原因不明不妊患者に対する子宮内膜スクラッチの検討
「不妊症の検査を各種したけれども、決定的な不妊原因が見つからない」という原因不明不妊は不妊患者さんの15-30%程度いるとされています。
そうした患者さんに対しては、一般的には
タイミング→人工授精→体外受精
というステップアップ治療が検討されます。
今回の研究では、そうした患者さんに先進医療にも登録されている
「子宮内膜スクラッチ」を実施した場合に、妊娠率を向上させるような効果があるのか、という点を検討した論文を紹介します。
過去の子宮内膜スクラッチに関する記載は以下を確認ください。
(ネガティブめに見えるかもしれませんが、そういうスタンスではなく、単に現在出てきている論文を紹介しているだけです)
今回はオーストラリアからの報告ですね。
原因不明不妊症と診断された患者さんのうち、体外受精や人工授精などの治療をしないという意向の患者さん、合計220組の患者さんをランダムに、片方は子宮内膜をスクラッチし、片方には同じように機器を入れているように見せて実はスクラッチをしない(プラセボ群)というふうにして、2つのグループに分けていきます。(これ日本ではできなさそうな研究ですね)
そしてその後、タイミングをとっていただき、妊娠率や出産率などを追跡的に調査しています。
結果はというと、子宮内膜スクラッチ群で9%(10/113人の女性)、プラセボ群で7%(7/107人の女性)でした(調整OR、1.39; 95%CI、0.50–4.03)。妊娠率、妊娠継続率、出生率、流産率などにグループ間で差はありませんでした。
どう捉えるかがとてもむずかしいとは思いますが、まず悪影響という点は少ないと思います。(痛みのスコアが出ていないのでその点はわからないのですが)
ただ、スクラッチをすることによる加算的な効果が見られませんので、
現時点では、原因不明不妊というだけでスクラッチを行うというのは、適応としては違うのかと思われます。
適切な対象に適切な医療を行うというのは、思っているよりもとてもむずかしいことですね。
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