見出し画像

【#8】漢字の選び方

前回は、文章の適正な長さについてお話ししました。なぜ「適正」に注意するかといえば、文章は読みやすくわかりやすいことが大切だからです。
今回も「わかりやすさ」に関係があるお話を。

その漢字、使うか使わないか

どんな漢字を使うか。これにこだわる人は多いです。漢字をどう読ませるかも、書き手にとって重要ですよね。例えば、
・「思う」か「想う」か。
・「溜め息」か「溜息」か「嘆息」か。
・「怒る」か「叱る」か「憤る」か。
・「私」か「わたし」か「わたくし」か。
・「薔薇」か「バラ」か「ばら」か。

そもそも、「推敲」という言葉は詩作をする時、「推(お)す」か「敲(たた)く」か迷った詩人についての故事から来ている暗いですから、書くことが好きで、読むことが好きなあなたなら、使う漢字にこだわりを持つのは当然でしょう。あなたの書いたものの世界観が、そこに現れているとも言えます。
漢字に雰囲気を持たせるために、敢えて旧字を使用したりすることもありますね。

でも、それは「書き手」の思いであって、時にそれは、「読み手」の求めるものとずれてしまうことがあることを忘れないでください。

難しい漢字は読み手を限定します。あなたが伝えたい内容が届く前に、読み手は「漢字が読めない」というハードルの前で背を向けてしまうかもしれません。
日ごろあまり読まないような漢字については、「本当にその漢字を使ったほうがよいか」もう一度、考えてみてください。

「このくらい、読めて当然」という考え方もあるでしょう。
逆に「このくらい、漢字にしないとこっちがバカにされる」という気持ちもはたらくかもしれません。

大切なのは、「誰に読ませる文章か」を考えることです。
その文章を読んでほしい人は、その漢字をやすやす読める人ですか?

「読めてほしい」漢字なら、ふりがなをふりましょう。
「読めない可能性がある」漢字なら、ひらがなで書いてみませんか?

ひらがなで書くことを「ひらく」といいます。
「漢字をひらく」は「心をひらく」に通じると思います。
私も漢字にこだわる人間ですが、ある時、その「こだわり」がふっと消える時がありました。私の気持ちがわかってもらえれば、その形にこだわる必要はない。一人でも多くの人に伝わっていく形を考えよう、と。

ただ、その漢字でなければならない理由があれば、そのままにしましょう
書き手はあなたです。あなたの気持ちが一番大切。

あなたがその漢字にこだわる理由をとことん考えましょう。そして読み手のことを考える手間をいとわないで。「その漢字でなければならない」場合、初出にふりがなをふることも視野に入れるなど、他に工夫の余地はないでしょうか。どこかに注釈を入れるという考え方もありますね。

最後に。
漢字を使うときは、誤字ではないか、使い方が間違っていないか、それだけはきちんと確認しておきましょう。

1冊の本を書くためには長い時間が必要です。他の単発の仕事を入れずに頑張ることも考えなければなりません。よろしければ、サポートをお願いいたします。