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開発プロセスも心地良く! プロダクト開発における「最終形を見える化する」価値

関西プロダクト開発アドベントカレンダーに寄せて書かせていただきます💪

改めまして、京都のイノベーションデザインファーム、XIN inc.所属の岩本です。
普段はクリエイティブディレクターとして、大規模サイト中心に、企画や設計、コンセプトメイキング、UI/UXデザインなどに携わっています。

先日はプロカンに参加させていただき、いろいろな方から刺激をいただきました…🙏
本記事ではせっかくなので、プロダクト開発におけるデザイナー目線のお話をしようと思います。

デザインの専門的な話ではなく、プロダクト開発に関わる皆さんにシェアできる知識はないか……そうと考えたときに、一番最初に思い浮かんだのが、「最終形はどんどん見える化しよう!」ということでした。

ひょっとすると当たり前のようなことかもしれませんが、デザイナーとしては、この「見える化」がプロダクト開発をスムーズに進行するための有効な方法ではないかと思っています。

いろんな開発の思想があると思うので、「こんなやり方もあるんだな」くらいで読んでいただけますと幸いです🙇‍♂️


デザインの価値は試作にあり

デザインの役割自体はさまざまありますが、ことプロダクト開発において最もわかりやすい価値は「見える化」ではないかと考えています。
それは必ずしも最終的なデザインということではなく、むしろプロダクト開発段階で作るものにこそ価値があると思っています。

私自身、デザイナーとして世に出るものを作ることにももちろん喜びを感じますが、一方で世には出ない試作品を作ることのほうに私は強いやりがいを覚えます。

試作することによって、もやもやした思いを確信に変えたり、決断を促したりといった、関係者のモチベーションを上げることはクリエイティブ独特の価値提供ではないかと思っている次第です。

そしてそれは、ぶっちゃけて言ってしまえば、デザイナーでなくともできることなのではないかと考えています(もちろん専門性を備えているというある程度の自負はあるのですが、マインドセットだけでも多いに役立つものかなと思っています)

ここではわかりやすい例として「最初に最終形を作る」ことの効果をご紹介します。

「最初」に「最終形」を作る

よくあるデザインのプロセスでは、

・要件定義
・戦略策定
・コンセプト設計
・体験設計
・設計方針策定
・プロトタイピング
・デザイン~実装

…といった流れをとるケースが多いのではないかと思いますが、ここではあえて、すべてを集約して「最終形を最初につくる」というやり方をオススメします。

ものすごく極端なやり方ですが、いきなり以下のような流れで進めてしまうということです。

・要件定義
 ↓
・プロトタイピング

もちろん、戦略や方針を順序だてて検討するプロセスも並行しますが、決まったことはすべてプロトタイプに落とし込みます。

最新版をアップデートし続けることによって合意形成や意思決定をスムーズにすることがこの手法のミソです。
実際、ある程度クライアントのビジネスを理解しないと実行できないことではありますが、いいことがいくつかあると思っています。

いいこと①:関係者の合意を築きやすい

プロカンに参加させていただいた際にも感じたのですが、たくさんの人が関わるプロジェクトにおいて最も大きな課題のひとつは、「さまざまな職種間でのコミュニケーション、合意を積み上げていくことが難しい」ことなのではないかと感じます。

ビジネスサイドと開発サイドでは重視している指標が違うことはままあるでしょうし、開発サイド間でも共通言語の違いでなかなかすり合わないケースもあるのではないでしょうか。

そんなときに手っ取り早いのは、「手書きでもカタチにしてしまう」ことだと思います。

言葉だけだとすり合わせにすごく時間がかかってしまいますが、それなりの精度のプロトタイプさえあれば、そこを起点に議論をすることができます。

目に見えるものをベースに話をすることで、コミュニケーションは円滑になり、メンバー間での意見のすり合わせやフィードバックがしやすくなり、プロジェクトの進行をスムーズにすることができます。

いいこと②:手戻りが少ない

上記とも関連しますが、リスクの管理がしやすいことも、「最初にいきなり作る」メリットです。

わりと設計が進んでから、「こんなはずじゃなかった…」「なんか違う…」と思ったり、言われてしまったりするケースもあるのではないでしょうか。

初期からアイデアを具体的なデザインやプロトタイプにすることで、そうしたプロジェクトの問題点や課題、イメージのずれを早期に発見することができ、適切な対策を立てられます。

各段階での進捗管理や品質管理がしやすくなるため、プロジェクトの成功に向けたスムーズな進行が可能になるのではないでしょうか。

いいこと③:決裁者が決めやすい

最後に、決裁者の方にとってのメリットを挙げたいと思います。

往々にして、プロダクトを取り仕切る方(経営者やプロダクトマネージャー)は様々な迷いの中にいるのかなと想像します。

「この施策を実行したときのコストって結局どうなるだろう」「リスクって何かあるのかな」「開発フローってどうなってたっけ」「運用フローも気になる」
…もしかしたら、社内の政治なども悩みのタネかもしれません。

そんな中で、イメージもなく文書だけを見て「さあ、決めてください!」というのは、なかなか無茶なのではないでしょうか。

そんなときに必要なのは、筋書を描くということなのだと思います。

最終形を最初に描く、というのがご紹介したいことの主旨ですが、とはいえいきなりひとつの方向性に決めるのが難しい場合もあります。
なので、シナリオ別に最終アウトプットも複数の可能性をテーブルにあげておくのが単純ですが有効なのではないかと考えています。

「○○という狙いでAというアイデアを採用するとこうなる」「逆に、○○という狙いでBというアイデアを採用するとこうなる」といったことをあらかじめ描いておき、最終イメージでもって可能性を取捨選択することによって決断の速度もクオリティも上がります。

結局、実行してみないと狙った効果の実現ができるかどうかはわからない。であれば、なるべく納得のいく、そして、失敗した際にも原因がわかるような筋書が必要なのだと考えています。

さいごに

つらつらと「最終形の見える化」の効能について書いてみました。

「決まってないと作れない!」という声があがることも多いですが、逆に「作らないと決まらない!」こともよくあるのではないかと想像します。

なかなか決められないからこそ、早く小さく作ってしまう。そうしたプロセスによって結果的にはより早く大きな価値を作っていけるではないかと思っています。

今回あげた手法はデザイン側に偏っているというか、必ずしもすべてのケースにおいて使えるわけではないと思いますが、何かの参考にしていただければ幸いです。


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