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#こんな恋もある応募用声劇台本「初恋は結婚のあとに」
この台本は私が日頃よく利用しているSpoonという音声配信アプリ内にて開催される #こんな恋もある という企画応募用に書き下ろした台本です。
引用元の #こんな恋もある
という企画に応募します。
https://note.com/fuwari3333/n/na7c018937b1a
■台本利用規約
(#こんな恋もある で使用される際は、#こんな恋もある の企画規約に基づいて台本をご利用ください)
![](https://assets.st-note.com/img/1697267103179-haVKqeCkTL.png?width=800)
■声劇データ
✓上演時間 10分程度
✓上演人数:2名(男性1名 / 女性1名)
✓ジャンル:恋愛 / 日常
■プロット(簡単なあらすじ)
ある人に「初恋」について問われ、語りだす節子。
節子は18歳のときに、見合いで1度きりしか会っていない茂夫の元に嫁ぐ。2人は入籍後すぐ、茂夫の転勤により風呂もない狭いアパートで生活するようになる。銭湯に行くと、必ず先に出ている茂夫。「お前の風呂は長い」と言われた節子は「だから先に帰っていてくださいって言ってるじゃないですか」と言うも「女を一人歩かせるわけにはいかない」と言い、譲らない。その実、茂夫は長風呂なのだが、節子を待たせまいと早く出ているのであった。さらには寒そうにしている節子に上着をかける。
ぶっきらぼうだが、心が優しい茂夫に、節子は徐々に惹かれていく。
実は節子に初恋の話しを聞いていたのは茂夫で、2人は歳を重ねて尚、仲良く生きている様子が描かれる。
※現代パート、過去パート(声劇のメインパート)共に細かい年代は指定しないので、年齢設定等は参考程度と捉えていただき、演者さまの演じやすい年齢幅で演じてください。
■登場人物
○節子:20歳 (現代:60代)
田舎に生まれ育ち、18歳になったとき訳も分からず見合いをさせられ、茂夫と結婚。最初は色々戸惑うが、茂夫の優しさに次第に惹かれていく。色白で可愛らしく、純粋な女性。
たまに実家の農業の手伝いに呼び出されるが、基本は専業主婦。
●茂夫:25歳 (現代:60~70代)
東京の大学を卒業後、故郷の中では最も有名な企業に就職。学生時代は野球やラグビーをやっていたため、体格がよく健康的。現在は将棋や囲碁、読書などにハマっており、女性と付き合ったことがないわけではないが、女性関係にはあまり明るくない。見合いも乗り気ではなかったが、節子に一目惚れし結婚を決意する。
不器用だが、単純な性格。言葉数は少ないが、優しい男性。節子を溺愛している。
●銀次(声劇への直接の出演なし)
茂夫の3つ下の弟。実家を出て、旅行会社で働いている。
■声劇「初恋は結婚のあとに」
■場面1:現代パートA
節子:「初恋? そうねぇ。あれはまだ若くて、お風呂も付いていない、お手洗いは共同、みたいな小さなアパートに住んでいたころだったわねぇ……」
●場面2:過去パートA / 冬の始まり頃 / 銭湯(公衆浴場)の前
○SE1:足音 / 石鹸がケースの中でカラカラ鳴る音など
茂夫:「節子、君はいつも風呂が長い。こうして待っている間に、震えて死んでしまうかと思った」
節子:「女のお風呂は色々やることがあって大変なんですよ」
茂夫:「そうかい」
節子:「だから『先に帰っててください』って言ったじゃないですか」
茂夫:「例えお前のような女であっても、夜道を一人歩かせるわけにはいかない」
節子:「私のような女? ……茂夫さん、何が言いたいんですか?」
茂夫:「いや、別に深い意味があって言ったわけじゃない」
節子:「そうですか。銭湯から家まで5分もかかりませんから、私のような女なら1人で歩いて帰れますよ……(くしゃみ) クシュン!」
茂夫:「大丈夫か? これを着なさい」
節子:「それ脱いだら茂夫さんが風邪をひきますよ?」
茂夫:「俺は君と違って、若い頃から体を鍛えているからな。このくらいの寒さどうってことはない」
節子:「そうですか。それじゃありがたく羽織らせていただきますね。あ、そういえば昼間、この銭湯の前で銀次(ぎんじ)さんにお会いしたんですよ」
茂夫:「あいつ、こんなところで何をしているんだ? 来るなら連絡くらい寄越せばいいのに」
節子:「お仕事でとんぼ返りだから、連絡しなかったそうですよ。でね、面白い話しを伺ったんです」
茂夫:「あいつ、何を言ったんだ?」
節子:「『昔、兄さんと銭湯に行くと、兄さんは長風呂すぎて、とても勝てなかった』とおっしゃっていました」
茂夫:「あの馬鹿、余計なことを……」
節子:「……ありがとうございます」
茂夫:「何が?」
節子:「私が1人にならないように、いつも先に上がって待っててくださっているんでしょう? 1度お見合いで会っただけの方と結婚するのはとても不安でしたけど、茂夫さんと結婚できて良かったと思っています」
茂夫:「な、なにを今さら……」
●場面3:過去パートAからさらに2年前 / 茂夫・節子 結婚当日 / 夫婦の寝室
○SE2:時間逆行が分かる音(時計の音など)
節子:「不束者(ふつつかもの)ですが、よろしくお願いいたします」
茂夫:「安心しろ。君に何の期待もしてない」
節子:「えっ?!」
茂夫:「うちには母がいる。家のことは母に任せておけばいい」
