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採卵数を予測するための指標

不妊治療の中で、身体的な負担も大きいと考えられるのが、採卵ではないかと思います。

年齢あたりで、一人の妊娠に必要とされる卵子の数というのは、ある程度統計的にわかっているもので、その数を一度で取れれば採卵1回で済みますし、刺激を弱めて少ない個数にすれば、その分採卵回数は多くなっていきます。

世界的には調節卵巣刺激(けっこうしっかり刺激する)が標準とされていますが、同じ患者さんを相手にしても、今回は5個しか取れない、その前は12個取れたのに、なんてことが起こりえます。

そのため、患者さんにとってだいたい予測できる採卵個数は重要だと思うのですが、この予測を行う上で必要な指標とされているのが、AMHとAFCです。

AMH:アンチミュラーリアンホルモン

前胞状卵胞と小胞状卵胞から出ているホルモンで、その患者さんに残されている潜在的な卵子の数を予測すると思っていただくと良いと思います。

AFC:胞状卵胞数

ざっくり言えば、ある程度育ってきている卵子の数をエコーで見ています。

卵巣刺激を行う時にこれらの指標を用いて予測しますが、どちらを考えるのが良いのかということについては、結論が出ていません。

この2つの指標を比較した論文があります。

Reliability of AMH and AFC measurements and their correlation: a large multicenter study.
J Assist Reprod Genet. 2022 Mar 3.Philippe Arvis et al.

これはフランスで行われた大規模な後ろ向き研究です。フランスの12施設が参加しているもので、15,219人の患者から合計25,854周期の体外受精周期のデータを得て解析しています。

この研究では、いくつかのことがわかり、わからないかったこともあります。要約すると、この研究ではAMHの方が再現性が高い傾向があることがわかり、一方でプアレスポンダーの方にとってはいずれも確かな再現性を得るに至っていないとのこと。また、連続して採卵を行うような方にとっては、AFCの方が遥かに高い再現性を示したとあります。

この論文でどちらの指標が良いのか、それに決着がついたわけではありません。

実際に、同じ患者さんが連続して、同じ刺激法で採卵をしても違う結果になることは、頻繁に起こりうることだと思います。現時点では、これらの数値やホルモンの数値を総合的に見ながら、患者さんの卵胞の発育状況をモニタリングして進めていくのがベストなのではないかと考えられます。

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