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dawn

dawn

丑三つ時、まだ外は暗く街灯がぽつりぽつりとついているだけで人の気配がない住宅街を歩いてしばらく、昨日は散々な日だったなと、自宅のアパートの鍵を開けながら佐々木優介は考えていた。

それというのも昨日は朝から寝坊して2週間捨てられていない燃えるゴミをまた捨てることができなかったところから始まる。この生ゴミが少しずつ腐ってビニール袋の口を固く縛っているにも関わらず腐臭を放っているのだ。

本当は夜中の

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最後に笑ったやつの勝ち

最後に笑ったやつの勝ち

その日柴田秋斗が学校帰り、ガリガリ君を齧りながらチャリンコを漕いでいると、河川敷でまあ見事なイジメ現場ってやつに遭遇した。1人の小学生くらい男の子が3、4人の同じくらいの男子たちに囲まれている。体のでかいガキ大将みたいな奴が男の子を突き飛ばした瞬間、

「お前ら何やってんだ!!」

と、自分でも思いがけずでかい声で叫んでしまい驚いていると、虐めていた男子たちも大人にイジメの現場が見つかったことにき

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落とす、落とせぬ君が好き

落とす、落とせぬ君が好き

「ルシファーさまっ!今日という今日こそは私と寝てください!」
「嫌だ。」
「もーっ!!なんでですかーー!!」

とある孤島の古びた城。人間界とは似て異なる作りをした魔界のその地に彼らはいた。堕天使ルシファーと淫魔サキュバス。

ルシファーの見た目は生きてる年数とは裏腹にとても若々しく長く艶やかな黒髪を持ち、背中に生えた天使の名残りである2つの羽は黒く染まっている。ローブのような服を身に纏った彼から

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きれいは汚い

きれいは汚い

「僕、誰かに触るのも触られるのも苦手なんです。」
付き合い始めた頃、この一言をきっかけに私から泰親に触れたことはない。
手を握ったことがないわけじゃないし、セックスだってしてる。でも、そういうときはいつだってアルコール消毒したりお風呂に入った後、彼が触れる条件をクリアした時だけ私達はコミュニケーションが取れる。
外でデートをしても買い物をしても彼が私と手を繋ぐことはない。それは少し悲しくて時々無性

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じゃがいも×にんじん

じゃがいも×にんじん

ー何度でもあいつに俺は恋をする。
物心ついた頃から、あいつとは一緒になることが多かった。離乳食、野外学習のカレー、調理実習の肉じゃが、家でのシチュー、旅行先のポトフ。オレンジ色がよく似合う明るい人。どこに行っても俺とあいつはよく出会って運命ってこういうことかもしれないなんて思ってた。でも、一緒に過ごす時間はいつも短くて足の早い俺はいつもあいつを置いて先に行ってしまったり、新たに生まれたその芽を摘ま

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