見出し画像

【Webセミナーレポート③】ACPのポイントとコツ ~看護師として自信をもって患者に接するために~


第3部 あなたの疑問にズバリ答えます!(対談)



第3部では、新人から中堅の看護師さん、またがん医療に携わるナースの方に向けて、実践に役立つポイントについて対談形式でお話いただきました。


●ACP介入のタイミングのヒント


福井先生:ACPを導入するタイミングが難しいという声をよく聞きます。特にきっかけとなるような言葉や、どんなふうにナースが質問を投げかけてご意向を引き出すかというあたりが難しいと思いますが、それについてのポイントはあるでしょうか。

部川先生:患者さんから質問されて答えられなかったらどうしよう、なんて声をかけたらいいだろうかという悩みをもつ看護師さんが多いと思います。意思決定をする場面の多くは、医師から病状やこれからの治療について説明の後かと思います。患者さんがどう理解したかということよりも、その説明を聞いて何を感じたか、今、どんな気持ちかということをお伺いするのがACPのきっかけになるのではないでしょうか。感情を共有し寄り添っていくことが看護師にできる最大のACPのスタートのきっかけかと思います。ぜひ皆さん心がけていただけたらなと思います。

福井先生:感情を共有するためには、パートナーとして常に患者さんに関心を払って関わる。そこからの自然な対話の中でACPを始め、差し迫って決めなければいけないことも決めていくことになるのでしょうか。

部川先生:そうですね。何気ない会話のようなものから、どんなふうに生活してきた方なのか、家族構成や、頼りにしている人などを把握しておく。そのうえで、先生(医師)の説明をどんなふうに感じましたか、今のお気持ちを教えていただけますかという投げかけからスタートするのがコツかなと思います。

福井先生:看護で一番大切と言われる傾聴、共感ですね。
 

●看護師に自信がなく、重い話を避けてしまう傾向への対処法


福井先生:特に新人や中堅のナースの方で、重い話が苦手でつい避けてしまう、患者さんに質問されて答えられなかったらどうしようという不安があるというのが、ACPの一番難しいところになるのではないかというふうに思います。どう心掛けてどんなふうに取り組んでいったらいいかについて教えていただけますか。

部川先生:これから最期に向かってどこでどんな風に過ごしたいかというようなお話をするときは、私でもハードルが高いなと感じますので、ましてや新人や中堅の看護師さんたちには難しいのかなというふうに思います。そんなとき、私たちは何のために看護をしているのかという原点に立ち返っていただきたいなと思います。
やはり私たち看護師は,患者さんのQOLを向上させるということが非常に大事になってきます。
QOLを向上させるためには、患者さんのご意向を伺い、環境を整える必要があります。
時には患者さんに「そんなことをおっしゃらないでください」といったことを言われることもありますが、「今じゃないと決める機会を逃しますよ」とお伝えしています。
皆さんには、ぜひ患者さんに向き合う勇気を持っていただき、難しいと感じたら先輩に代わってもらったりしながら患者さんと向き合ってほしいです。
向き合うことで、重い話を避けずとも、自然に話が進んでいくときもあります。
意外と聞いてほしかった、わかってほしかったという思いを持っている方もたくさんいらっしゃいます。
怒られることもあるかもしれない、失敗もあるかもしれませんけれども、それもまた経験です。私は何度もあります。恐れずに患者さんと向き合うことが大切なのかなと思います。

福井先生:ナースという医療専門職だからこその役割・強みがあると思います。
失敗してもまた周りの病棟ナースや外来ナースの力を借りたり、高度実践の方や師長さんたちの力を借りたりして、チームでACPを進めていくという考え方が大切ですね。「最善を一緒に探していくために、ナースとして患者さんであるあなたのことを知りたい」という1対1のコミュニケーションから始めると、少し入りやすくなりますね。

部川先生:私たち看護師は個人プレーではありません。チームで助け合って、少しずつ聞きづらいことを聞いたり、日を変えて別の人が聞くというアプローチもできる職種です。
みんなで支え合って助け合ってチームでやっていくというのが一番いいと思います。

(以上対談内容を一部抜粋)

参考図書のご案内

『明日から役立つ 疾患・場面別アドバンス・ケア・プランニング 事例と対話で読み解く意思決定支援』
編集: 福井小紀子
ページ数: 184
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524228348/