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PRP療法 PFC-FDとの違い

PRP療法をご存知でしょうか。

PRPとは

手や指、足などを怪我してしまったときに、出血が止まり、かさぶたができ、やがて治っていくという経験をされたことがあると思います。この一連の治癒の過程に大きく関わっているのが、「血小板」です。血小板から組織の修復を促進する物質(成長因子)が供給され、傷んだ組織を元通りに直そう、治そうとする働きをしています。

自身の血液を必要量とり、特殊な技術を用いて、血小板が多く含まれる部分のみを抽出したものが、多血小板血漿 PRP(Platelet-Rich Plasma)です。

PRP療法は、私たちに本来備わっている「治る力」をPRPによって高め、治癒を目指す再生医療です。

現在、整形外科の分野でスポーツによる肘の痛み、腱や筋肉の損傷などに対する新しい治療法として注目されています。

田中将大選手や、大谷翔平選手も同治療をされたことで、整形外科的なイメージはもちやすいかもしれません。
また、美容の領域ではとても頻繁に行われていますし、海外では薄毛の治療(AGA)でも導入が進んでいます。

自己血液を用いるため、免疫的な副作用がないと考えられていますので、様々な分野で注目を集めています。

不妊治療への応用も進んでおり、血小板は「細胞の成長を促す物質」や「免疫に関わる物質」を多く含むため、子宮内に注入する事で子宮内膜が厚くなり、受精卵が着床しやすくなると考えられている他、卵巣機能の回復を補助する治療法になる可能性が示唆されています。
詳細の治療については、今後紹介していきたいと思います。

さらに、PRPから成長因子だけを抽出しフリーズドライすることで、同じ血液量で比較するとPRPの2倍の成長因子が含まれていると言われるのが、
自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD:platelet-derived factor concentrate - freeze dry)です。

実際のPRP療法(子宮内注入)のすすめ方

PRP調製のために、まず採血を20 mL行い、遠心分離機という機械で血液成分の中の必要な物を分離し、PRPが完成します。
その後、PRP(約0.5 mL)を子宮内へ注入します。この治療では、1回の移植周期の間に2回PRPの注入を行います。

※1回目の投与は月経10日目前後(8-11日目)になります。
※2回目の投与は月経12日目前後(11-14日目)になりますが、連日投与は避けることが注意されています。

PFC-FDの子宮内注入も理論的には同じことを実施しますが、PFC-FDの場合は一度に2回分の採血を行って、PFCを作製する必要があるため、1回でOKみたいな使い方はできません。
ただ、保存期間が6ヶ月常温ですので、2回の移植に用いることができます。

子宮内にPRPを注入し、妊娠反応が得られなければ、月経が来ます。そうすれば子宮内膜環境はリセットされてしまうので、普通に考えれば子宮内環境はもとの状態に戻ると考えられますが、PRPの効果が持続するという主張もあり、定かではありません。

Q:PRPとPFCは違うんでしょ?

よくこの質問をいただきますが、違いはさほどないと僕は解釈しています。
確かに、PFCの方が、PRPの2倍の成長因子が含まれていると言われますが、
2倍の成長因子が含まれているから、効果が2倍なのか、は研究報告がありません。特に不妊治療においては、聞いたこともないと思います。
なので、PRPの効果だけで十分な可能性もあることから、
・PFCの方が効果が高くて良い治療
・PRPの方が効果が低くて悪い治療

という図式での比較はしていません。

ですが、PFC-FDの方が導入が進んでいるのが実情です。それはなぜでしょうか。

再生医療に該当するか

結論から言えば、現在の法規制上だと、PRPは再生医療に該当し、PFC-FDはは該当しません。再生医療に該当する場合には、施設に求められる要件が多く、管理も大変です。定期的な監査や研修も受ける必要があります。
同等の効果が期待される中で、管理コストがPRPはとても高いのが実際です。

もちろん、今後の規制の変化などで変わる可能性がありますが、現時点ではこのように感じます。

運用上の煩わしさ

PRPは注入するその日に採血をする必要があります。
メーカーから購入した有効期限のあるキットを用いて、採血を行い、PRPを作製して注入します。

PFCーFDは、採血して、それを検査会社に郵送して、3週間後に返送されてきます。

ここでの違いは、即時性という意味ではPRPに分があります。
でもここは表裏一体で、PFC-FDは6ヶ月保管ができます。
そのため1回のPFC作製で、複数回の治療に用いることもできるのです。

加えて、運営側での感じるポイントとしては、
・キットの有効期限があること=廃棄リスクがある
・作製が院内でやるかどうか

の点が大きいです。

廃棄リスクがあるものに対してはやや消極的になりますし、
作製が院内であるのも、ミスを起こす場合のリスクにつながる可能性があります。

同じ効果が期待されるのであれば、という前提でいくと、PFC-FDに軍配が上がります。

Q:PRPには何が混ざってるの?

とても多く受ける質問ですが、結論から言うと何も混ざっていません。
PFC-FDも同様です。

Q:リスクが高いんでしょ?

リスクはあります。PRPを子宮内に注入するのであれば、注入する際の擦過などのリスクですが、極めて軽微なリスクです。
卵巣注入の場合には、採卵と同じリスク(卵巣を穿刺する)と考えると良いです。

理論的にはPRPは自己血液なので、それを体内に戻すリスクはないと考えられます。

ただ、長期的に見れば、まだ十分な検討はされていないので、注意は必要です。

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