レビューがヤバすぎるラーメン屋に行った日の話
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レビューがヤバすぎるラーメン屋に行った日の話


「待って。この店ヤバいかも

友人と2人で旅行。予定していたラーメン屋に向かう道中、友人が歩みを止めた。目を大きく開いて、ゆっくりとスマホで文字を読んでいるようだった。

ヤバいわけがない。俺は旅行前にちゃんと調べた。食欲をそそる肉厚のチャーシューがゴロゴロ乗ったラーメンの写真。30年以上続く老舗で、名店だとの声もある。食べログの評価もかなり高い。

「どうした」

空腹も相まって少し乱暴にスマホを覗き込むと、たくさんの低評価レビューが視界いっぱいに広がっていった。

・前の客がこぼしたスープを拭かないで座らされる
・スープがぬるく麺も伸びていて不味い
・全体的に不衛生
・お客の前でスタッフを怒鳴る
・携帯電話使用禁止の張り紙がたくさん貼られており、スマホを手に持った瞬間厨房から怒号が飛んだ
・後からきて同じメニューを注文した客のほうが早く配膳された
・半ライスが運ばれた15分後にラーメンが来た
・同じメニューを注文した他の客はチャーシュー山盛りだが、自分は2切れだった。それを見てたら店員が山盛りの客に「こっちはサービスしといたよ!」と大声で言っていた
・店員同士(兄弟)が常に喧嘩しており、ハゲなどの怒号も飛び交う
・お客さんに「あのハゲ遅いのよ(笑)」などと話しかけてくる
・店員に水のおかわりを2回頼んだら2回無視された。
・客差別がひどく、自分以外には氷いっぱいのグラスでお茶が提供されていたが、自分だけはぬるい水だったし、おかわりもシカトされた
・「サービスするよ!」と無料でお茶が貰えて喜んだが、先に入っていた隣のお客さんが水を飲んでいて、さらにその人より早くラーメンが来て気まずかった
・チャーシューワンタンメン(1150円)を頼んだが、他の客のワンタンメン(1000円)より明らかにチャーシューが少なく、店員が「チャーシューワンタンメン頼むやつは損してるよな」と話していた。
・普通のラーメンを頼んだら「チャーシュー入り頼めよ」と不機嫌になった

すごい……!本当にこんな店があるのか。令和だぞ。

レビューなので真偽のほどは定かではないが、あまりにたくさんの人が同じような体験をしているようなので信憑性も高い。どうやって30年も経営してきたんだ。

この時はまだ、「常連を過剰に大切にする店」なのだろうと思っていた。観光地でアクセスも良い場所だけれど、きっと一見さんは求めていないのかなと。

望まれない来店になるなら別の店にしようかなんて話している中、かなり詳しいトリセツと題されたレビューを見つけた。これがすごく優れたレビューだったので、そのまま引用する。

