところです。

また、音響スタッフなどいない施設でミキサーだけが置いてある場合、または音響業者さんから音をもらう場合は卓(ミキサー)を介してるのでライン出力オンリーです。 (例)

ラインレベルとは「音量が大きい」と捕らえてください。

もちろんミキサー入力も「LINE」に突っ込みます。カメラに突っ込む場合は設定スイッチをLINEにしてください。

MICに突っ込んだり、MICスイッチのままだと「とんでもない音量」になり、音は当然割れてしまいます。

これを知らずに会館スタッフに「音が割れてますけど・・」なんて言ってはダメ。 業務用ビデオカメラの音声入力端子

逆にラインレベルで送ってもらい、ライン入力で音が小さすぎるならマイクスルーで送ってきている可能性もあります。

それにPAしてる場合も考えられますので迅速に確認をとりにいってください。撮影中だとどうにもなりませんので。

他にもミキサー入力にはAUX(オグジュアリー)やphono(フォノ)などありますが、ここではミキサーの詳しい使い方は省きます。 音響ミキサーの詳しい使い方はコチラ(YAMAHA HPへ)  


出力がマイク(MIC)レベルの場合

前述しましたが会館設備からマイクレベルの出力はほとんどありません。特殊な事例や自分でマイクを立てた場合のことをお話します。

さて、マイクレベルはビデオ機材で-6dbとなってることが多いです。db,dBu,dBm,vなどの記号は特に気にしなくていいかと※音量のデシベルではないです。

そしてマイクレベルとは「非常に小さいレベル」だという認識でいいです。出力が非常に小さいのでミキサー側で専用MIC入力にささないと適正に聞こえません。
※プリアンプというマイクレベルをラインレベルまで増幅させる機器もあります。

カメラ側に突っ込む場合は「MIC」に切替えてください。場合によりMIC+48vになります。マイクレベルで来ているのにライン入力に入れれば「限りなく聞こえません」。

そもそも会館側でマイクレベルで送るなんていうことはそうそうありませんし、上記に書いたように会館側のミキサー送りが満杯で、やむ得ずマイク本体からのスルー出力(頭分け)になる場合に限ったことだと思います。

しかし、それしか無ければしょうがないわけでありまして、その際にはファンタム電源をONにしてくださいと言われるかもしれません。 カメラの場合はMIC+48v(カメラ側のファンタム電源)に切替えてください。
※マイク1本につきファンタムは1箇所しか掛けれません。

入力側の注意事項としては、会館側から「ファンタムをONにしてください」と言われない限りは必ずファンタム電源が「OFF」になっているかを確認してください。

ミキサーやカメラの電源がONになっている状態且つ、MIC入力にケーブルが差し込まれている、そしてファンタム電源がONになっていると会館側の音響機器が壊れる可能性があります。

ファンタム電源とはコンデンサーマイクに電流を送るものなので、会館音響設備からのMIC入力がある場合は常時OFFにしておいてください。

ライン入力に挿してる場合にはファンタムは機能しませんが、間違いが起こる前にデフォルトでOFFにしておくクセをつけておくと良いかと思います。

そしてもう一つ。くれぐれも受け側の機材は電源をOFFにしてからケーブルを繋いでくださいね。

ミキサーやカメラの電源を入れる場合もフェーダーレベルは最低にしておいてください。 外部機器と繋がっている場合、電源ONでの抜き差しは厳禁です。

これは接触ノイズや機材への抵抗を抑えるためでして、運悪く会館スタッフがモニタリングしてる場合は出禁を覚悟してください。  


適正な音声収録とは

かなり話が長くなってしまいましたね・・・

ミキサーに入力された音声はチャンネル、マスター共に基本フェーダーは0(中央)にしておきます。そしてチャンネルゲインで適正音量に調節する。

さて、適正といっても難しい話ですが、デジタルレコーダーの場合、だいたい-20dbくらいでしょうか。 -12dbだと予想しない入力が来た場合、ピークを超える恐れがあります。

