真の喧嘩ラーメン

「毎日、兄弟喧嘩していて罵声が飛び交ってる」「ワンタン麺兄弟喧嘩、兄と弟で接客やサービスが違う」神奈川県湯河原のラーメン屋 味の大西 本店のレビューがヤバいと話題
https://matomebu.com/wadai/ramen20210728/
レビューがヤバすぎるラーメン屋に行った日の話
https://note.com/twistermakiya/n/nd2b41c9d3c10

先日この通称「喧嘩ラーメン」を食べに行ってきました。
上の記事を読まれていない人向けにざっくり説明すると、

店内でふたつの派閥(兄/母、弟/ダイ)が争って日々、喧嘩している」ので、通称「喧嘩ラーメン」と呼ばれているラーメン屋です。

そんなわけで川崎からはるばる湯河原まで、ロマンスカー使って1時間ちょっと。
湯河原駅から徒歩3分ほどかけて店先に到着したところ、ちょうど中から元ヤン感バリバリの茶髪の店員さんが出てきました。

恐らくこれが上の記事にも出てくる店員のダイさんでしょう。

「お食事いかがですか!」

彼のこの一言で、ボクは「弟派」の客となってしまったわけです。
こうなった以上、お母さんとお兄さんからは弟派とみなされ、相手をしてもらえなくなるわけです。
冷静に考えれば何だそのシステム。

案内されて席につき、メニューを手に取った瞬間、背後から絶叫レベルの声がしました。

ワンタンメンにしなよ!!

ビビって後ろを振り向くと。
厨房からこちらを見つめて叫んできた声、その主は弟さん。
元ヤンの兄貴感ある風貌です。

「ワンタンメンにしたらさ、チャーシューメンよりたくさんチャーシュー入れたげるからさ! チャーシューメンなんて頼む必要ねぇよ!」

何だそのシステム(2回目)。

そういえばこの店はメニューによって母・兄派が作るか弟派が作るか分担されていると聞きます。
この感じからすると、チャーシューメンは母・兄の担当なので、弟派のボクにはぜひとも弟担当のワンタンメンを頼んでほしいところなのでしょう。

何だそのシステム(3回目)。

しかし、この流れ的に「いえ、チャーシューメンにします」と言ってのける勇気はありません。
郷に入りては郷に従え。

「じゃあワンタンメンにします!!」

負けないぐらいの叫び声で答えると、

「おお、じゃあ約束通りチャーシューおまけしてやるからな!」

素直にワンタンメンを頼んだことに気を良くしたのか、弟さんは機嫌よさそうに調理へ入っていきました。

このやり取りが後々の悲劇を招くのですが、それはさておき注文も済んだので、改めて周囲を見渡してみました。

厨房にはお母さまらしき方と弟さんの二人。

ダイさんとお兄さんは二人して手すきになった瞬間、外に飛び出して道行く人を捕まえにいってます。

壮絶な客の取り合いです。

歌舞伎町のキャバクラの客引きでもあんなアグレッシブじゃないというか、歌舞伎町なら逆にすぐ警察に捕まってるレベルです。

意外だったのは、テーブル席が半分ぐらい客で埋まっていること。
たぶん地元の人はあんま来ないでしょうけど、さすが観光地というところでしょうか。
客引きの二人が結構な頻度で客を店内まで連れてきています。

しばらくすると前情報通り、ラベルをはがした2リットルのペットボトルに、自家製の中国茶が入ったものが渡されました。
これは弟派の客のみ与えられる伝説のお茶だそうです。
メニューにウーロン茶あるのに・・・。

お冷や代わりに飲み始めると弟さんがまた叫んできました。

「それ飲むとよ! 病気しないんだよ! 俺なんて50年間生きてるけど風邪すらひかないから!」

風邪をひかないのは別の理由では・・・とか余計なことを言わずに、

「お! いただきます!」

と、返しながら内心、警戒の念を抱き始めました。

「なんかこっちへの絡み多くない?」

が、その合間にも弟さんは、

「てめぇ、まだそっちの注文とってねぇのか!」
「もうしわけございません!」
「人としてどうかしてるぜ!」
「もうしわけございません!」

ダイさんと息の合ったパワハラ芸を繰り広げています。
その間、母・兄派は無言。

これでは喧嘩ラーメンではなくパワハラーメンなのでは・・・。

とはいえ、たまに居酒屋とかで見かける店長がバイトをねちねち叱る感じではなく、

「〇〇!」
「もうしわけございません!」
「〇〇!」
「もうしわけございません!」

という完全なフォーマット化してるので、何かクールポコの餅つき芸を見てる気分に近いです。

「男は黙って!」
「もうしわけございません!」
「男は黙って!」
「もうしわけございません!」

みたいな。

そんな湯河原の劇団四季を眺めること十数分。
ついに我々のところにワンタンメンがやってきました。

なんかチャーシュー1キロぐらい入ってる・・・!

「な、すごいだろ!?」

弟さんが叫んでますが、やりすぎだろ。

しかも出す際に温めなおしとかしてないので、普通に冷えたチャーシュー1キロ。
それがどっしりとラーメンのスープに浸されてるので、つまりスープどんどん冷えていきます。
ザ・ファブルでもフーフーせずに食えるぐらい。

「無理せず、食べきれなかったら残そう・・・」

このチャーシューのために、犠牲になった可憐なブタさんのことを考えると涙が止まりませんが、食べ過ぎてお腹を壊しては元も子もありません。

最終的には我が奥義、

「いやあスゴい大盛りですね! 小食なんで食べきれませんでしたすみません!」

を繰り出そうと思っていたところ、

「食べきれなかったらさ! ジップロックあげるから、それでチャーシュー持って帰りなよ!

食べかけのチャーシューを湯河原から持ち帰り!?
何だそのシステム(4回目)。

想像しただけで、すごくイヤです。
この時点でチャーシューを残す選択肢は消えました。

しかし、周りを見渡してもそんなにチャーシュー盛られてる客も、持ち帰りを提案されている客もいないんですよね。

「まさか・・・気に入られた・・・!?」

愛の量がチャーシューの量に比例するとは、これまた初のシステムです。
これがソシャゲなら課金石の形がチャーシューですよ。

「とりあえずチャーシューは完食しないと・・・」

必死で食べ始めます。

背後では、お母さんの金切り声が聞こえてきます。
どうやら見えないところで弟さんと小競り合いがあったらしく、

「あんた、とんでもない人間だね!」

と、実の息子をとんでもない呼ばわりしていて、「これぞ喧嘩ラーメン!」な感じだったのですが、もはや気にしていられません。

真の喧嘩ラーメンとは、ボクとチャーシューとの喧嘩だったのです。

最終的になんとかチャーシューも麺も食べきったボクを見て、弟さんは満足そうに、

「どうだい、スゴかったろ?」

と、夜のお店の客っぽいことを言ってきましたが、耳に入ったそばから出ていきました。かわりに口から何かが出そうでした。
ちなみにそれが昼食でしたが、夜は何も食べずに済みました。
そう考えるとコスパ良いね(^o^)/

喧嘩ラーメン、恐るべし・・・。

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