onoda masatoさんのレビュー
[[[不快な思いをする前に初心者必見。トリセツ]]]店内は不衛生で、毎日、兄弟ゲンカが起きている特殊な店です。温泉街で駅近に有りますが、基本的に一見さんが行く店では有りません。(日常茶飯事で一見さんが怒って食事の途中で帰ります。)"暗黙で独自のルール"が有ります。一般的な日本の飲食店ホスピタリティーとは一線を画しています。ご注意下さい。店内は大声で汚い言葉が飛びかったり、絶縁状態の兄弟で蔑み合ったりしている為、精神衛生上もかなり悪い環境です。以下、何度か通った事があるので解説します。
同じ店内には、ふたつの派閥(兄/母、弟/ダイ)が有り、メニューはひとつですが、基本的に、派閥ごと別々にラーメンを作り、互いに歪み合い、客の取り合いをしています。どちらの派閥に店頭で捕まったかにより、全ての接客サービス、味、順番が変わります。皆さんが書いている接客やサービスの差別化はそこにあります。
(((互いの確保した客には干渉しない、無視。)))の姿勢ですので、初めに案内された人に話し掛けないと、冷遇か無視されます。
(大声弟/男性子分店員通称ダイ)派閥
・ワンタン麺を勧めてくる
・ワンタン麺はチャーシュー山盛り
・大きいジョッキでお茶通称杜仲茶が出る
・ワンタン麺以外を頼むと機嫌が悪くなる
・味は不安定で不味い、汚い
・高確率で海水のようなスープが出る
・ピーク時、座敷に通されたら無視に近い対応
・食べてる途中で席移動を強要する場合あり
・子分への指示筒抜け、ダイは操り人形
・大声で悪口、大声で説教、大声で自慢
・大声で客の悪口すら言う
・大声で話しかけてきて意見を求められる
(細身小柄兄/高齢母)派閥
・"ビールグラス小に水"が出てくる
・ お茶は出ない。飲みたいなら有料烏龍茶
・ ワンタン麺、肉増量無し(チャーシュー二枚)
・ 兄の場合はチャーシューワンタン麺が吉
・ 味が安定している
・ 小声で絡まれる場合が有る
・ 兄基本的に苛立っている
・ 時に母、厨房から出てきてキレる
○店頭では"高身長の店員(通称ダイ)"と"細身で小柄の兄"この2人がお互いに客の取り合いをしています。調理は、掛け持ちの兄と母、大声弟がそれぞれの派閥のラーメンを調理しています。
ワンタン麺は必ず肉大盛になる訳ではありません。お茶も必ず出る訳ではありません。"前者の店員(ダイ)に案内された場合のみ"ですので、ご注意下さい。
○どちらにしても、特にピーク時、基本的に客側の要望等は通らない場合がほとんどです。店員には、基本的に話しかけない方が良いです。(水、お茶などおかわりすら貰えない、返事だけして何十分も後回しにされる、というゆうような場合がザラにあります。)もし、話かけるとしたら、"必ず案内をした方の店員"でなければ更に意味が無いので注意して下さい。
○動画撮影は絶対NG。撮影した日にはすぐ見つかり両派閥から別々に袋叩きにされます。最近ではスマホの店内使用にも意見の相違があるらしく持っているだけでキレられます。
○開店時間、閉店時間も日によります。同じメニューでも派閥でラーメンの味が違います。
弟(大声で騒いでいる方)がサービスを過剰にするのは、兄派閥に見せつける為の嫌味の込もったパフォーマンスです。恐らく家族間で経営方針、後継ぎ問題等で揉めたかと思われます。
◯派手な喧嘩と言うより、陰湿で執拗な喧嘩が起きています。兄弟、お互いの直接的な干渉は少ないです。しかし、客を通し遠回しに悪口を言う、直前違う派閥の席だった為、スープがベトベトに垂れている机を拭かない等、ラーメンを食べに来ただけの客に余計な憤りを与えて来る場合が多いです。特に弟派閥に案内された場合は巻き込まれる率が上がります。
恐らく兄のサービス(増量無し、お茶無し)が正統派のスタイルで、弟が暴走機関車のように暴れ回っているイメージかと思います。

私は、個人的にお兄さんのチャーシューワンタン麺が好みなので、弟派閥に案内されないよう店頭を伺いながら入ります。初めは独特の喧騒も、何かしらのショーを観ているような感覚で非日常を楽しめました。腹も膨れ、話のネタにもなります。しかし、大声の弟がサイコパス過ぎて、理不尽、胸糞不快な思いを何度もした為、流石に気分が悪く成り、通うのを止めました。
駅周辺にあり、観光客が多いので、何も知らない犠牲者が毎日毎日、量産されてると思うと気の毒で辛くなります。嘘みたいな話ですが、本当に、壊れた電子機器のようにテンプレートで同じようなセリフで同じような喧嘩を繰り返しています。

僕らはすっかり歩みを止め、じっくりとこのレビューを読んでいた。なるほど、これが本当だとすれば今までの低評価レビューの内容にも合点がいく。

兄弟で客を奪い合っており、1つの店で2つのオペレーションがある。

兄のラーメンは味の評価が高く、写真を見る感じ盛り付けもキレイなので、丁寧に作っているのだろう。その分提供速度が遅くなっている。

弟のラーメンは評価が低いが、それを埋めるようにチャーシューやお茶などがサービスされるし、盛り付けが雑だからすぐに出てくるようだ。

「差別された!」と感じている人は、兄に案内を受けた人だ。実は美味しい(と言われている)方のラーメンを食べているが、同じ店なのでそのことには気づきにくいのだろう。

多分これを知らずに行って兄側に案内されたら、僕らも同様に少しモヤモヤした気持ちが残るかもしれない。だがもうトリセツを読んだ。対策が打てる。対策が出来るなら怖くないし、望まぬ来店じゃない。

