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カーリングの試合を観てみる

 20歳になった頃、高槻にあるフレンチの美味しいお店に、家族に連れて行ってもらったことがある。


 そこで初めて美味しいビールの味を覚えた。それ以降は市販のビールでの美味しいと感じるようになったので、「美味しいビールを飲めばビールは飲めるようになる」が自分の中での持論となった。


 そのお店で出しているのは樽出しのベルギービールで、キレやのど越しにステ振りした日本のビールとは違う、まるで”麦のジュース”のようなビールだと感じた。


 それから2,3年経ってからのことだけれど、上のようなことをビールが苦手な大学の友人に話して、そのフレンチに連れて行ったことがある。


 しかしながら、その友人からは「いや、これはさすがにビールやわ、うまいけども」と言われてしまった。別にそいつがその後市販のビールを美味しいと感じることもなかった。


 持論はあくまで自論でしかなかった。


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 それからまた5年が経って、その時飲んだベルギービールが飲みたくなってきたので、大阪市内で店を探してみた。


 Dolphinsというそのお店は常時100種類以上のベルギー・ドイツ・アメリカのビールを取り揃えており、「あの時のビール」を味わわせてくれる可能性が高いと感じた。


 幸いにして昼から酒を浴びたいという友人が現れたので、三連休初日で昼間からそのお店に行ってみた。


 「ヒューガルデン ホワイト」という名前のビールが高槻で飲んだビールとまさに同じ飲みやすさ・味わいだった。そんな名前やったんやな、お前。


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 前置きが長くなってしまったけれど、そのお店で流れていたのがカーリング女子の日本vsカナダ戦だった。


 席がテレビから遠くて解説がうまく聞き取れず、「なんで、あんなとこに置くんやろ?」「何かの伏線?」「いやでも、回収されへんかったで」みたいな会話をその友人としながら観戦していた。


 それでも素人目にも何らかの戦略があることは理解して、戦略があるチームスポーツ大好き芸人として、何となくその翌日のデンマーク戦も観てしまった。


 このカナダ戦とデンマーク戦がかなりの好ゲームだったことで、それ以降の一週間、日本代表のほぼ全ての試合を観るまでにハマってしまった。


 予選リーグでは韓国戦以降、調子をやや落とすことになった日本代表だったけれど運良く準決勝に進むことができた。準決勝のスイス戦は本当に見事の一言だった。


 喜怒哀楽を前面に出すロコソラーレの選手達に魅力を感じたことは言うまでもないが、スイープによって描かれる流線、ストーン同士のぶつかる音、そしてカーリングという競技の純粋な面白さが純粋に興味をそそった。


 次の一投について作戦会議をしている様子をテレビの画面越しに観ていると、自分もまたその作戦会議に参加しているかのような感覚を覚える。その臨場感もまたカーリングの魅力であると感じた。


 決勝では氷が読み切れず、金メダルこそかなわなかったけれど、最後まで笑顔を絶やさずあきらめない姿にこの一週間、本当に毎日元気と勇気をもらっていた。


 北京五輪2022も無事に閉会式を迎え、残るのは祭りの後の寂しさ。


 カーリングの面白さを知れたことは大きな収穫だったけれど、これから生活のどこに軸足を置いていこうか。そんなことをぼんやりと考えている。


 明日からまた頑張ろう。

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