GANA
「たーまやー!」 一際大きな花火が上がり、健吾が隣で大声を上げた。 「今のむっちゃでかかったなー!」 ほら、めちゃくちゃきれいな写真が撮れた!そう言って、スマホの画面を見せてくる。 確かにきれいに撮れている、けどー 「健吾の学校明日テストだろ?こんなとこにいていいの?」 今日だって、一足先にテストが終わったぼくのところに「勉強教えてくれー」と健吾が家に押しかけてきたのが夕方。それからほとんど勉強しないうちに、「やっぱ花火行こ!」と引っ張ってこられてここにいる。
「河合さん、来客室にコーヒーお願い」 来客が来て、ぼくの隣のデスクに座る河合さんに、社長から指示が出た。 隣のぼくにようやく聞こえるくらいのため息をついて、河合さんが立ち上がる。 「今時女性にお茶くみをさせるなんて時代遅れもいいところだわ」 ぼくと同期だけれど、ぼくより仕事ができる河合さんは以前ひとりごとのようにそう呟いていた。 実際河合さんはコーヒーを入れるのは好きではないみたいだ。適当に粉(来客用の社長オリジナルブレンドらしい)を入れ、沸騰したままのお湯をどはど
「部長、ぼく、会社辞めます」 そう告げた時、部長は持っていたコップを落とし、盛大にコーヒーをぶち撒いた。 「五条さん、おれ、今日会社に辞めるって言ってきました」 二人での夕食時、五条さんに報告する。 「お、ついに?会社はなんて言ってた?」 コーヒーまみれになったデスクとおれを交互に見ながら、「え」「ちょっと」「拭くもの」「谷口」と単語だけ羅列した部長が落ち着いてから、二人で話をした。 「会社はおれに期待しているからぜひ残って欲しい。おれにとっても今辞めるのはもったいないと思