別の店にするという選択肢は、気づけば無くなっていた。

対策をしよう

店の向かいの日陰で作戦会議をした。

従業員は2チーム4名のみ。母・兄チームと、弟・ダイ(便宜上こう呼びます)チームだ。

店の外観は言われなきゃラーメン屋だとはわからないくらいで、看板もなく扉も1人が通れるくらいの幅しかない。

中の様子はよく見えないが、母と弟が案内をする描写はどのレビューにも無いので、おそらく店内に入ったら兄かダイに案内されるのだろう。その時点で運命が分岐する。

僕らは旅行の締めで来ており、余計なストレスを受けたくないのでどちらに転んだとしてもなるべく平和に過ごせる方法を考えた。

■兄だった場合
・美味しい可能性が高い
・チャーシューワンタンメンを頼む。損じゃない。これがスタンダード。
・弟にお茶についてなんか言われないように、ウーロン茶を普通に注文する。損じゃない。
・他のお客のラーメンを見ないようにする
・母がキレてきたら諦める(母が厨房から出てきてキレるとの記述より)
■ダイだった場合
・美味しい可能性が低い
・必ずワンタンメンを頼む(ワンタンメン以外を頼むと機嫌が悪くなるとの記述から)
・お茶は頼まなくていい。弟は独自で特殊なお茶を仕入れてそれを自分の客にだけ無償提供してるらしい。
・サービスは笑顔で受ける
・意見を求められたら「美味しいです」と言う
・悪口が始まったら諦める
■共通
・スマホを絶対に出さない

これを2人で頭に叩き込んで、入口へ向かう。なんでラーメン屋入るのににこんなこと考えなくちゃいけないんだ。脈絡なく母が厨房から出てきてキレるってなんなんだ、ミュージカルかよ。

「小柄で大声の店員がいたらどうする?」
「いない。レビューにいなかったそんな奴」

いざ入店

作戦なんて考えたりしたからか、店に入るのは緊張した。初めてラーメン二郎に行った日より緊張した。

店外には携帯禁止の張り紙が大きく張られていて、緊張感を高めてくれる。

どっちになるんだろう。店員の容姿がわからないので、声と体格で判断するしかない。大声が弟チーム、小柄だと兄チーム。どっちだ。

いざ入店。

「いらっしゃいませ~」

メガネの店員が普通の声量で案内してくれた。



どっちだ……?

正直この段階ではわからなかった。小柄ではないので、ダイかな……?メガネのイメージなかったな……。ただ一応他の従業員の姿を確認してからでないと確証は……

頭をフル回転させながら店員に付いて店内を歩き、厨房を見渡す。3人の人影が見えるが、厨房が広く暗く分かりづらい。その瞬間、メガネの店員がこう言った。



「おすすめはワンタンメンです」




ダイだ!!!

判明したことが嬉しかった。まだ席にもついてないしメニューも見てないのに、嬉しすぎて即座に「ではそれを2つ」と初見とは思えない対応をしてしまった。

注文が通ってすぐに、厨房から大声があがった。


「ありがとねー!!チャーシュー、サービスしとくからね!!!」



弟だ!

もはや俺のテンションはぶち上がっていた。進研ゼミでやったところだ!のごとく予習がすごく効いている。すごく楽しい。

着席し、厨房を見る。母は食材の仕込みをしながらこちらに一瞥を向け、兄は不機嫌そうにこちらをチラッチラ見ていた。とても客に向ける目じゃないと感じたが、それで合っているのだ。今日の僕らは入店して5秒で、この2人にとっての客ではなくなったのだから。

ジョッキでやってきた謎のお茶を飲みながら見渡す。店内はかなり広く、お座敷もある。かつての繁盛店を思わせる広さに少し寂しくなった。空調が一切効いておらず、店内は信じられないほど暑かったし、扉も開いていることから3匹くらい虫がいた。

店内には先客の痩せたおじいさんが1人だけいて、お茶を飲んでいた。なるほど、兄は弟チームに2連続で客を取られてイラついているのかな。

あとダイが僕らの後ろで普通にラーメンを食べていた。なんで?

