2021年10月に読んだ本
読んだ本を記録して発信していると、友人から「おすすめの本ある?」であるとか「最近読んだ本で良かった本ある?」といった類のことを訊かれることがある。
これの回答がなかなか難しい。
だいたいの場合は読書記録の中からその人の好みにあってそうな本を選んで伝えるのだけれど、その人が普段からどういう本を読むのか、そもそも普段から本をよく読む人なのかによって勧める本が変わってくる。
また、考えすぎなのかもしれないが、人から勧められた本って押し付け感があるとというか、純粋に読みたいと思って手に取って得られる読書体験とは少し違ったものになってしまうんではないか、みたいな思考が働いてしまって純粋に良かった本を即答できない自分がいる。
一方で自分が本を読んでいく中で(あ、この本はあの人にハマりそうだな)とか(あの人はこの部分をどう読むんだろう、読んでもらって感想を聞きたい、交流したい)みたいな場合もあって、そういう時は会話の中で本の話にならないかジッと機会をうかがっている。
これは本に限ったことでもないのかもしれない。映画や音楽、漫画やYoutuber、あるいは共通の趣味を持っているけど面識のない友人を繋げる時や、恋人募集中の友人に別の友人を勧める時なんかにも当てはまる気がする。このもやもやを分かってもらえる人がいると嬉しい。
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10月前半を試験勉強に注力して過ごしたこともあってか、今月読んだ本は100分de名著のNHKテキストばかりになってしまった(しかも試験は不合格だった)。
10月放送の「ヘミングウェイスペシャル」は名作『老人と海』を含む3作を番組(テキスト)内では紹介していて、これがかなり見応え、読み応えがあった。
読む前はヘミングウェイに対するイメージがほぼ無かった(銃で自死したエピソードだけは何故か知っていた)のだけれど、「老い」や「男らしさ」といった太いテーマの奥にアメリカ批判や理性批判のような主張もあって、実際に作品を読んでみようと思った。
100分de名著で取り上げられたことがきっかけかもしれないけれど、Quizknockが読書会ライブの生配信で『老人と海』を扱ったりとにわかにヘミングウェイブームが起きているのかもしれない。
上記のYoutubeライブにしろ100分de名著にしろ、自分の視界に映っていなかった、あるいは映っていても認識していなかった本が、番組を通じて輝いて見える。そして全く自分の感性と違う考えが流れ込んでくる。そんな本との偶然の出会いをもたらしてくれるので、大変ありがたい。
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2021年10月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1871ページ
ナイス数:129ナイス
■ダーウィン『種の起源』 2015年8月 (100分 de 名著)
大学1年次に受けた英語の授業でフィンチに関する英文を読まされたのを思い出した。NHKテキストばりに深堀りできていたら大学1年次にあれを学ぶ意義はめちゃくちゃ有っただろうなぁ。
進化論の説明として「生物とは不変のものではなく、世代を経て次第に変化していくものである」という考え方ってあるけど、これって生物に限ってことでなくて、科学や人々の常識、歴史の解釈においても言えることで、QuizKnockのナイスガイ須貝も「研究しているけど自分が何かを解明したいとは全く思ってなくて、将来的にどこかの誰かが解明してくれたらそれでいいと思ってる。科学ってそういうものだから」的なことを言っていてなるほどなあと思った記憶と繋がった。
人間もまた連続した存在で、何かの事件の加害者も被害者も障害者も"健常者"もホームレスも生活保護受給者もLGBTQも、今後自分がどこかの地点で分岐した先にあるかもしれない。あるいは自分が既に分岐した後にいるかもしれない。そこに上下関係は存在しない。
二元論で考えてしまう怖さ、安易さって世の中にめちゃめちゃある。世の中にはグレーゾーンのことの方が多い。単純化にはゆめゆめ気をつけなければ。。。