音質ツマミ(HIGH,MID,LOW)については基本フラット(中央)にしておきます。

この辺りの基準をどうすればよいのかという疑問は常にあります。 基準と言っても、ミキサーレベルと収録レベルをせいぜい1k信号で-20dbにそろえることくらいなのですが、送り手側の操作で変わる場合もありますし、演目自体でかなりダイナミックレンジが激しい場合もありますよね。

例えば楽器アンサンブルなどではパーカッションとフルートでは音量差が顕著です。 基準レベルをパーカッションに持っていくなら、フルートの収録音はかなり小さくなり、編集で上げようにもノイズまで増幅されてしまいます。

これを回避するには収録機器のオート機能(コンプレッサー)があるのですが、オート収録では無音状態でも音が上がるため、音割れはしないけれどもノイズが出やすくなります。

さて困りました・・ リハやゲネを丸々聞けて音量調整できればいいのですが、撮影スタイルによっては一人で準備を行うということも数多い・・。あれやこれやしてると全部も聞けません。

ここで私の場合なのですが、収録は少なくても2台以上で行うということです。 1台はおさえ気味な基準で収録し、もう1台で少し大きめな基準で収録するということ。

これはビデオレコーダーでも音声レコーダーでもどちらでもいいです。どちらか音が助かっているなら仕事として成立しますからね。

しかし映像用(TC入出力付き)のデジタルMTRはプラスチッキーな外見とうらはらに高価。映像用ではないMTRは安いのですが音ズレがかなり出ます。 ※個人的におすすめな音声レコーダーはRolandのR-88です。

 

最後にモニタリングのお話

モニタリングとは収録音声の確認作業です。主にヘッドホンやスピーカーから行います。 しかし会場だとスピーカーは使いづらいですし、そもそもノイズ確認がしにくい。やはりヘッドフォンで行うことが一般的ですね。

この時、みなさんどこからモニタリングします?ミキサーのヘッドフォンアウト、レコーダーから、カメラから・・色々あるのですが、正直、音が流れている機器は全てモニタリングします。順番は音の上流からです。

まずはミキサーでモニタリングをしてノイズやパン(定位)の状態を確認します。後はミックス音声のバランス具合などの確認。問題が無いようなら次の音の流れ、レコーダーをモニタリングします。

上流からモニタリングすれば問題が生じた場合、どこで不具合が起きているかを把握しやすくなりますよね。

もう一つモニタリングで気をつけたいことはヘッドフォンの音質とボリュームです。 ヘッドフォンは基本的に自前の物を使いましょう。

ここでいう自前とは会社所有物ではなく、自分のお金で購入したものです。自分で購入したものは疎かに出来ません。つまりは大事に使いますよね。 それに自分のヘッドフォンなら自分しか使いません。つまり自分しか知らない音が聞こえるわけなんですよ。

これは音質チェックでかなり重要なこと。 同じヘッドフォンを違う環境で使いつづけると自分の中で「基準となる音質」が見えてきます。

一方、現場毎に違うヘッドフォンばかりを使用してると音質にバラつきが出てしまう。 しかし、良いヘッドフォンでなければ本末転倒ですから、できるだけ良いヘッドフォンを選びましょう。
※個人的には現場で持ち運び便利なSONY MDR-7506がおすすめ。

フラット音質、カールコード、ミニジャック、付け心地も良い。 そして音響機器のヘッドフォンボリュームについてですが、このボリュームを上げすぎるとあたりまえにノイズが出ます。

なので、適正レベルでノイズが出てると勘違いを起こしやすい。ツマミは9時か10時あたりがよいかと思います。 ヘッドフォンの抵抗値(Ω)の問題もあるので事前にキャリブレーションをとっておくのも大事。

それでも小さいならば、そもそも適正レベルではないと思っていいです。現場では周りがうるさいために、どうしてもヘッドフォンボリュームを上げ過ぎる傾向にあります。そこで勘違いをしないようにしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?