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放射線治療を受けることでの将来の出産リスクの増加について

小児がんの治療では、放射線を用いた治療が行われることがあります。
卵巣への直接的な照射がない場合でも、子宮が照射視野に入ることがあります。

放射線が子宮に照射されることでどのようなリスクがあるのでしょうか。

小児がんサバイバーの方の追跡調査をした論文を紹介します。

小児がんサバイバーの方の妊娠転帰

Laurence E X M van de Loo et al.Fertil Steril . 2019 Feb;111(2):372-380.

Fertility and Sterilityというアメリカの雑誌に掲載された論文を紹介します。
この論文では、小児がんに対する腹部骨盤放射線療法が子宮機能を損ない、妊娠合併症および有害な妊娠転帰のリスクを増加させるかどうかを評価することを目的とした調査の結果を紹介しています。

放射線照射を受けた方と、同年代の方々をコントロール群として比較して、
調査したという内容です。

この手の研究は時間がとてもかかりますし、その上比較検討も難しいものが多いのですが、素晴らしい内容だと思います。

結果をダイレクトに見てみると、以下のような結果です。
放射線治療を受けた方で、以下のリスクが増加することがわかっています。

・子宮の容積の低下
・妊娠合併症
・早産
・低出生体重児

一つ驚くべきこととして、放射線治療を受けていない、小児がんサバイバーの方でも子宮容積の低下が見られるとのことでした。
ここについては、追加の調査が待たれます。

妊娠ができなくなる、というリスクではないにしても、
忘れてはならないのは、「出産は命がけ」ということです。

そこに対して、小児がんサバイバーの方々はハイリスクになるということを認識しておく必要があります。

ただ、これは小児がんの方々ですので、まずはそのご両親がこのことを知っていなければいけません。

そう思うと、こうした情報提供は本当に難しいものだなぁとつくづく思います。

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