節子:「私は要らない嫁ということでしょうか? お見合いで断り切れず仕方なく結婚して、1年もすれば捨てるつもりですか?」
茂夫:「あっ、いや、そういう意味じゃない。俺も職場ではまだ新人として扱われている」
節子:「はぁ」
茂夫:「できない仕事も多く、先輩たちによく叱られる」
節子:「えぇ」
茂夫:「だから、嫁初心者の君が何もできないのは当然だ。何かできないことがあっても、落ち込む必要はない。分からないことは、母に聞きなさい」
節子:「それなら、最初からそうおっしゃって下さればいいのに!」
茂夫:「すまない。昔から言葉足らずとよく言われる」
節子:「足らなすぎです」
茂夫:「……すまない」
節子:「ふふふ」
茂夫:「何を笑っているんだ?」
節子:「いえ、さきほどから謝られてばかりだなと」
茂夫:「す、すまな……あっ、いや、えっと……」
節子:「ふふふふ。茂夫さんは面白い方ですね」
茂夫:「俺が面白い? そんなことは生まれてはじめて言われたぞ」
節子:「そうですか? なにはともあれ、こう見えて私、家事は一通り出来ますのでご安心ください。もちろん、お義母さまには遠く及びませんが」
茂夫:「母と競う必要はない。それに、あの母に限ってそれはないと信じたいが、姑というのは嫁をいびると聞く。もしそのようなことがあったら、すぐに言いなさい。俺が何とかする」
節子:「何とか……って、どうなさるおつもりですの?」
茂夫:「母に出て行ってもらう」
節子:「ま、まぁ、なんて大変なことをおっしゃるのですか!」
茂夫:「家族を大事にできない者は、家族ではない。家族でない者は、この家には要らない」
節子:「それなら、私も気を付けないといけませんね。家族……とくに、あなたの機嫌を損ねないように」
茂夫:「そんなことは気にする必要はない。君は俺の嫁だ。永遠に一緒に生きると誓ったのだから、何があっても追い出すなんてことはしない」
節子:「お義母さまと私の待遇が違いすぎる気がするのですが……怒られませんか?」
茂夫:「こんなことで怒るような人ではないさ。さぁ、今日は疲れた。もう寝るぞ」
節子:「そうですね。私もお義母さまにお会いしましたが、とても優しくしてくださいました。色々慣れないことはありますが、どうにかこの家で生きられそうです」
茂夫:「それならよかった。ここは今日から君にとっても我が家だ。好きに過ごしてほしい」
●場面4:過去パートB / 銭湯からアパートへの帰り道
節子:「結局、あのあとすぐにあなたの転勤が決まって、こちらに来ちゃいましたけど。あなたの言葉のお陰で、私の不安はだいぶ軽くなったんですよ」
茂夫:「それなら、よかった」
節子:「もうすぐアパートに着きますね」
茂夫:「あぁ」
節子:「茂夫さん、お願いがあります」
茂夫:「なんだ?」
節子:「手をつないでいただけませんか?」
茂夫:「えっ?! こんな道端でお前、いきなり何を……」
節子:「アパートに着くまでの30秒だけでいいんです」
茂夫:「でも、誰かに見られたら……」
節子:「私たちは夫婦なんですよ? 何の問題があるんですか?」
茂夫:「分かった。アパートに着くまでだけだぞ?」
節子:「はい」
●場面5:茂夫、節子の手を取る
節子:「あなたの手、大きくて温かいですね」
茂夫:「君の手は、小さくて柔らかくて、俺が本気で握ったら壊れてしまいそうだ」
節子:「壊さないでくださいよ?」
茂夫:「こんな綺麗な手を壊すわけないだろう」
節子:「今なんて? 綺麗?」
茂夫:「ほら、アパートに着いたぞ。寒くて死にそうだ。燗(かん)でもつけてくれ」
節子:「はいはい。今すぐ用意しますね」
●場面6:現代パートB
節子:「これが私の『初恋』です」
茂夫:「おい、ちょっと待て」
節子:「なんですか?」
茂夫:「それじゃ、君の初恋の相手は……」
節子:「『あなた』ですよ、茂夫さん?」
茂夫:「なんでもっと早く言わないんだ?」
節子:「とくに聞かれもしませんでしたから。まぁあのあと、子どもたちが生まれて、家を建てて……時間があっという間に経ってしまいましたからね。ちゃんと伝えている暇なんてなかったんですよ」
茂夫:「俺の初恋も、君だ」
節子:「冗談はやめてください。銀次さんに聞いてますからね? 学生時代に彼女が居たって」
茂夫:「あれは周りに流されたというか何というか。本気で付き合っていたわけじゃないんだ」
節子:「じゃあ、いつ、私を好きになったんですか? あのお見合いまで、私たちはお互い顔すら知らなかったのに」
茂夫:「だから、その見合いで」
節子:「え?!」
茂夫:「君をはじめて見た瞬間、急に心臓辺りが痛くなった。病気かと思うほどだったが、これが『恋』と呼ばれる感情なのか、とあのときはじめて気が付いた」
節子:「まぁ……じゃあ、私に一目惚れだったんですか?」
茂夫:「そういうことになるな。だから君が他の男に取られてはなるまいと、結婚を急いだんだ」
節子:「それこそ、早く教えてくださいよ」
茂夫:「すまない」
節子:「昔からあなたは、すぐそれなんですから。困ったものですわ」
茂夫:「す、すまない」
節子:「全くもう! そうだ、今日は久しぶりに銭湯に行きませんか?」
茂夫:「いいねぇ」
節子:「手をつないでいきましょう」
茂夫:「そ、それは……」
節子:「今さら何を照れてるんですか?」
茂夫:「分かったよ! ほら、行くぞ!」
節子:「はいはい。寒くなるといけませんから、上着1枚多く持っていってくださいね」
END
■自己紹介
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