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衆院選の政党公約(教育分野)を比較してみる

 いよいよ明日に投開票期日が迫った衆院選。既に期日前投票を済ませている人もいるかもしれない。


 先日友人と「各党の教育政策比較をしてみよう」となってしてみたら結構面白かったので、記事として書いてみようと思う。


 自分の周りには教員や教育に関わる仕事を生業にしている友人も多く、自分的には経済対策や外交よりもある種注目しているポイントなのだけれど、メディアで取り上げられる教育政策といえば「幼児教育無償化」「給食無償化」「高等教育無償化」「高校授業料無償化」などいわゆる"ばらまき"(あるいは”分配”)に関する情報ばかりで、細かな部分がかなり見えにくい。


 そんな背景もあって、実際の各政党の公約を引用しながら、各党の特徴やどういうことに力を入れようとしているのかを探ってみたらめちゃめちゃ大変だった


 今回は障害者福祉分野を記事にしているlessorさんのはてなブログを参考に、網羅性を重視して記載しているのでボリュームがかなり多く(47,000字程度)なってしまったので、それぞれの政党公約で記事を分けて記載している。


 リンクがあちこちに繋がって煩雑になってしまっている点に関してはご容赦いただきたい。


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自民党

第49回衆議院選挙公約

 今回の選挙戦がコロナ対策や経済対策、経済支援にかなり偏っていることや、自民党は総裁選直後ということもあってか、教育政策に関しては具体的な数値等に言及した公約はあまり見られないという特徴がある。


 ”現状が改善されることはあまりないだろうし、改悪もそれほど多くならないのではないか(無いとは言っていない)”というのが率直な感想で、「GIGAスクール構想によるICT環境整備で教育にはたくさんお金かけてあげたでしょう。┐(´д`)┌ヤレヤレ」という見解が透けて見える。


 とはいえ、リカレント教育やSTEAM教育などトピックスはそつなく入れている(とりあえず入れている)ので、先進的な取り組みをしている学校・大学等には恩恵があるかもしれない(ないかもしれない)。


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公明党

2021衆院選マニュフェスト政策集

 自民党に比べて具体的な数値や期限がやや目立ち、分量もかなり多い印象を受ける一方で、「~をめざします。」「~の検討を進めます。」といった表現がどれだけ本気なのかをしっかりとウォッチする必要性があると感じる。


 教育ICTの分野に関しては、「Wi-Fiルーターの貸与」や「デイジー教科書等の音声教材の製作支援を拡充」など、かなり現状の課題を踏まえた公約になっており、夜間中学校や外国籍児童に対する日本語教育、SSW(スクールソーシャルワーカー)の配置など、細かなところへの目配りもしっかりされているように感じた。


一方で、「女子中高生が理系を選択しやすいように」といった文言などは''誰のための政策''なんだろうと首を傾げてしまう。まだその人らしさにフォーカスを当てられる段階ではないようだ。


 給特法の見直しについても(やや控えめながらも)言及しており、自民党への発言力がもう少し大きくなれば、教職員の働き方改革に結びつかないでもないのではないかと思わないでもない。


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立憲民主党

政策集2021

 立憲もかなりきめ細やかで具体的な公約が並ぶ。実現するにはかなりの予算が必要となるが、目指したい方向性としてはかなり理解できる。


 教育の保証を学校だけが行うのではなく地域全体で支えていくという姿勢が見て取れる。地域と連携した学習の推進、課題のある子どもに対する学習機会の保証や居場所の提供、あるいは学校・大学内のリソースを地域住民にも利用可能にするような公約もある。


 特別支援教育における取り組みなどは共産党との歩み寄りの中で出てきた公約のようにも見て取れる(実際、2019年の参議院選の公約時点にあったのかはよく分からないけれど)。


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日本共産党

56、教育 2021総選挙/各分野政策

 公約とは何たるかを考えさせられる内容で、自民・公明・立憲を合わせた文字数より日本共産党の公約の文字数の方が多い。


 「「従軍慰安婦」など教科書記述への政府の不当な介入をやめます。」や「憲法19条(思想、良心、内心の自由)に違反する、「日の丸・君が代」の強制に反対します。」など日本共産党ならではの公約が並ぶ一方で、ブラック校則の見直しにまで言及しており、その網羅性の高さ、国民の声を一つ一つ拾って公約に反映している様子が伺える。


 とはいえ網羅性が高ければ良い公約というわけでもなく、この党に政権を任せたらどこから手を付けてくれるのか、財源はどこから湧いてくるのか、矛盾が発生した時に何を優先するのかといった疑問点に対する回答が明確になっていると、政策比較もしやすいのだけれど。


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日本維新の会

日本維新の会政策提言

 教育の完全無償化を憲法上に明記することや教育バウチャー制度を導入・普及させることなど、大阪での実績を活かした”維新色”がかなり目立つ内容になっている。

 小中学校で「ディベート」を必修にした結果、どのようにして「国際社会で活躍できるスキル」が身につくかはよく分からない。


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国民民主党

政策各論
政策パンフレット

(申し訳ありません、2019年の政策を引用していたので、修正しました。)

 2019年の公約や立憲民主党の公約と比べると、かなり見劣りしてしまうのが率直な意見である。

 教育国債の概念に関しては斬新で新しい考えとして一定の評価がある一方で、それをじゃあどのように使うのかが見えてこないという課題があり、他の野党が「その財源はどこから?」という課題を抱えているのに対し真逆の課題があるような印象を受ける。

 逆に言えば、どこかの党と交われば、その活路が開けるかもしれない。


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社民党

2021年重点政策
基本政策

 今回の選挙で党の存続が掛かっているとも目されている社民党だが、教育分野に関する記述はかなり乏しい。

 1学級20人以下という、れいわと並んで最も攻めた定員を掲げている。


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れいわ新選組

れいわ子ども・教育政策

 偏ってはいるがかなり特別支援教育に振り切った形の公約を打ち出している。特別支援学校から地域の学校の普通学級へ移行する大胆なインクルーシブ教育(フルインクルーシブ教育)への転換という基本方針がある。

 「奨学金徳政令」というキャッチーなフレーズが耳目を集めているが、果たして。。。


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NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で

衆議院選挙公約

 特にコメントすることは無いかと思いきや、諸派党構想を取るNHK党はワンイシュー政党である「ブラック校則をぶっ潰す党」通称ブラック党としての公約があったようで、せっかくなので記載している。

 ブラック校則は確かにぶっ潰してほしい。


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 各党の公約を色々調べていく中で、また比較していく中で、どんどん沼にはまっていく感覚というか、正直よく分からんという感覚が強くなっていった。


 政治についてもっと普段から勉強しておけばよかったと、夏休みの最終日になって焦るのび太君のような気持ちになっている。


 一方で、各党の色がはっきり出ているとそこに面白さを感じる自分もいる。大変だったけど政策比較をやってみてよかった、と心の底から思う。


 とは言いつつも、公約だけで測れない”隠しステータス”があることも十分に自覚しなければならないとも思っている。


 すなわち「どれだけその政党は自分達が掲げた公約を守ってくれるか」である。こればっかりは付け焼刃の政策比較では図ることができない。


 今回の衆院選をきっかけに、より厳しい目で与野党の言動・行動を見張っていきたいと考えている。

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