50作目のテレビ化を機会に、BSテレ東で一昨年より毎週土曜日に映画「男はつらいよ」を第一作から作品順に放映している。すでに一巡し、現在二巡目も大詰めを迎えている。
この2年ですべての作品を観ることになったが、山田監督が一貫して描いてきたのは人間の本質である。寅さんや取り巻くとらやの空間はその媒介でしかない。
「寅さん」というキャラクターが独り歩きし、山田監督も(昔は知らないが、少なくとも今は)それを許容し、「寅さんが生きていたら今の時代をどう思うか」的なピントが外れたテーマのインタビューにも紳士的に対応をしているが、人間はいつの時代もその環境に合わせ左顧右眄に生きているだけの話であり、100年前にも、そして今の時代にも寅さんは存在している。
極めて不快な今の朝ドラも含め、寅さんをサンプルにして作られたキャラクターが失敗する要因は、時代々々の「人間」をすくい取ることもせず、山田作品の「寅さん」だけ拝借しようしているからだ、ということにいい加減製作者は気がつくべきであろう。

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