子宮内膜スクラッチ法について
現在、先進医療としても承認されている子宮内膜スクラッチ法について紹介ます。
この検査は、着床率を高めようとすることを目的としています。
子宮内膜スクラッチとは
内膜スクラッチとは、着床の前にわざと子宮内膜に小さな傷をつける方法です。
傷と聞くと、だめじゃない?と思うかもしれませんが、むしろその逆のようで、傷ついた組織は修復しようと働きます。その際に、インターロイキンなどと呼ばれるサイトカイン(主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質)を分泌します。
胚が着床する環境でも同じようにサイトカインが分泌され、着床の促進と免疫応答の正常化が起こることが報告されており、これまで多くの研究報告がされています。
子宮内膜スクラッチに関する論文(肯定的)
この研究は、ランダム化比較試験という、研究者の意思などが反映されにくいデザインの研究ですので、研究成果には信頼がおけると考えられています。
これまで体外受精を行うもうまくいかなかった人たちを対象に、卵巣刺激前の黄体期と呼ばれる時期に子宮内膜スクラッチ(4方向を1回ずつ)を行って、その後の妊娠率に影響を与えているかどうかを調査したというものです。
子宮内膜スクラッチを行ったのは151例(介入群)、行わなかったのは153例ありました(非介入群)。
介入群と非介入群とを比較すると、全体では有効性は確認されませんでした。
ただ、体外受精を行うもうまくいかなかった人、というのをより深く解析していくと、3回以上実施したのにうまくいかなかった人、というグループがあり、そのグループで見ていくと、
介入群で1.7倍の妊娠率が確認されたと報告しています。
(介入群53.6% vs. 非介入群31.1%)
また、妊娠中の合併症のリスクや出生後の児の異常の頻度は両群では差がないことも報告されています。
要約すると、この3回以上の体外受精不成功の方々にとって、有効性があるのではないか、というのがこの論文の結論です。
技術には必ず益と害があります。
益はこの場合妊娠率がどれだけ高まるかということで、
害は、これを行うことによる合併症などのリスク、費用などです。
この論文だけを見れば、反復して体外受精不成功を経験されている方にとって、実施意義のある医療ではないかと考えられますね。
ただし、先進医療ということは必ずしもそのメリットが確立されていない部分もあるということで、課題があります。
次回、そちらも紹介していきたいと思います。
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