読了日:10月02日
■別冊NHK100分de名著 メディアと私たち (教養・文化シリーズ)
アメリカの田舎では教会が未だに大きな力を持っている。進化論がなかなか定着しない背景には、教会側の既得権益を守りたい思いがあるのやもしれない。
中立なマスコミというのは幻想で、そんなものは存在しないとテキストでは述べられている。新入社員研修を受けていた時に各社の新聞の話「日経新聞は中立」と聞かされた記憶がある。その研修の中で「各社の新聞から自分の気になった記事を持ってきて発表する」みたいな時間があり、仲が良かった学会員の同期が聖教新聞から切り抜いてきたらその研修のチーフから「私は気にしないけど偏見を持っている人がいるかもしれないからやめとこう」と言われてたのを強烈に覚えている。メディアに優劣はあるのだろうか。
これは本当に痛いところを突かれている
読了日:10月09日 著者:堤 未果,中島 岳志,大澤 真幸,高橋 源一郎
■クローズド・ノート (角川文庫)
主人公・香恵は下宿先で前の住人の''ノート''を発見する。それは主人公の通う教育大の卒業生で教員をしている伊吹先生の日記帳だった。ノートから窺い知れる先生としての熱心ぶりや恋への積極性に影響を受けて、「これどうする?」「それいいかも」が口癖な香恵の消極性は徐々に影を潜めていく。バイトに部活に恋愛に、目の前のことに一心に取り組む姿勢はノートから得たものだと自覚し、香恵は伊吹先生に会いに行く。
暖かくて柔らかくて切ない、ほわほわする気持ちになる作品。オチはうすうす分かっていたものの思わず涙腺が緩んでしまった。
読了日:10月09日 著者:雫井 脩介
■Cloud+ テキスト CV0-002対応 (実務で役立つIT資格CompTIAシリーズ)
自分の勉強不足を言い訳するつもりはないが、なかなかこのテキストだけでは合格は難しいのではないかと思うくらいに難しかった。勉強して再度受験しようと思う。
読了日:10月16日
■ヘミングウェイ スペシャル 2021年10月 (NHK100分de名著)
社会人として生きていく中で、自分の体や自然に正直に耳を傾けなくなっている。その結果として心を病む、生産性が落ちる、命を絶ってしまうことに繋がっている事実は誠に不条理としか言いようがない。
短文を書き連ね、無駄な表現をそぎ落としていく。新聞社出身のヘミングウェイならではの文体が当時の小説界には新しく、今なお評価が高い部分でもある。長々と駄文ばかりを積み重ねている自分の文章をもう一度見直すきっかけとしたい。
読了日:10月21日 著者:都甲 幸治
■みちのくの星空の下に
中学高校大学の先輩が小説を出版されたので読んでみた。舞台が自分の出身の男子校でなんだか少し懐かしいような気持ちもありつつ、一方でご都合主義的というか「そうはならんやろ」みたいな部分もあって(ん?)となってしまうシーンも多々あった。 登場人物には(あの人をモデルにしたんだろうなぁ)と見て取れる人もいて、そういう人の台詞はその人の声で聞こえてくるから面白い。
食事や食べ物の描写がかなり多く、その店も自分が知ってる店だったりして、現実にその登場人物がいるような感覚を覚えた。
読了日:10月23日 著者:国吉 嘉男
■言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか
これまた面白い本に出会ってしまった。言語学者ってやはり面白くて読みやすい文章を書く人が多い気がする(主語が大きい)。
ユーミンの名曲から格助詞「は/が」問題を紐解いたり、(笑)を表す「w」本当の出典について考察したり、「かわいいは作れる」の言語的おかしさに言及したり、と、私達の身近なところから言語学の面白い部分に導いてくれる。
かと思えば、宇宙人の言語についてチョムスキーが触れた話を取り上げたり、正しい日本語とは何かを考えたり、ディープな話も随所に見られる。
言語学に興味が無い人でも面白く感じられると思う。
読了日:10月25日 著者:川添 愛
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