「はいお待たせー!サービスしといたよー!」

先客のおじいさんに弟からラーメンが提供されていた。見ると山盛りのチャーシューが乗っている。ガリガリのおじいさんにあれを完食出来るイメージが全然ないが、サービスなのだろう。おじいさんは遠目からでもわかるくらい苦笑いしていた。


「だから何百回も言ってんだろうが!!」

突然だった。すごく突然だった。弟の怒号が店内に響いた。厨房を見ると母が怒鳴られていた。何を何百回言っていたのかはわからないが、こういうイベントを実体験することで「本当にこの場所に来てるんだ」と実感できる。


しばらく厨房を見ていたが、僕らのラーメンが完成した様子だった。カウンター近くには兄がいるが、一切気に留めていない様子でつまんなそうにしていた。

気づいたダイがすごいダッシュでカウンターに向かい、僕らのラーメンを持ってきてくれた。通常ありえない光景だ。あとダイ、めっちゃ早い。

「はいお待たせー!チャーシュー足りてる?」

厨房から弟の声が響く。すごく声が大きい。ワンタンメンを注文してチャーシューの量が適正か聞かれることは今後の人生でも無いだろう。

あ、はいと曖昧な返事をして食べ始めた。

味についてだが、拍子抜け、というわけではないけど普通においしかった。友達もうまいうまいと食べていた。

量は多く味も濃いが、普通に食べ終えた。ちなみに食べている時は視線や空気感からめちゃくちゃ居心地が悪く、スマホも見れないのでほぼ無言でプレッシャーを感じつつ食べた。

食の好みはあるだろうけど、少なくとも酷評されるような味ではなかったと思う。後にレビューを振り返ったが、昔と比べて味に対するディスりは少なくなっていた。兄ラーメンはずっと評価が高いが、弟ラーメンも進化しているのかもしれない。運がいい日だった可能性もあるが。

席を立つと、ダイが超スピードで駆け寄ってきて「ワンタンメン1000円です」と伝えてきた。お金をその場でダイに渡して会計完了だ。こんな町のラーメン屋でテーブル会計なわけがないので、おそらく本当に同じ店内で売上が別なのだろう。

「ありがとねー!チャーシュー足りた?」

店を出るときに弟さんから声がかかる。「もうお腹いっぱいです笑」と返したら笑顔で「また来てね!」と。

ダイの対応はスピーディーで、弟さんはすごく気さくな感じ。2人の接客はお世辞抜きで普通に気持ち良かった。兄チームの方を食べていたら、こうはなっていなかったのだろうけれど。

ちなみに先客のおじいさんはめちゃくちゃ残してました。

どうしてこうなった

いつからこの状態なんだろうとレビューを遡ったが、5年前のレビューから「自分だけお茶がない!」とか書いてあった。5年もこんなことしてんの?

この店について調べていくと、どうやら昔は本当に名店で、この地域の名前を冠するラーメンの発祥の店とも呼ばれていた。数年前に先代が他界し、気づけば今のような状態になっていたのだとか。

そして先代が生きている時は母と兄と先代の3人でお店をやっていたらしい。途中で弟が来て何かが変わったのだろう。元は人気店なわけだし跡継ぎとか遺産とか……これは想像の域を出ないしやめておこうか。

おわり

なんか美味しんぼに似た話があったなと調べて、持ってきた。俺はこれを書くために途中下車してネットカフェに来ているから。

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美味しんぼ2巻 第8話 中華そばの命

ラーメンの名店で先代から店を受け継いだ兄弟が喧嘩し、弟は真向かいに同じ店名で店を開き、どちらも本家を名乗る。
麺を打つのが上手いが、茹でるのが下手な兄。茹でるのは上手だが、麺を打つのが下手な弟。
それぞれの店は評価されないが、2人の力を合わせて作ったラーメンは大きく評価されるハッピーエンド。そんな話。


ここもそんな感じになったらいいなと思った。お母さんが仕込みして、お兄さんがこだわってラーメン作って、弟がお茶仕入れて気持ちいい接客して、ダイが素早く動いてさ。なんでもいいんだけど、この店の今後が気になって仕方なくなった。

そうならなくても、対策して行ったら全然楽しかったし今回の旅行で1番の思い出になったな。

とりあえず次は、兄チームのラーメンを食べてみるね。



※特定で営業妨害になったりすることは本意ではないので、レビューの引用を含めリンクや地名・店名を伏せています。
※伏せたとはいえ思ったよりツイートがバズってしまって僕が悪いんですが、行ってもないのに誹謗中傷の口コミをしたりとかは本当にやめましょ……!
※お店を下げる意図は全くありません。関係者の方でご不快に思われた箇所は削除・修正させていただきます。

【お詫び】
最後の方に掲載したDMに関して、事実とされる内容を何種類かいただいております。どちらの真偽もわからないのですが、不要な混乱を招くわけにいかず該当のくだりは削除させて頂きました。

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マキヤ

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