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面接の場において「あなたを部品に例えたら」の問いかけに対し求職者が自身を潤滑油であると答える、という話を目にするようになって久しいが、彼らはその後どうなったのだろうか。

まず、潤滑油は部品ではない。
乾燥重量、という言葉がある。
機械や乗り物などの、それそのものの重さのことだ。
自動車で言えば、ガソリン、冷却水、オイルなどを除いた全部品の総重量に当たる。つまり、自動車そのものは部品でできておりそれらの総重量を以て当該自動車の重量とみなし、潤滑油等は自動車に含まれないものとされている。

潤滑油が部品でないからといって不要なものでないことは自動車の例からも明らかだろう。潤滑油だけでなく、ガソリンも、冷却水も、それがなければ自動車を作動させることはできない。
自動車を作動させれば、ガソリンも冷却水も潤滑油も減ってゆく。そのためそれらを補充する必要がある。
これは部品についても同じだ。タイヤやブレーキをはじめ様々な可動部品は摩耗するし、材質によっては経年劣化を生じる部品もあるため、それらを適宜交換する必要がある。

会社にとっての従業員にも同じことが言える。死傷病その他の理由による退職・休職は、破損や脱落を原因とする部品の交換のようなもので、定年退職なら経時劣化や定期交換のようなものだ。部品を取り替える際、新しい部品のかわりに取り外された古い部品が残るのと同じように、誰かが退職し、新入社員が加わる。

反面、潤滑油はいつの間にか減ってゆく。
潤滑油についても減る=退職、補充=採用とすることもできるが、誰がいつ減ったのかが定かではない。自動車のそれと同じく、潤滑油の人はいつの間にか減ってゆく。

減る。つまりは、消えるということだ。
1リットルのオイルが0.7リットルになったのであれば、0.3リットルが消えたことになるのと同じで、10人の潤滑油型従業員が7人になったのなら、3人が消えたことになる。
この現象を裏付ける資料がある。

男女別行方不明者数の推移 - 警察庁生活安全局人身安全・少年課
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/R04yukuefumeisha.pdf より
女性就業率の推移 - 男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/zuhyo/zuhyo02-02.html より

大抵の就業者は、大小の差はあれど何らかの商業組織、つまるところ概ね会社と呼ばれがちな何かに雇用されている。会社を動作させるためには潤滑油が必要である以上、就労人口のうち一定数が潤滑油の人とされ、それらはいつの間にか減る。つまり、消える。
男女平等が叫ばれる社会であるにも関わらず行方不明者数の男女差に大きな開きがあるのは、現実として男性の方が就業率が高いぶん、潤滑油として消える者が多いということだろう。
行方不明者の男女比と就労人口の男女比の対応は、まさにこのことを示唆している。

今年度の後半の、最初のひと月が過ぎようとしている。
今の時期、まだ就職先が決まっていない君は焦っているかもしれない。
自分に取り柄がないことに、些細な失敗が不採用の判断に結びついてしまうことに、不安を抱いているかもしれない。
それでも君は、面接の場で確認しなくてはならない。

御社の概要の、特に従業員数は、全備重量ですか?